「住んでみてビックリした本当のフィンランド」~新しい国フィンランド・概説フィンランド史(1)~ 靴家さちこ

2004年にフィンランド人の夫の故郷に移住してきた私が驚いたのは、近所に乱立するガラス張りバルコニー付きの近未来的なマンションの数々だった。これほどまでに、高さだけ同じもののデザインや色の統制がとれていない、ヨーロッパらしからぬマンションだらけなのは、私達の住むエリアが開発中だからだとも思ったが、首都ヘルシンキにしてみても、それほど歴史の重みを“どーん”と感じる古めかしい建物が、あまりない。

他の欧州の首都と比べても、全体的にレンガ造りの建物が少なく、どちらかというと、レモン色、水色、薄いオレンジ色など、ホップな色合いの“妙に軽やかな”建造物が多い。そのせいか、何度来ても今一つ“ヨーロッパ”という感じがしないのである。そこでインターネットで調べてみると、ヘルシンキは1808年に大火災で焼け、1812年に西の都トゥルクから遷都し、1816年にドイツ人建築家のエンゲルにより再建さればかりのまだ若い都市であり、この“妙に軽やかな”建物の様式は「ユーゲント様式」という、フランスでいうところの「アール・ヌーボ式」であることがわかった。

そればかりではない。まずフィンランドという国そのものも、1917年にロシアからの独立を持って成立した国で(つまり1812年に遷都した時は、まだロシア統治下の「フィンランド大公国」)、生後わずか90年余り※という、それはそれは「新しい国」だったのだ。――これらの知識を仕入れたのが、移住してから2ヵ月のこと。こんな基本も知らないまま、よくもまあ、移住してきたものだ。(※当稿が書かれたのは2008年のこと。フィンランドは2017年をもって100歳になる)

ここから先は

945字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?