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今日も、何もなかった。

この記事は、Sudioの「Sudio Nioレモン」の発売キャンペーンプロモーションとしてご依頼いただき、執筆したものです。また、撮影時のみマスクを外しております。


寒い。


朝6時ごろ、蒸し暑くなった部屋に起こされ、開かない目で必死にエアコンの温度を下げた記憶が戻ってくる。

薄い布団から出て、向かう先のカーテンから漏れる日差しは、もう真夏の顔をしていた。ぶわっとカーテンを開いて、眼が夏の明かりに慣れるまで4秒。

実家の開きにくい窓にギイギイ言わせながら、肺に日本の7月末の空気を入れる。喉ごしの良くない暑さを部屋に迎え、寒くなりすぎた部屋の調整をする。

おぉ、自然と文明の利器の融合だ。みたいな...



おはよう。夏のとある休日が始まりました。


着飾るような予定も特にない。リネンの薄いワンピースを被り、ひまわりはどこまで成長しただろうかと、カーテンの揺れる窓際に向かう。

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奥田民生のイージュー☆ライダーを聴きながら、いつかのクリスマスに貼ったシールと夏雲の映る窓ガラスのミスマッチを感じた。
こういうもんは、実家というカテゴリにおいては「風情がある」と表現してもいいと思う。


カメラマンとして呼んだ昔からの親友は、アイラインを引く私の横で私以上にぐうたらしながら話しかけてくる。

「北欧の会社...すでぃ?すー、スー...?」

「スーディオな」

「北欧ってあれでしょー、冬の日照時間が短いから、夏は外で遊びまくるんだってー。イイね、この黄色、夏を満喫すんぞっていう北欧魂を感じるわ」


コロンとした可愛らしい黄色のケースを見つめ、「この色、くつざわに似合うね」と、幼い頃と変わらん笑顔を浮かべて呟いた。そんな彼女は、たぶんプロのカメラマンよりも私を撮るのが上手い。

4種類のイヤーチップを手に、どれが耳に合うのかと探す私の隣で「私にはこれがハマるよ!見て!」と、聞いてもないことを言ってくる。


で、こんな時間が一番私を豊かにさせるんだと思う。



「最近さあ」

美しすぎるものに心が惹かれなくなった。美しい、というより、魅せるために美しく誇張されたもの。

観光地がお客様のために「らしさ」を作りすぎていたり、「こういうものがお好きでしょう」と置かれた喫茶のショーケースの顔ぶれが、#エモい の付いた投稿欄によく並んでいたり。

意図しない生活の中で生み出された文化や景観が、トレンドとして誇張され、消費されにゆくだけの美しさは寂しいものに見えて、心苦しくなるのだ。


そんな消費経済に飲まれた精神を癒す豊かさとして、田舎暮らしというのが「豊か」を得る今のトレンドになりつつある。

いつしかそれは、ショーケースに並べられたような、魅せるものへと変わっていく。ような気がしている。


田舎暮らしは、「何もない」を楽しむとよく表現されるが、その「何もない」が指すものは不自由や不十分とはまた違ったものだと思う。でも、田舎にしかないとされる「豊か」を求めて、人は動く。

30歳だった奥田民生は、「退屈ならそれもまたもグー!」と言っているわけで。それは田舎に求めに行ったものではなく、奥田民生の意図しない生活の中で見つけた豊かさなんだよね。自分のためだけの。



鮮やかな夏色のイヤホンから流れる奥田民生の声を聞きながら、親友にべらべらと話す。こんな話をウンウンと聞いてくれる親友は国語の教員志望。いい先生になるぞ。


今からどうする? 海でも行く?

冷たい炭酸飲料を頬に当て、カメラでガードされる、みたいなおふざけをしながら行き先を決める。

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海とは言えど、生臭い匂いと深緑に濁った小さな港だ。絵葉書にあるような、青と波の白のコントラストが綺麗な海ではない。

それくらいでいい。


暑さに比例するほどの蝉の声も、耳にぴったりフィットしたイヤホンから流れるサンボマスターの青春狂騒曲で、かき消されていた。

縦に長い雲の中、深緑の海に浮かぶ船の上、潮で錆びたブランコ、目をやるあちこちで、ボーカルの山口さんがメガネとギターを揺らして「今を生きるのだ」って叫んで汗ばんでいるような妄想をする。この時私は、自主制作のMVの中にいた。


山口さんみたいに汗だくになりたくて、一生懸命(空気中の)ギターを弾いていたら、暑さに負けて予定外のアイスを買ってしまったり。

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中学んとき見つけたお気に入りの場所があるんだ、という言葉だけで親友はバイト代のスイカジュースを飲みながらついてくる。

