もうひとつの豚なし豚汁のはなし

私の好きなサイト、アパートメントにて、こんな記事が上がっていた。

まさか、ここで豚なし豚汁の話にお目にかかれるとは……!
妙なところで感激に打ち震えた。

なぜなら、私も全く違うベクトルの豚なし豚汁のエピソードを持っていたからだ。それを今から書いてみようと思う。

あれは確か小学校4年生くらいの頃。
校外学習があって、市内の教育施設に出かけた。

1泊してオリエンテーリングなどをしたり、日帰りでさつまいもを掘ったり。様々なことをそこで体験したが、ちょうどその年は飯盒炊爨だった。

お米と水を飯盒に入れ、火で炊く。ぐつぐつ。
食い意地は有り余っているので、ごはんができる過程を見るのは楽しかった。

そしていざ豚汁を作ることに。スーパーで購入されたと思しき豚肉、にんじん、ごぼう、ねぎ、味噌などが用意され、生徒たちで調理する。

さあ作るぞ! と同じ班のみんなで意気込んだ時。

べしゃっ。

奇妙な音がした。なんだか生々しい音。

全員が一斉に地面に目を落とすと、

パックの1つが裏返しになっていた。

何がどうなったか、もうおわかりだろう。


土と砂まみれの豚肉は、もう食材として蘇ることはなかった。覆水盆に返らず、豚肉鍋に返らずである。

誰が犯人だったかなんて、もう忘れてしまった。
でもあの日の絶望感はまだ思い出せる。

かくして、我々は豚なしの豚汁、つまりただの汁をすすったのであった。

なんの感動も意味もなく、ただそれだけの話なのだけど、いつまでも心に残っているのです。豚なし豚汁。



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