見出し画像

ささやかでいて、やくにたたないこと「目と目が合うのが少し怖い」

目と目とがあうのが少し怖い

お寿司屋さんでウェイターのアルバイトをしている。お客さんが帰るときに「ありがとうございます」と大きな声で言う。(ありがとうございました。ではなく、ありがとうございます。)ふと思いついて目を見て言ってみた。
意外とお客さんもこっちの目をしっかり見ていることに気がついた。

こういう事がよくある。目をわざとそらしているわけじゃなく、自然と目を見てない。たまたま目があったときに「あ、いままで目をそらしてたんだ」と気がつく。
目と目が合う。子供の頃から苦手だった。目が合うと自分がなにか強くうったえたい意思があると思われそうな気がする。事実、ちゃんと伝えたいことがある時は相手の目をじっと見つめる。目から感情をほとばしらせ、相手の目に「わかってくれ」を注ぎ込む。そのときの相手の目は絵にかけるくらいありありと思い出せる。
だから別に特段伝えたい強い気持ちがないときは、相手の目を見つめて話すのが変な事のように感じられる。好きでもないのに好きだと言ってるみたいな。

そういう風に伝えるために使っているから相手から見られている時は自分の目から色んな情報(緊張している、話すことが思いつかない、回転が遅い、つまんない、恥ずかしいとかとか)がだだ漏れて伝わっちゃってるんじゃないかという気になる。

いまではある程度意識して人の目を見るようにしている。「目をみるぞ」とすごく意識する。大人だし。でもふと気がつくといつの間にか目を見てない。完全に無意識にそうなってしまっている。
もともとはそうやって目をみないことが誰かと話すときに僕にとっての楽な(人と話すこと自体があんまりというか全然楽じゃない)姿勢だったんだと思う。小学生くらいのころは色々あってとにかく自分を隠して生きようとしていた。

深夜のテレビで小笠原の青い海にエイの10匹くらいの群れが泳いでる。鳥みたいに羽ばたいて、何列かに重なって同じ方向に泳いでいく。毒針しっぽが目に刺さらないかと心配になる。どういう気持ちでエイたちは一緒にいるんだろ。目と目が合うみたいな感覚はあるんかな。それはそれで楽そうだけど、目と目があって嬉しいことだってあるよなとも思う。
みんなはそんなこと考えたりしないのか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?