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落語日記 地域の同業者仲間と行った寄席

浅草演芸ホール 11月中席夜の部
11月17日 
同業者の懇親会として企画された寄席ツアーに参加。年に一度、同業者の親睦を深めるリクレーションの催しがあり、今回は寄席見物とブラジル料理のレストランでの会食が企画された。区内の浅草と上野の二ヶ所に寄席があり、上野広小路亭や木馬亭もある興行街を抱える台東区。しかし地元の同業者で、寄席演芸に親しんでいる人は案外少ない。今回、初めて浅草演芸ホールに入るという仲間も多かった。
私は企画に加わらなかったが、オーバーに言うと幹事の皆さんの地元愛を感じる企画だったと思うし、この催しが参加者の皆さんの寄席演芸の世界に親しむ切っ掛けになれば、嬉しいかぎりだ。

この寄席見物の後にレストランへ移動しての懇親会なので、寄席ファンとしてはもったいないと感じる滞在時間一時間の寄席体験。今回の訪問スケジュールは演者などを見て決めたようではなかったが、たまたまでも出演者が芸協のベテラン3人で、結果的に時間は短かったが個性にあふれる三席と色物の和妻師きょうこ先生も観られて、濃厚で充実の一時間。主任愛橋師匠の高座は観られなかったが、寄席ファンとしても楽しめた一時間だった。落語初心者の皆さんも楽しめたかどうか、落語ファン寄席ファンとしては気になるところ。

桂 米福「写真の仇討ち」
6時に皆さん集合しての途中入場。マクラは、怖いご自身の奥様とのエピソード。酔っ払って、かなり強気な会話は、替り目の逆バージョンみたいな話。ちょっと心配させてから、下げのあるエピソードで笑いをとる。
本編は初めて聴く噺。ネットで調べると、芸協ではよく掛けられる噺らしい。歴史としては、元々あった「一枚起請」という噺を、初代三遊亭圓左師が起請文を写真に変えて改作したもの。噺の中で、中国の古来の逸話を語って聞かせるところが、古風な雰囲気があって面白い。
遊女に騙されたと騒ぐ男が登場するところは、いかにも落語らしい。その馬鹿々々しい鬱憤ばらしが下げとなる。古風な雰囲気が似合いう米福師匠。寄席ファンとしても、一席目から珍しい噺が聴けて満足。

柳家蝠丸「のっぺらぼう」
相変わらず、流暢な語り口とニコヤカな表情が楽しい蝠丸師匠。芸協の中では好きな師匠。明瞭な語り口なので、落語初心者の皆さんにも分かりやすい高座だったと思う。
とんでもなく長い怪談噺をやります、との前置きで始まった噺。この寄席時間で収まる噺なのか、そんなドキドキもあるが、始まってみると夢落ちのループ。
最初は本当に民話のような怪談噺だったのが、ループし出すと、同じ内容でも可笑しさを感じはじめる。最後の方は、馬鹿々々しさが勝って、思わず笑ってしまう。端正できっちりとした語り口だけに余計に可笑しい。噺の構成で笑わせてくれる演目、落語初心者の皆さんも、可笑しさを味わったことだと思う。

きょうこ 奇術
芸協の寄席に来る機会が少ないので、きょうこ先生は初めて拝見。日本に古来から伝わる伝統的な奇術が和妻と呼ばれている。その和妻師のきょうこ先生が、華やかで艶やかな和装に日本髪というザッツ和妻という出で立ちで登場。
唄っているような独特の語り口が印象的なきょうこ先生。ネタも初めて観るようなもの。観せ方にも和妻らしさにあふれ、仲間にも古典芸能を味わってもらえたと思う。

昔昔亭桃太郎「結婚相談所」
私的、この日の待ってました。この日はせこい茶碗は無し。
この芝居の主任は、弟子の春風亭愛橋師匠。まずマクラは、真面目に弟子の紹介。この後に登場しますので、よろしくお願いいたしますと頭を下げる。弟子想いの師匠だ。ここで失礼するので、心の中でごめんなさい。
本編は、私の大好きな「結婚相談所」。何度聴いても、可笑しい。何度も聴いているので、さらに可笑しい。そんな桃太郎師匠の高座。この得意中の得意の演目を、この日も聴けて大満足。
終演後に仲間から感想を聞くと、桃太郎師匠は言葉が不明瞭で聞きづらかったとのこと。あの独特の可笑しい語り口も、ちょっとマニアック過ぎたか。私一押しだった落語家が、寄席初心者の方々にはちょっと不人気。皆さんとの落差に、改めて自分のマニアぶりを痛感させられた次第。

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