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小出裕章が語る能登地震と原発

 元京都大学原子炉実験所勤務の工学者(原子核工学)、小出裕章さんは「日本中どこでも大きな地震が起こるわけで、早くそれに気づいて原発から撤退するべきだと思います」と力を込めた。
 日本は世界の0.4%の面積にもかかわらず、世界で起こる地震の1、2割が集中しているという。
 「原発はアメリカとヨーロッパで主に推進されてきました。アメリカにはおよそ100基建てられましたが、ほとんどは東海岸です。それは地震がない所に建てたということです」。
 「ヨーロッパには約150基の原発が建てられましたが、あの地はカンブリア大地という非常に安定したところだったので建てられたのです」。
 「それなのに日本に建ててしまった。それがもともと間違いだったことにみなさん気がつかないといけない。様々な断層があるのを認識できないままやってしまった」と小出さんはいう。

小出裕章さん


 2024年1月1日午後4時10分頃、最大震度7の大地震が石川県、富山県、福井県、新潟県などのエリアを襲った。
 「(石川県の北陸電力)志賀原発などがもし運転中だったら、この能登地震で大変怖ろしいことになっていたと思います。幸い、福島第一原発事故の後、停止中だった。再稼働へゴーみたいな話が昨年出ましたが、懲りないんですね」。
 原発を推進する勢力を「みなさんは原子力村といいますが、私は犯罪者集団だと思うので”原発マフィア”あるいは”原発ギャング”と呼んでいます」。
 「原発を建てる時にゼネコンと原子力産業が大儲けする。福島事故が起こったら除染のためにゼネコンが大儲けする。一段落すると復興ということで彼らが大儲けする」ーそういうことだと小出さん。
 大事故が起こったにもかかわらず「誰一人として責任を問われない。東電の社長、会長、推進してきた自民党や官僚たち、誰一人として責任を取らない。何をやっても怖くない。カネは電力料金と税金で賄える。これが彼らが福島事故から得た”教訓”なんです」。
 「もし今回大事故になっていたとしても、誰も責任を取らず、北陸電力もなくならずに存続していたことでしょう」。
 2023年3月、北陸電力の志賀原発に「活断層はない」という主張を是認する判断を原子力規制員会が示していた。
 しかし、小出さんはいう「地表面の断層を調べることは出来ても、海底は出来ない。そもそも地震の予知なんて出来ないわけで、起きてしまってから「しまった」という話なんです」。

核燃料の冷却には問題ないのでは
 志賀原発の1、2号機の変圧器配管が壊れて計7100リットルの油が漏れだしている。「けっこうな量が漏れています。中越地震の時も3号機の変圧器で火災が起きました。だから今回も起こるべくして起きた。これからもあるでしょうね」。
 また志賀原発1,2号機の使用済み核燃料プールの水が計420リットル漏れたことについて、小出さんは「プール全体が揺れる「スロッシング」ですが、水は満杯に入っていますから、こぼれ出てしまうのは当たり前です。福島でも中越でも起こったことです」。
 「400リットルぐらいならば燃料の冷却には問題ないと思います。それにその水は処理されており、放射性物質はそれなりに減らされているので大きな問題ではないと思います」。
 外部電源が一部失われて他の系統に切り替えて対応しているという点については「福島では1号機から4号機まで、送電線の鉄塔が倒れて、すべて外部電源が失われた。東電は想像していなかった事態が起こったわけで、結局は大事故になりました」。
 「外部電力が絶たれた時には非常用電源があるけれど、非常に危うい。外部電源が失われるようなことは決してあってはならない」。
 「余震が続いていますが、住民に対する危険が私にとっては一番心配なことです。志賀原発はもう10年も停まっているので、運転中の原子炉とは違う。余震でいろいろなことが起きると思いますが、たぶん福島事故のように大きなことにはならないと思っています」。

小出裕章「原発は終わっていない」(毎日新聞出版)
共著「原子力村の大罪」(KKベストセラーズ)

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