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キヴォトス視点における不知火カヤという人物について

序文:カルパノグ二章におけるあるセリフの解釈について

 不知火カヤに対して、先生が「迷惑をかけた生徒たちに、きちんと謝ってあげて」と告げるシーンがあります。
 プレイヤーは最終編を読んだうえでカルパノグの兎二章を読むわけですから、このセリフの解釈の余地はかなり狭いはずです。
 この際に重要なのは以下二点。

  • 先生は不知火カヤが既に行ったことに対して言及している。

  • 先生は不知火カヤに対して注意や指摘をしているわけではない。

 先生は本編において、基本的なスタンスとして、必要がなければ教え諭そうとせず見守るようにしています。たとえば杏山カズサに関するストーリーがわかりやすいですね。
 これを踏まえて、なにが言いたいかというと、

  • 先生はカヤが行った、カンナやFOX小隊に対する誘導などに関して、これは彼女たちにとって迷惑だったので謝るべきとしている。

  • 子ウサギ駅爆破未遂やカイザーを利用した治安維持条例施工などに関しては、特段言及する必要がないと考えている。

 という解釈ができることです。カヤと先生のコミュニケーションシーンが非常に少ないのでサンプル量がなく、やや拡大解釈に思えなくもないですが、しかしブルーアーカイブにおけるほかの場面を踏まえてみると齟齬がないセリフ解釈となっているように、私は感じています。

 この解釈を前提において話を進行します。
 テーマはタイトル通り、「ブルーアーカイブにおけるキヴォトス視点で見る、不知火カヤという人物」です。


概説:不知火カヤをキヴォトス視点で見る

 ひとつ間違いのないことがあります。不知火カヤはいくつもミスをおかしましたし、情報収集に失敗している点が目立ちますが、それらを踏まえても非常に優秀な人物です。

連邦生徒会においての不知火カヤ

 連邦生徒会は悪い意味でとんでもない組織です。公文書漢数字問題を始めとして連邦生徒会長代理の職務内容などを踏まえると仕組みが悲惨なことになっていることが察されますし、またヴァルキューレ警察学校の予算不足から推察するに腐敗具合がとんでもないことになっています。
(ヴァルキューレ警察学校は連邦生徒会が保有する数少ない実行部隊で治安維持を任されている重要な組織で、それでいて弾薬不足なくらい予算がないです。不正会計や天引きや中抜きなどいくらでも考えられます)

 そんな荒海めいた組織において一部門のトップでありながらも、不知火カヤはやたら孤立している描写があります。
 特に例として目立つのは、公安局のストライキについて全く事情を知らないということです。公安局長の謹慎関連どころか、ストライキが起きていたことすら知らないというのは、ちょっとどころではなくありえません。

 しかしカヤは防衛室のトップで、政争において目立った失敗をしていない裏工作が得意な人物として描かれています。
 つまり考えられるのは「孤立が問題にならない職務を順当にこなした結果昇進した」か「孤立が問題にならないほど急激に昇進した」かです。
 能力が関係ないと思えるのは後者かつ上層部の人物が引き上げた場合ですが、防衛室長のうえは連邦生徒会長です。
 なんにせよ、優秀でないということは(多分)ありえません。

実務能力からみる不知火カヤ

 部下に慕われていないどころか報連相がちっともされていない不知火カヤ防衛室長ですが、やろうとしたことは(成功かはともかく)ことごとく形になっています。代表的な三点を挙げましょう。

  • カイザー系列企業との汚職

  • 政治的な工作行為

  • D.U全域に対する治安維持条例の施工

 これらをみるとある疑問が浮かびます。それは、これらにどれだけのひとが関わっていたのかということです。

 まず不知火カヤ防衛室長は政治的にみて与党ではなく野党に属しています。七神リン首席行政官を中心とした派閥に属しているわけではないことは、先生がカルパノグ開始まで防衛室と接触したことがないという事実から察せます。

 次に不知火カヤ防衛室長は信頼できる部下を持っていません。前述した通り公安局のストライキをかけらも知らなかったあたりからはっきりとしています。

 少なくとも子ウサギタウン再開発に関するカイザーとの汚職はカヤ主体で行っていなければおかしいので、黒幕的人物がいるとしても、これはカヤ主体で行っていたと考えるのが自然です。しかし信頼できる部下などは登場しておらず……

 またD.U全域に対する治安維持条例の施工に関して、実務能力に長ける部下に丸投げしていたと考えた場合、疑問点が出てきます。
 それは部下の見分けのつけ方です。防衛室はやたらダメな描写が多いのですが、そんなところで使える一握りの玉を、孤立している不知火カヤ防衛室長はどうやって見分けていたのでしょうか?

