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ジェイムス・テイラーとの夕べ

 米シンガーソングライターのジェイムス・テイラーが日本にやって来た。一晩限りのコンサートが2024年4月6日(土)、東京ガーデンシアター(東京都江東区有明2-1-6)で開かれたので足を運んだ。
 タイトルも「An Evening with James Taylor」。
 ジェイムスの初来日は1973年。そして2010年にキャロル・キングとともに来日して以来13年ぶりの公式訪問だ。


 定刻になると会場が暗転した。
 するとジェイムスが現れて帽子を脱いでおじぎをした。
 1曲目の「Something in the way she moves」が終わると1968年にビートルズのレコード会社アップルと契約し、ソロデビューしたことを話した。そう、この歌のタイトルからジョージ・ハリスンは自身の「Something」の冒頭の歌詞をつけたのだ。
 「それよりもっと前の歌」と話して歌ったのは「Rainy Day Man」。
 今回のライブ会場である東京ガーデンシアターを見渡して「Perfect room for music」(音楽をやるには完璧なハコだ)と絶賛した。
 続けて、1982年に亡くなった米コメディアンのジョン・ベルーシにインスパイアされたという「That's why I'm here」を披露した。「私にとってターニングポイントになったのです。目を開いてくれました」。
 その後はオーストラリアについての歌「Yellow and Rose」。
 カントリーフレイバーな「Anywhere like heaven」。
 「Never die young」を次に歌うが、その前に「Too late for me」とジョークを飛ばした。つまり、若くして死ぬなというけどジェイムスの場合はもう若くないから「遅すぎる」という冗談だ。
 そして「Country Road」。
 ドラマーの紹介があった。腕利きのスティーヴ・ガッドだ。
 バイオリンでコーラスのアンドリアの紹介もあり、ドラムとバイオリンで一曲演奏した。それに続けてジェイムスが「Sweet Baby James」を披露。
 ジェイムスは「I'm glad to be back in Tokyo. Excellent」と話した。
 そして「Handy Man」と「Long Ago and Far Away 」。「 Sun On the Moon」で第一部が終わった。

第2部は「Caroline in my mind」でスタート
 約20分の休憩を挟み、第2部がジェイムスを代表する一曲「Carolina in my mind」で幕を開けた。次はアップテンポの「Mexico」。
 「Steamroller」、友人の死についての「Fire and Rain」が歌われた後、「1960年代初めにジェリー・ゴフィンとキャロル・キングによってドリフターズのために書かれた曲です」との説明があって「Up on the roof」。
 「Shower the People」を歌い終わると、「サプライズゲスト」として妻のキムさんがステージに上がった。コーラスの3人に加わった。
 そしてジェイムスは「もう一曲、キャロルの歌をやろう。友情についての素晴らしい歌だ」と言って歌い始めたのは「You've got a friend(君の友だち)」だった。ジェイムスの歌声とコーラスに会場は聞き入った。
 「 How Sweet It Is (To Be Loved by You)」が本編最後。
 拍手が鳴り止まずにアンコールとなった。
 「Shed a Little Light」「 Your Smiling Face」と続いた。
 そしてアンコールの最後は何と今年2月にこの世を去った指揮者の小澤征爾さんに捧げられた。


 ボストンに生まれたジェイムスと妻キムさんは小澤さんと長年交流してきたという。偉大なるマエストロ小澤さんはボストンのオーケストラのリーダーでした。これはセイジオザワの歌です」と言って歌い始めた。
 「僕たちは楽しい時間を過ごした/でも過ぎた時間を戻すことは出来ない/僕はもうあなたに会うことが出来ない/目を閉じて/大丈夫/僕はこの歌を歌うことができる/あなたもこの歌を歌うことができる」。
 「You can close your eyes」だ。
 観客からは惜しみない拍手が寄せられた。
 落ち着いていて暖かみのある、まさにジェイムスの人柄を反映したかのような素晴らしいコンサートが幕を閉じた。

  ジェイムス・テイラーは1948年、米東海岸のボストンに生まれた。
 1968年にビートルズのアップルレコードからソロデビュー。デビューアルバム『James Taylor』にはポール・マッカートニーが参加したり、ジェイムスの「Something in the way she moves」という歌のタイトルをジョージ・ハリスンが自作曲「Something」の頭の歌詞に採用したりした。
 しかし、アップル内部の問題や健康問題からアルバムはヒットはせず。
 英国から母国に戻ったジェイムスはキャロル・キングやジョニ・ミッチェルといった仲間たちとともに2枚のアルバムを制作する。『Sweet Baby James』と『Mud Slide Slim』である。これらの作品で人気を得る。

『Sweet Baby James』
『Mud Slide Slim』


 70年には友人の死について歌った「Fire and Rain」が全米ヒットチャートの3位まで上昇。キャロル・キング作の「You've got a friend(君の友だち)」は翌年ナンバーワンを獲得する。
 「うつろな愛」などのヒット曲で知られるカーリー・サイモンは元妻。
 ジェイムスはその後も一線で活躍を続け、2015年にアルバム『Before This World』が全米1位になる。その後、スタンダード集『American Standard』を発表するなど話題を集めている。

『Amerian Standard』(2020)




 

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