見出し画像

「水木しげる妖怪展」を観た

 『水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~』が2024年1月20日(土)から3月10日(日)までそごう美術館(そごう横浜店6階=横浜市西区高島2-18-1)で開催される。
 オープニング前日に行われたプレス内覧会に参加した。
 これまでにも水木しげるさんの妖怪画にフォーカスした展覧会は多数行われてきたが、今回はその創作手法に焦点を当てている。
 「昔の絵師たちが描いた妖怪画を参考にして、今の人たちに伝えやすいように描いていました。水木が創作したわけではありません」と水木しげるさんの長女原口尚子さんは話した。
 水木さんはありとあらゆる古書店街に行って妖怪本を集めた。「水木が一番喜んだのは鳥山石燕(とりやませきえん)の本で「画図百鬼夜行」です。いろいろな妖怪画が描かれており、これにインスパイアされました」。
 「妖怪は昔の人が残した遺産であって、水木はこれを尊重しました。いわば民俗学ですね。そして水木はこう言いましたー「妖怪の中にむかしの人々の気持ちがいろいろ込められているような気がしてならない」」。
 水木は日本民俗学の創始者・柳田國男にも大きな影響を受けた。

ぬりかべを背にした原口尚子さん 
砂かけ婆 ⓒ水木プロダクション
児啼爺 ⓒ水木プロダクション


 第1章「水木しげるの妖怪人生」ー大阪で生まれた後数か月で移り住んだ「境港時代」。近所ののんのんばあというおばあさんがお化けの教師だったことなどが紹介されている。そして「南方最前線」では戦地で体験した不思議現象について、そして「貧乏多忙時代」へと続く。
 原口さんは「水木は最初から妖怪画を描こうとして始めたわけでなく、貸本で鬼太郎を描いていました。貸本の後に週刊マガジンで鬼太郎を連載します。同じ頃に少年サンデーから何か連載してくれと頼まれるのです。二つの週刊誌での連載はさすがに体力的に難しいと思ったようですが、サンデーのほうは妖怪を中心にした絵物語とすることで引き受けました」。
 「それが今これだけ多くの妖怪画を描くきっかけとなりました」。

ⓒ水木プロダクション


 第2章「古書店妖怪探訪」ー前述のように古書店を巡り、妖怪に関する文献を漁った水木さん。水木さんがインスパイアされた絵師などを紹介するとともに、水木さんの古書コレクションも展示されている。

展示風景


 第3章「水木しげるの妖怪工房」ーここでは本展のメインコンセプトである創作手法にフォーカスしている。水木さんは晩年までに1000点近くの日本の妖怪を描いた。妖怪についてはいにしえの絵師たちの著書にある絵や文字情報からインスパイアされると同時に、名前が伝わっていないような妖怪については頭の中で考えて「これだ」と思ったらそれをモチーフにして描くこともあったと原口さんは説明した。

水木しげるの仕事道具


 第4章「水木しげるの百鬼夜行」ーここでは「山」、「里」、「水」、「家」それぞれに棲む妖怪たちが紹介されている。山は古くから神聖視される一方で魔物が住みつく場所として怖れられてきた。日中は平和にみえる里にも黄昏時から妖怪たちが現れ出す。井戸、川、湖沼そして海ーそうした水の環境にも妖怪は多数住み、時に人間に危害を加えてきた。家のなかでは神仏や魔除けなどにもかかわらず妖怪たちは跋扈した。

セコー大分県大野郡根津町のセコは2,3歳の子どもの姿をしていて山中で人まねをしたりいたずらをする。熊本県上益城郡のセコは夜とか雨の日に、山から伐木を引き出す音や、竹を切る音を立てて人をだます ⓒ水木プロダクション 
頬撫で ⓒ水木プロダクション 
枕返し ⓒ水木プロダクション 
天井下がり ⓒ水木プロダクション


 エピローグ「妖怪は永遠に」ーなぜ水木は妖怪を描き続けたのかと言えば、それは妖怪を解明するためだった。そこには後世に妖怪文化を遺したいという強い思いもあったのだ。

 

 開館時間は午前10時から午後8時で、入館は閉館の30分前まで。ただし、そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合がある。
 会期中は無休。入場料は一般1600円、大学・高校生1400円、中学生以下無料。前売りはそれぞれ1400円、1200円。 問い合わせは045-465-5515(美術館直通)まで。そごう美術館の公式サイトは https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?