 ……もし部下を使わず条例施工など一連の出来事をひとりでこなした、というなら、別ベクトルで優秀すぎますね。

統治面でみる不知火カヤ

 キヴォトスの治安はもともと、地球目線でみると大雨のあとのドブ底のようにドロドロでぐちゃぐちゃです。さらに連邦生徒会長失踪後は犯罪率は劇的に上昇しており、また最終編でサンクトゥムタワーが消失したので各学園自治区はカルパノグ二章時点で原作プロローグ以上に混沌としています。

 これらを念頭に置いてみましょう。連邦生徒会はこの状況においてなにをしていますか?……ひとまずプレイヤー視点では特にやっていることがわからない、ということは間違いないですね。

提起:不知火カヤの迷惑について

 カヤのかけた迷惑とはなんでしょうか。ひとまずおおまかに取り上げるとすれば、「尾刃カンナ公安局長に対する汚職の教唆」「FOX小隊に対する子ウサギ駅爆破作戦の命令」などが挙がります。
 しかしこれらの何が迷惑なのかという点に注目してみると、ちょっと変なことがわかります。

 それは「カヤは行動を強制したわけでも選択肢を狭めたわけでもない」らしいということです。より言うなら「カヤは選択肢を広げることを主にしていた」のです。
 財政難の公安局に汚職による財源確保という選択肢を提示し、SRTを失うことが間違いなかったFOX小隊にSRT再建という選択肢を提示しています。善悪や法的是非はともかく、これらはかなり建設的な選択肢の提示です。
 違うのはリン行政官に対する弾劾くらいです。しかも、それも一応理屈は通っています。リンは遠くや傍から見るとめちゃくちゃ不審な人物です。

 先生の示した「迷惑」とはいったいどういう意味でしょうか?
 カルパノグ二章を振り返ると、不知火カヤが直接行動したのは「リン行政官の失脚の画策」「D.Uに対するカイザーを利用した治安維持条例の施工」「子ウサギ駅の爆破作戦の指示」で、どれも地球人類的価値観からするとよくないことのように思えますが、しかしブルーアーカイブに長く触れた身からすると、これらはキヴォトス的にはありふれたことのように思えてきます。

 不正、汚職などはキヴォトスであたりまえの行為です。理屈が通っていないものが溢れているなかでも一応理屈を通しているのは、真面目とすらいえます。
 民間企業を公的治安維持活動に使うのは、ブラックマーケットに関する話や、そもそもカイザーPMCが大企業として存在していることなどを踏まえると、割とどうでもいいことのように思えます。
 テロ活動はキヴォトスであたりまえの行為です。規模の大小あれど破壊活動はよくあることです。

 私はこれらを踏まえると、先生のいう迷惑という単語のニュアンスは、わりと軽いものなのではないかと感じました。
 不知火カヤのかけた迷惑とは、ブルーアーカイブの一幕としてみるとわりとありふれてもいい具合の迷惑といえたのではないでしょうか?

総括:不知火カヤはキヴォトス的に見てどういう人物なのか

 ひとまず優秀です。ポカが目立ちますが、かなり優秀といえる人物です。
 そして(キヴォトス的にみて)そう悪いことをしているわけではありません。むしろ治安正常化を試みるなど、良いこともしています。
 やったことの規模が大きいので扱いもまた大きく深刻にされていますが、よくよく見てみるとそう悪いように扱われる生徒ではないと私は考えます。
 そう捉えたうえでカルパノグ二章のラストをみると、なるほど、この音楽でもいいと判断されたわけがわかるような気がします。

おまけ

 このノートは三時間くらいでぱ~っと書き上げたのですが、その際に動機となったツイートがありまして、それはブルアカのカヤの犯罪率低下と、デスノートにおけるキラによる犯罪率低下を画像で並べたものでした。
 いやそれスパンが……と思ったあと、ふと「そう考えるとわりといいことしてるな」となり、それから連想でこの内容を思いついた次第です。
 あとから見返そうとしましたが、行方はわかりませんでした。ひとまず、名も知れぬツイート主さんにアイデア感謝の文を書いておきたいと思い、この欄を設けました。
 ツイート感謝!

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