ちっこい港町、小舟が並ぶ横に積まれたコンテナの裏。しばらく使われていないであろう船に乗るためだけの、小さな場所。

ここは人も来なければ、フナムシも来ないからいいんだ。

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隙間だらけの錆びた地面が痛くて、お尻に一点集中するより寝転んだ方がいいと気づいたのは中学三年生の頃だったか。

木製の頼りないスプーンが、レモンのシャーベットを口に運んでくれる。レモン色のイヤホンからは、YUIのSUMMER SONG。

高校の一限を、この場所で、この音楽を聴きながらサボっていたことを思い出した。夏が来るから海へ行こうよって、YUIだって言ってるしな。

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うん、音楽と過ごす時間はいい。今日もいい休日になりそうだ。

かんたという幼馴染がいる。似ている著名人はチキンリトル。

小学校の朝礼台でカブトムシを戦わせたり、モンハンのラオシャンロンを倒すのにハマったり、そんな思い出がある。


今だって「今日流星群がえぐいらしい」って電話だけで5分後には流星群を見に行くし、キャッチボールのグローブを失くした代わりにボクシンググローブでミット打ちをしたりする。つまり究極にラフな間柄だということだ。


夏の休日夜の部は、幼馴染と待ち合わせよう。

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このチキンリトルはよく喋る。

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加えてシンプルにアホだ。

幼馴染としては、いいのかもしれない。

旅行先で勢いで買った変なデザインのTシャツと、薄すぎるタイパンツを履いて、缶コーヒーを片手にいつもの公園の遊具に登る。

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老朽化で私たちが遊んでいた遊具は壊され、綺麗な遊具が出来上がった。それでも同じ場所で、同じように集まっている。

夏色が耳にハマりご満悦なかんたに「お前より私の方が似合うわ」と言ってみた。


こいつはいつも自分がハマっている曲の一部分だけを聞かせてくる。

今日は銀杏BOYZの「二十九、三十」。17秒の「ベイベ〜〜〜!」が最高に気持ちが込もっているのでそれだけ聞いて欲しいんだって。

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あまりのゴリ押しに二重アゴ全開でウケてしまった。

夏の夜の涼しいとも言えない空気を吸い込み、きっともうすぐ最期を迎えるであろう蝉の短い鳴き声を聞いて、日付が変わる。

こうやって私の休日が終わっていく。


あぁ、今日も何もなかった。



豊かさってもんが何なのか、まだ大人になれていないからわからないけど、きっと大人になってしまえばもっと遠くなるんだろう。

だからこそ人はわかりやすい「豊かさ」に惹かれ、画面越しの壮大な青と緑に思い焦がれる。でも、いつだってその画面には凝ったレタッチと、考え込まれたカメラワークと、少しの脚色が入っている。

言うなれば、これもショーケースの中にある商品みたいなもんで。

こうやってそれらしく書いた文章も、フィルム調のフィルターも、本当は全部要らない。


私にとっての豊かさは、一等星しか見えないような濁った空気の地元の休日にあって、この画面の中にはない。


電車で数時間揺られなくとも、欲望と音楽、それに少しの怠惰があれば、きっと心の渇きは、癒えるんだろう。画面越しの田舎に求めていた「何もない」豊かさは、割とそこらへんに落ちてたりするのかもしれない。

大人になった全ての人に、そんなことを思い出させる生意気な子供でありたいです。


おやすみ。


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さて、PRのお時間です。

私が休日を共にした、北欧オーディオブランドのSudio(スーディオ)の人気モデル、Sudio Nioの新色レモン

少しの欲望と怠惰、それとお気に入りの曲で、この夏を豊かに過ごしちゃってください。

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・防水性能搭載なので、言うことを聞かない汗や、夏の夕立の中でも変わらないサウンドをお届け。

・4種類のイヤーチップのおかげで、私にも幼馴染にも、これを見てるあなたの耳にもぴったり。ってことで、もうセミに音楽を邪魔されません。

・もっと商品の写真が見たい人はインスタグラムを。

・購入したい人はSudio公式サイトから寄ってらっしゃい見てらっしゃい

・クーポンコード【kutsuzawa】で、Nioレモンに限らず全てのSudio商品を15% OFFにできます!すんげー

・今なら写真のトートバックと、カードケースもついてくる!すんげー!

・写真は寝てた兄ちゃんを起こして撮ってもらいました。兄すんげー!


それでは、良い夏を。


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僕らは自由を 僕らは青春を

気持ちのよい汗を けして枯れない涙を
幅広い心を くだらないアイデアを
軽く笑えるユーモアを うまくやり抜く賢さを
眠らない体を すべて欲しがる欲望を

大げさに言うのならば きっとそういう事なんだろう

奥田民生 / イージュー☆ライダー







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