じゃんもん

(24)横浜→地方紙記者しながらもんもんとしてます。 音楽と小説と詩が好きです。  笑…

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(24)横浜→地方紙記者しながらもんもんとしてます。 音楽と小説と詩が好きです。  笑うのはちょっと苦手です。

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爽やかに失恋するな、クソ羨ましい

軽音楽部の後輩に誘われ、鶴見川沿いの小さなたこ焼き屋で夜9時から酒を飲んだ。彼はその日、片想いしていた女が自分の親友とくっついたことを知り、ひんひん嘆きながらギガサイズのハイボールを飲み干していた。 バカだなと思いつつ、自分のクソダサい部分を一切ごまかすことなく「負けた!!!くやしい!!!!」と笑って話す彼が羨ましくもあった。僕ならその日は平然とやり過ごした上で夜中に親友とその子のSNSを全てブロックして、銀杏BOYZを聴きながら二人の愛を三日三晩呪い続けたに違いない。

    • 青空と黒い猫

      空がいつもと同じ青さをたたえていたって、誰の身体もいつかなくなって、永遠はないだろう。 それだって、君の魂とどこか繋がっていたいと僕は思う。 僕がアジカンでいちばん好きな「青空と黒い猫」の一節だ。悲しくて、いとしくて、誰かのことを想いたくなるような爽やかな曲。心がしんどい時に口ずさんでいると、どこか涙がこみ上げてくる。苦しみの中でも、誰かと繋がっていたいと信じる自分の存在に気がつく。それがたまらなく寂しくて、でも心地良かったりもする。 仕事の環境が変わったり、いつまでも

      • 日記 知らない街、一人

        仕事の出張で静岡県の清水に来ている。久しぶりのビジホで過ごす夜にワクワクしているけれど、朝から急いでいて本もイヤホンも忘れてしまったので、道路を行き交うトラックを眺めながらnoteを書いてみる。 最小限の音量で羊文学の新譜を聴く。トラックの動きを指でなぞって、それから少しだけ窓を開けて夜の空気を吸った。太平洋に面するこの街は夜の寒さもどこか穏やかな感じ。僕の住む長野県から清水までは中部横断自動車道で2時間足らずだけど、全く風土の違う地域に来たと実感する。こういう知らない街の

        • 横浜、andymori『16』

          最近、横浜にいた19か20の頃の夢をよく見る。あの頃はとにかく金がなくて、時間と体力だけはいつまでも尽きなくて、毎日申し訳程度のアルバイトと読書の時間で暇を埋めては横浜駅界隈を文字通りさまよっていた。単純な労働で小銭を稼いでは、西口の有隣堂で溶かし、すき家か家系ラーメンで腹を満たすだけの日々だった。あの時代にぼくは、戻りたいのかなあ。 冬だって夜だって関係なく銀杏BOYZだとかtetoあたりのパンクロックばかりを聴いていた。今思えば躁鬱の典型的な症状だった音楽への依存症が、

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        • ライブレポート・音楽
          9本

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          巻き込まれないで

          年末、会社の先輩たちとカラオケで忘年会を開いた。うちの職場は比較的僕を自由に放っといてくれるので、誰も聴いたことがないであろうゴイステやらtetoを好き勝手歌った。他の先輩方も椎名林檎だとかミスチルだとかゼロ年代のアニソンを歌っていて、ジャンルがぐるぐる回っていく感じがとても心地よかった。 カラオケに入ってから3時間が経った頃、普段あまり接点のない先輩のお姉さんが「じゃんもんくん、ずとまよのサターン、歌ってほしいな」とリクエストをくれた。叫んで暴れるだけの僕には静かすぎる選

          巻き込まれないで

          もりもりと干し柿を作る、食べる

          タイトルの通りです。11月の暮れにもりもりと仕込んだ干し柿が食べごろを迎えました。よく顔を出す隣町のゲストハウスで渋柿が600個も余ったと言われたので助けてやったのです。皮をせっせとむいたのですが、僕は包丁さばきが絶望的に下手なので、干す前の柿はまるでラピュタのよう。 皮をむけばむくほど、周りの皆さんからは失笑が聞こえてくる。「まあ、個性ですからね」「多様性、多様性」とごまかす人がいる中、画家のお兄さんが「じゃんもんくんは果物剥くのヘッタクソなんやなあー」って屈託のない笑顔

          もりもりと干し柿を作る、食べる

          薬草店のおばあさま

          北風の冷たい午後、蓼科高原の森の中にある小さな薬草店で、40年以上ハーブの研究を続けているおばあさまを取材した。あたたかいお茶とクッキーを出してもらい、木漏れ日が差すウッドチェアに腰掛けて向き合った。 幼い頃から、物語に出てくる魔女が実は心優しい性格だったりするとすごくうれしかったんだけど、おばあさまはまさにそんな雰囲気の素敵な方だった。草花が風に揺られるようなリズムでゆっくりと話し、ときどき目をじっと合わせてにっこりと微笑んでくれる。午前中は議会の取材があり張り詰めていた

          薬草店のおばあさま

          もう一度、物語が始まるかもしれないと思って

          もう一度、物語が始まるかもしれないと思って、夜のドライブに出かけたんだ。遠い昔、あなたと行こうと約束していたはずの景色の良い神社を目指した。助手席には梨木香歩の新刊と新聞、それから食べかけの菓子パンとあなたが好きだったスヌーピーのキーケースが転がっている。僕はきゅっとさみしくなった。 季節はもう冬の入り口に差し掛かっていて、午前2時を差した時計はジーっと異音を流していた。世界でいちばん美しい時間を今夜なら過ごせるんじゃないか、なんて小っ恥ずかしいことも考えてみる。夜空を見上

