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どうする、ニッポン

3.3 人つくり-「平等」と「公平」

 これまでの日本社会は「ソフトの技術」を重視してきませんでした。

3.3.1 労働生産性

日本は1968年に当時の西ドイツを抜いて世界第2位の国民総生産(GNP)を記録しました。そして2010年には中国に抜かれて第3位に転落しました。現在も国内総生産(GDP)は3位ですが、労働生産性は先進諸国の中では最も低くなっています。2021年の時間当たり労働生産性はOECD加盟38か国中27位です。製造業の労働生産性は少し良くて18位となっています。一人当たりの労働生産性では37位(OECD加盟38か国中28位)でした。これはシンガポールの約半分です。日本の製造業はモノをいかに効率的に製造するかを追い求めてきましたから、非常に効率的にモノを製造する技術を持っているという自負があります。確かに製品の生産性は先進諸国と比べて決して低くはありません。低いのは労働全体の生産性で先進諸国の6割くらいです。

生産に携わる労働の生産性と管理に携わる労働の生産性を合わせて、平均した指標でみると、日本の労働生産性は低くなってしまいます。日本は組織を運営する業務に先進諸国より多くの人と時間をかけているからです。運営業務の執行により多くの人がより多くの時間をかけている結果として、一人当たりの所得は抑えられることになります。一人当たりの国民総所得(GNI)は33位です。組織運営の労働生産性が低いことが原因で順位が低くなっています。

労働生産性にはブルーカラーとホワイトカラーとに分けた指標はありません。一般に日本のブルーカラーの労働生産性は高く、ホワイトカラーの労働生産性は低いといわれています。ブルーカラーは直接「モノつくり」に携わっている人を指して、ホワイトカラーは組織の運営に従事している人を指すとすると、18位は高いブルーカラーの労働生産性と低いホワイトカラーの労働生産性を合わせて平均したものといえます。労働生産性を製造業と非製造業に分けた指標によりますと、製造業の生産性は非製造業に比べると少し高くなっていますが、違いは大きくありません。労働生産性の指標を業種別に分けることに大きな意味はなく、職種別の指標が重要となります。

労働生産性の改善についての論文も少なくありません。百家争鳴の中で、具体的にどのように改善すればよいのか、よくわからないというのが現状ではないでしょうか。フレデリック・テイラー(1856 – 1915)は100年以上前に「科学的管理法の原理」で統一的な管理手法の確立を目指しました。工場現場の観察から作業の物理条件と作業能率の関係を研究しました。その結果、作業員間の非公式ルールや人間関係が生産性に大きく関与していることがわかったそうです。組織内で作業員間の非公式ルールが長年にわたって適用されていないでしょうか。組織内の人間関係は「平等」と「公平」を考慮して運営されているでしょうか。組織の運営は「公正」に行われているでしょうか。今、すべての組織で運営規則の検証が必要です。

“みんなで一緒に”仕事をする形態と、長時間労働は今もって改善されていません。日本型の働き方は“後れ”を招いた原因の一つとなっています。“後れ”を取り戻すためには、生産の労働生産性の改善を続けるのは当然のことながら「コトの営み」である組織運営の労働生産性の改善が必須の要件となってくるのです。労働生産性の改善するためには、現在行っている業務をより少ない時間と人で行うようにすればいいのです。特に、組織を運営する部門と業務を執行する部門の改善が必要となります。組織を運営する部門の労働生産性の改善は、組織運営の基となっている基本的な考え方を修正することです。業務を執行する部門の労働生産性の改善は、業務執行の基本となっている作業手順の標準化です。労働生産性を改善するための改善方法は、単なる人員配置の合理化ではありません。日本型の「コトの営み」の標準的な技術を確立して共有することです。作業の手順を検証すれば、過剰な人員配置の見直しと作業の標準化ができるようになります。

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