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#450 建物ではなく地面を動かした、京都市京セラ美術館を観に行く。

もう先々週ですが京都で京都市京セラ美術館を見てきたので、メモ。


1、日本最古の公立美術館

こんな状況のなか京都に出かけた理由はいくつかあるのですが、そのうちの1つとして京都京セラ美術館を見る!というのがありました。

同館は1933年(昭和8年)に開館した、日本の公立美術館として日本で現存する最も古い建築ですが、2020年にその建物を生かした形でリニューアルされています(その費用の捻出もあってネーミングライツを実施しました)。

そのリニューアルがなかなか良い!ということでしたので「いつか京都に行ったら見てみたい」と思っていたのです。

ちなみに、リニューアルを主導したのは現在の京都市京セラ美術館館長でもある建築家の青木淳さんです。青木さんは青森県立美術館の設計もされています。
(こちらも隣の「三内丸山縄文遺跡」の発掘現場との連続性やその発掘壁面を取り込んだ形で設計されていて一度見に行きたい美術館です)


2、建物を動かさずに地面を動かす!?

なぜ京都市京セラ美術館を実際に観たかったか、というといろいろあるのですが、最大の興味は、今回、建物の外観はほぼ変えず、入口を変えるために建物前の広場を掘り込んで地下に新たな入口を作ってしまった、という、いわば、建物ではなく、地面のほうを動かしてしまう、というリニューアルがされているのですが、それを実際見てみたかった、ということです。

加えて、建築当時は東西南北にあった入口ですが、リニューアル前に実際に使われていたのは西側のみでしたが、東側の入口も活用し、新たな棟への導線と、東側にある庭園、そしてその先にある動物園まで考えた導線としていることろも興味がありました。

では、私の下手な写真で恐縮ですが、ご紹介します。
まず、平安神宮を背にして、美術館北側から正面を撮影したものです。
今私が立っているところから、入口前に向かって地面が彫り込まれて、スロープ状になっているのが分かるでしょうか…
画面右側に階段が見えますが、リニューアル前はここが平らだったのです。

もう少し正面から。

こちらの方が分かりやすいかもしれませんね。

リニューアル前は、1階の豪華な入口がまさに入口として利用されていました。
ではなぜこんな面倒なことをしたかと言いますと、実は、この1階の入口を入った先も展示で利用されていたのです。

美術館は作品を展示する場所ですが、同時に作品の保護というのも非常に大事になります。温度や湿度、光、害虫(虫食いなどですね)などによって痛むのです。それが、展示室のすぐ脇に大きな出入り口があるとなると、温度、湿度に大きな変化が起こりますし、虫も入ってくるかもしれません。つまり美術館として大きな問題を抱えていたのです。

そこを是正するには例えば入口を回転扉にし風除室を設けるなどが考えられますが、その場合、歴史的建造物である建物に何らか手を入れる必要があります。

そこを回避する方法として、地面のほうを動かして地下に入口を作ってしまう、という方法が取られたのです。

聞いてしまえば、そっか、という話ですが、なかなか思い浮かばない発想ではないでしょうか?かつ、それを実際に落とし込んで仕上げるというのもすごいです。

個人的な印象で言えば、新たにできた部分がガラス面というのは建物が浮いているように見える点でちょっとどうなのかな?と思いましたが、後ほどご紹介する東側のリニューアルと合わせると、なるほど、と思いました。

これによって、展示スペースを外部環境の変化から守りつつ、建物も守ることができたわけです。


3、ロビーと東側入口

続いて、新しくできた地下の入口から入って階段を登った1階のロビーです。

正面が西側、つまり先ほどの入口になります。階段が見えると思いますが、そこを下ると先ほどの入口につながるようになっています。
先ほどの通り、この部屋も昔は展示室として使われていました。が、今は各展示室の受付(この美術館は規模が大きいため同時に複数の展覧会を行なっています)が置かれています。

これは、この空間そのものを見せたい、という意図によるものだそうで、確かに螺旋階段や天井が特徴的な空間となっています。個人的には外光を取り入れる作りになっているので、作品へのダメージも考えたのかな、とは思います。まぁ、今は紫外線など有害な光をカットするガラスはあるので違うかもしれませんが…

さて、続いて先ほどの写真では背中に当たる東側の出口です。

初めて伺ったのでもともとがどうなっていたか分かりませんが、使われていなかった、ということですから閉じられていたのかもしれません。
それが、解放され、東側の庭園がガラス越しに見えるようになっています。

この出口を出て、見上げると…

昔の梁を生かした形で新たに作られたガラスと屋根に連続していく形になっています。
で、振り返ると、

向こうに見える空間が先ほどの白いロビーです。昔の東側出口が見事に活かされているのが分かります。

で、お気付きの通り、西側にもガラス面、東側にもガラス面ということで、これは、昔の建物以外はガラスという透明な異素材を使うことで、溶け込むのではなく、あえて違いを明確にしているという意図がある、また東西にそれを配すことで東西の新しい連続性を狙っているように思えました。であれば、先ほどの西側の処理も納得できます(個人の感想です)。


4、まとめ

いかがでしたでしょうか?

個人の感想にはなりますが、私のメモ、ということでご容赦ください。

ちなみに、この美術館のすぐ隣は平安神宮です。
(下の鳥居は平安神宮のものです)

有料ゾーンと無料ゾーンがあり、今日ご紹介した空間は無料でみることができますので、お近くにお立ち寄りの際は覗いてみても良いかと。
(今だとちょっと涼むのにも良いです!あっついので)


最後までお読みいただきありがとうございました。

京都での滞在について以下を。

美術館についは以下を投稿しています。


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