          もう一度、物語が始まるかもしれないと思って

          20代を戦うためのお守り

          たまに行く古着屋の兄ちゃんに「お前は性格が良いっていうか…良くはないんだけど、面白い性格してるから大丈夫だと思うよ」って言われたことをお守りのように思い出している。どんなに甘ったるい褒め言葉よりもうれしくて、あの時照れ笑いが隠しきれずニヤニヤしてしまったんじゃないかなとか考えてみる。ときどき自分も勘違いしちゃうことがあるんだけど、僕って案外単純だ。 誰かの言葉って傷ついた時のことばかり覚えてしまうから、こうやって嬉しかった時のことをちゃんと文字に書いておくことって大事だ。先

          20代を戦うためのお守り

          良い人間関係を記録しておくということ

          今夜は22時近くまで取材を続けていたので、帰り道にすき家で牛丼を食べて友達に電話をしたらもうこんな時間になってしまった。原稿を書くのは明日にするとして、それでも寝るまでの少しの時間を自分のものにしたいなーって思って、先日再開したnoteを今日も書いてみることにした。 友達は山を二つ越えた向こう側の支社で働く同期で、僕が彼女にフラれたのと同じ時期に彼氏と別れたのでそれからずっと戦友みたいな気持ちで仲良くしている。物静かで星空を眺めるのが好きな穏やかな人なんだけど、ちゃんと自分

          良い人間関係を記録しておくということ

          ゆったりと冬を迎えたいよ

          松本駅前にある大きな書店で何冊か新刊本を買って、その隣にある喫煙のできる小さな喫茶店で午後を過ごしている。野菜のサンドイッチとブレンドコーヒーを注文。キュウリを刻む心地よい音が聞こえてきて、それからしばらくして飾り気はないけれど手作りのおいしいサンドイッチが届いた。素朴な味わいに心が安らいで、ほっとため息をつく。コーヒーは酸味があって飲みやすかった。 冬の気配がする地方都市の雰囲気は好きだ。紅葉もそろそろ見ごろを過ぎて、街行く人たちもあったかそうな上着を着て忙しなく歩いてい

          ゆったりと冬を迎えたいよ

          本当は眠りたくなんかなくて

          「夜はどんどん気持ちが沈んでいくからね、早く寝るんだよ」って心配してくれた電話相手にさえ、今夜は眠らなくても平気だって、くだらない嘘をついてしまう自分がきらいだ。 午前三時は何もしなくたって否応なしに悲しくなる。本当は眠りたくなんかなくて、ただ眠ることも沈むこともなく、時間が過ぎて穏やかに朝が来てくれればそれでいいのにって思ってる。でもそれは、戦争をなくすことと同じくらい無茶な願いなんだ。 最近、歌詞のまっすぐなラブソングを聴くことが増えた。マッチングアプリで簡単に異性を

          本当は眠りたくなんかなくて

          ちゃんと寂しくなるために、台北へ

          8月20日の台北は昼過ぎから荒れ模様だった。街全体がバケツを被ったような土砂降りの中、僕は台北駅より少し西側にある龍山寺界隈をずぶ濡れで歩いていた。 観光客の姿はほとんどなく、多くの人々はアーケード街で雨宿りをしながら食堂で肉粥やうどんを食べて過ごしていた。レインコートを被った数台の原付が勇ましく幹線道路を突き抜けていったが、そのエンジン音さえ雨音に遮られて聞こえない。 僕も連れ合いと食堂で昼食を済ませようと思ったけど、なんだか乗り気になれなくて、結局駅近くの火鍋屋に入っ

          ちゃんと寂しくなるために、台北へ

          今は遠い記憶の彼方

          人生で初めて自動車を買った。日産の極めて平凡な中古のノートだ。それから1ヶ月、水を得た魚のようにドライブを繰り返し、すでに走行距離は3千キロに近づきつつある。クーラーボックスとマットレスを後部座席に詰め込んで、何度か車中泊で夜を過ごした。一人旅は自由で孤独で、心地よい。 この日曜日の夕方も、松本まで行った帰りに諏訪湖の周りをぐるっと一周した。18歳の頃よく聴いていた羊文学のアルバムを小さめの音量で響かせて、ミントのガムを噛みながら口ずさんだ。 5年前の夏、この一節を聖歌の

          今は遠い記憶の彼方

          18歳、銀杏BOYZ

          結局のところ、僕は18歳の夏に初めて銀杏BOYZのライブに行った時のことが忘れられずにここまで来てしまったんだと思う。根暗でネガティヴなくせに焦燥感とでたらめな情熱だけは一丁前に持っていた少年の僕にとって、峯田のメロディ、歌詞、そしてメッセージは致死量だった。 あの頃は、多摩川沿いの学生街にあるやたらでかいワンルームが僕らにとっての溜まり場だった。大学から2時間近く離れた実家に僕は一切寄り付かず、アルバイトも友達作りもサボりながら、ろくに授業にもいかず本ばかりを読んでいた。

          18歳、銀杏BOYZ

          まあいいや

          22時に帰宅。洗濯機を回して、昨日作ったトマトスパゲッティをチンして食べる。熱い湯船に浸かりながら今日初めての読書をする。Helsinki Lambda Clubの新譜を風呂場で流しつつ、梨木香歩のエッセイ集『やがて満ちてくる光の』を汗だくになるまで読んだ。他愛のない話だけど、生きることの喜びが詰まっているような、素敵な文章だったのでとてもどきどきした。 それから日記を数行書いて夜のニュースをチェックしたらもう23時。明日は朝から会議の取材があって夜ふかしはできない。パタン