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落語日記 常連さんたちが待ちに待った扇辰師匠の高座

第56回ととや落語会 入船亭扇辰の会
12月17日 下板橋駅前集会所
この日は、昼のやまと師匠の独演会に引き続き、久しぶりに落語会の梯子。毎回楽しみにお邪魔している板橋の寿司屋ととやの親方主催の落語会。今回の出演者は、親方が贔屓にされている入船亭扇辰師匠。
ととや落語会のレギュラーメンバーの扇辰師匠の出演に、楽しみ待っていた常連の観客で満員の会場。開演前は、ととや特製ちらし寿司弁当での食事タイム。この時間が、期待の高まるワクワクタイムとなっている。

親方の余興「サンタクロースとエイリアン」
この会お約束が、幕開きは前座代りの親方の余興から始まること。余興の出し物は。毎回変えている。なので、この日の出し物は何だろうと予想するのも、常連さんたちの楽しみになっている。
この日は暮れのクリスマス間近な時期、同席した落語仲間の一致した意見で予想した出し物は、見事的中。この時期にしかできない出し物なので、常連さんならみな予想していたことだろう。なので、サンタの扮装の親方が登場しただけで、客席大受け。いつもながらの漫談で大笑いする常連さんが、大いに客席を温めて、この後の落語家の口演を聴く下地を作った。

入船亭扇むめ「狸札」
まずは、四番弟子でまだ前座に上がっていない見習いの辰むめさん登場。辰むめと書いて「たつうめ」と読む。福岡出身で、太宰府天満宮の梅が由来のお名前らしい。この日記を書いている現在は、落語協会の前座として登録されている。
まだ着物姿も板についていない青年だが、どこか扇辰師匠の語り口を感じさせる高座。将来が楽しみだ。

入船亭扇辰「蕎麦の隠居」
慣れ親しんだ会、ホームグランドに帰ってきたという表情の扇辰師匠を迎える満場の拍手。待ってました感があふれる会場。扇辰師匠の一言一句に反応する客席。これだけ盛り上がる落語会も珍しい。扇辰師匠も高座で楽しかったはず。
開演にあたっての注意事項を伝えた辰むめさんに対するお小言。次回には居ません、に客席も大受け。マクラは楽屋イジリ、親方イジリが続き、常連さんたちは大喜び。
本編は、遊かりさんの独演会でゲスト出演したときに聴いた演目。蕎麦好きな隠居が繰り出す蕎麦屋に対するお小言の連続。これが、常連さんたちに大ハマり。小言キャラの似合う扇辰師匠の芸風とも相まって、一席目から笑い声が途切れない客席だった。前回に聴いたときよりも、確実に受けていた。客席の盛り上がり自体が演者の熱演を引き出すという見本のような時間だった。

仲入り

入船亭扇辰「片棒」
二席目、トリネタとして選ばれたのがお馴染みの演目。寄席でもよく聴かれる噺。扇辰師匠で聴くのは初めて。扇辰師匠も久し振りに掛けたそうだ。
お馴染みの噺なので、筋書は知っている。この日聴いた扇辰師匠の一席は、お馴染みの筋書と少し異なっていた。
印象に残ったポイントを書き残しておく。まず、赤螺屋(あかにしや)の息子が三人ではなく、金と銀の二人のみ。冒頭で大旦那から、二人の息子には困ったもんだと告げられ、落語ファンは驚いたはず。三人目の息子の言動が、この噺の下げであり演目名の由来。なので、落語ファンとしては、三人目の息子が登場しない片棒はどんな下げになるのか、そんな大前提の楽しみが根底に流れながら、この一席を聴くことになる。
そこで始まった片棒は、長男金、次男銀ともに通常の型。無駄に贅を尽くす大盤振る舞いの葬儀の金、破天荒で未曾有なふざけた葬儀の銀。まったくいつもの片棒と同じ。遊び人の銀の語る葬儀の中で、祭り囃子や木遣りなど、扇辰師匠が良い咽を聴かせてくれる。この金と銀の葬儀の様子は、まさに本寸法な型。
息子二人の話を聞き、嘆き悲しむ大旦那。そこに現れたのが番頭。息子たちからお家の一大事にはどうするのか、話を聞いてはどうですか、そう助言したのは番頭。そんな話を息子たちにさせたのは番頭の策略だったのでは、そう思わせる下げ。ネタバレになるので、これ以上の下げの記載は省略する。なので、片棒が出てこない片棒だった。
どうやら、この下げは扇辰師匠のオリジナルらしい。色々な楽しみや驚きを与えてくれた片棒。見事な改作で、落語ファンも楽しませてくれた。

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