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インターネット空間のほんとうの景色

「What you see with your eyes is not necessarily real. (目に見えるものがほんとうのものとは限らない)」

通っている読書教室で、村上春樹の作品(かえるくん、東京を救う)中の一文を使って文章を書くという宿題が出ましたので書いてみました。(英語版"The True View in The Cyberspace"も書いてみましたので合わせてお読みいただくとうれしいです。こちらは先生に添削していただきました)


インターネット空間でエコチェンバーやフィルターバブルと呼ばれる状態に陥いり、人々が偏った考えや思想に取りつかれてしまうことが、アメリカ社会の不安定化を助長させていると聞く。

エコーチェンバーとは、SNSで好みのユーザーをフォローすることで自分と似た意見がこだまのように返ってくるという状況、フィルターバブルは検索履歴に基づいて、望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、自分の考えが「泡」の中で孤立する情報環境を指す。

このような状態になると、あたかもインターネットの空間で見ている景色は全て正しいと判断するようになって行きがちだ。目に見えるものがほんとうのものとは限らないのに。

趣味や遊びの世界ではまだ良いかもしれないが、実際の生活に影響を与えるとしたら話は別だ。アメリカでは極端な分断 ― 保守とリベラル、白人と非白人、富めるものとそうでない人たちの間で ― が長らく続いていて、ソーシャルメディアがこの分断に大きな影響を与えていると聞く。オールドメディアであるテレビやラジオでさえも、視聴率競争を勝ち抜くためにインターネットの情報を鵜呑みした人たちに迎合するがごとく、極端な政治的スタンスをとる放送局もある。例えば右派はFOX NEWS、左派はMSNBCばかり観ているため、ますます自己の考えを強化、正当化し悪循環に陥っている。

このような人々に自分の視界には入ってこないこともたくさんあり、見えていることだけがほんとうではないのだと気づかせるには、さて一体どうしたら良いのだろう。

答えは簡単ではないが、ソーシャルメディアの歴史はまだ浅く、人々がヘビーに使い出したのはせいぜいここ10年位前からで、まだまだ成熟していないツールであることを忘れてはいけない。だからルールが十分に整備されているとは言いがたい。さらに今の大人たちはインターネットに関するリテラシー教育を学校では全く受けていないことも問題だ。

気が遠くなる課題ではあるけれど、車の運転には運転教習と交通規則を守ることが必要なように、ソーシャルメディアのルールを法律で定め(国境を軽く飛び越えて利用されているので簡単ではないが)、違反者には罰金を科すなどの法整備をするとともに、インターネットに接続する人々に対するリテラシー教育を義務化する必要があるだろう。

フィルターバブル内の人たちにはどうやってこのことを伝え、説得するのは大変そうだけれども。


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