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能登半島地震 1  

皆がびっくりするような町を作って、待っとるし
平野敏

 みなさん、卒業おめでとうございます。
大切な方を亡くした方もいます。大事なものを燃やしてしまったり、失くしてしまったり。先生も、スーツとか、全部なくなって、一月一日からずっと一緒の服で過ごしていました。でもね、この服、今年の入学式が終わったあとずっと校長室に置きっぱなしだったんですよ。なので、今日はきちんとした格好で、みんなの卒業をお祝いすることができます。
みんなは中学のときにコロナで、そしてその後、高校に入ってきて、それが解除されて学校に通えるようになったときに、先生はこんなことを言いました。みんなのことを、例えば、修学旅行ができなかったり、文化祭ができなかったりとか、そんな可哀相な世代だなねって言う人もいるけれど、そうじゃない。
他の世代ができなかった一番多感な中学生、高校生のときに、どんな困難なことがあっても、工夫次第で、みんなで協力して乗り越えることができるよ、そういうことをしっかり学ぶことができた、これから日本を背負っていくような、そんな人になれるよっていう話をしました。
で、今回は、これです。みんなにこれ以上、どんな顔をしても、これ以上がんばれなんて言えるのかって、でもね、前を向いていくしかないんです。
 
今はこんなに
悲しくて、涙も
枯れはてて、
もう二度と笑顔には
なれそうもないけれど
そんな時代も
あったねと
いつか話せる日が来るわ
あんな時代もあったねと、
きっと笑って話せるわ
だから今日はくよくよしないで
今日の風にふかれましょう
 
輪島に残るみんな、一緒に新しい町をつくろう。いったん輪島から離れるみんな、いつの日かきっと帰っておいで。みんながびっくりするような町作って、まっとるし。
令和六年一月一日、ちょうど二か月後に、みんなは輪島高校を巣立っていきます。
 



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