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いつか私と自由の晩酌

お酒が好きだ。
厳密には、お酒が好きだった。

大学時代、お酒の味はよくわからなくても、お酒の場が好きだった。
私は人より飲めたから、先輩や先生に深夜までついて行っては、たくさん話しを聞かせてもらった。
大学の外の世界へどんどん繋がった。
これが「飲みニケーション」か、と浮かれた。

フリーター時代、お金はなかったが、夢を追いかけながら飲み屋街で働いて、ほとんどそのお金はその街に消えていった。
自分を見失いそうになって、ただ現実から離れたくて飲んでいた。
可愛がってくれていたバーテンダーのお姉さんから、「そんな飲み方していたらお酒にも失礼よ」と言われて目が覚めた。
それからは、大事な人と、大事な話を、大事な時間を過ごすときだけ、美味しく、ほどほどのお酒を楽しむことに決めた。

会社員時代、お酒を美味しい料理とともに楽しむことができるようになった。
久しぶりに会った友人と、鱧の白焼きに日本酒とか。
粧し込んだ日、目にも美しいコース料理に合わせたワインとか。
くたくたになった金曜日に、一人カウンターで頬張る串と、炭酸のきついレモンサワーとか。
独りで生きていくと決めて、毎日自由でとにかく楽しかった。
そうしているうちに夫に出会った。

一人で飲み歩いていた私は、いつしか家でお酒に合うごはんやおつまみを作ることが楽しくなっていた。

不妊治療、妊娠、出産を経て、気づけばもう4、5年はアルコールを口にしていない。
若い頃、お酒で体を壊すよと言われ、飲めない人生なんて死んでるようなものだと思っていた私が。

現在は、私をそんなふうに変えた人との間に生まれた結晶が、私の身体で作った液体を飲んでいるので、まだしばらくお酒を飲む機会がないけれど。

この幸せな時間の終わりが少しずつ見えてくるのは、そう遠くない未来だと思う。
“その日”が来たら、どうやって楽しもうか?
そう考えるだけでも、既に心は躍っている。

夫、父、友人など、誰かと飲むのも捨てがたいが……

その一番最初は、私と飲みたい。
私だけと向かい合って、じっくり、ゆっくり。

私にとってお酒を飲むということは、普段なかなか無視しがちな“私”の声を聞き、共感し、笑い合い、慰めて、また明日も頑張ろうね、とハイタッチして別れる、そんな時間なのかもしれない。



※画像お借りしました。スクレさん、素敵なお写真をありがとうございました。

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