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どうぶつ百景@江戸

 人間社会が発展すればするほど孤独感を増すこともあるという。その時に寄り添ってくれるのは家族や恋人などの人間だけでなく、犬や猫といったペットも家族同様の存在としてより大切にされていく。
 動物とのかかわり方は国や時代などによって異なる面がある。ではここ日本の首都東京がかつて江戸だった時に、人々はどのように動物とかかわってきたのか。それを美術品や工芸品から探る美術展が開かれる。
 「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展が2024年4月27日(土)から6月23日(日)まで東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)にて開かれる。
 江戸東京博物館の61万点にも及ぶ収蔵品のなかから、人と動物との関係を物語る美術品や工芸品など約240件を紹介する。
 本展は、2022年にパリ日本文化会館(フランス)で好評を博した「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展を拡充した凱旋帰国展だ。

歌川広重《名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣》1857(安政4)年、江戸東京博物館蔵 [5/28から展示}


 1603年、江戸に幕府が置かれ、街並みが整備されていく。街では人々がネコや犬を可愛がり、時にゾウの見世物が話題になり、ウズラの声を競う会が催され、ウサギの飼育ブームが起きた。また、人々は郊外に出かけて野生の鳥の姿や虫の音に季節を感じたものだった。

鈴木春信《蚊帳を吊る母子》明和(1764-72年)末期、江戸東京博物館蔵 [5/28から展示]


 1877年に来日した米国の動物学者エドワード・S・モースは、日本人が動物に対して親切に接することに驚いたという。動物の名に「さん」づけをして親しみを込めて呼び、人力車の車夫は道に居座る犬やネコを避けて走っていると記している。
 壮大な狩猟の記録画、歌麿や広重ら人気浮世絵師による錦絵など、多くの絵に動物たちは登場している。
 さらに、動物たちのイメージはデザインモチーフへと昇華し、温かみのある郷土玩具や、精巧な工芸品にも用いられるようになった。

 《ミニチュア玩具 とんだりはねたり》昭和中期(1945-65)、江戸東京博物館蔵 [通期展示]
《刺繍藤に猿図懐中たばこ入れ》のうち「懐紙入れ」江戸時代、戸東京博物館蔵 [通期展示]

 本展では膨大な江戸東京博物館の収蔵品のなかから、浮世絵、工芸品、染織などテーマごとに展示し、江戸・東京において人々が動物をどのようにとらえ、表現していたのかを俯瞰する。
 東京会場において特別展示で東京の鉄道馬車にまつわる当時の版画を紹介する。「東京馬車鉄道」は、最盛期には300両の車両と2000頭の馬を擁しており、鉄道馬車も都市交通を支えていた。

歌川広重(三代)《鉄道馬車往復日本橋之真図》1882(明治15)年、鉄道博物館蔵 [5/26まで展示]


 開館時間は午前10時から午後6時(金曜日は午後8時まで)。入館は閉館30分前まで。休館日は月曜日(4月29日、5月6日、6月17日は開館)、5月7日(火)。
 入館料は一般1300円、高校・大学生1100円、中学生以下無料。
 連絡先は03-3212-2485.東京ステーションギャラリー公式サイトは https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

 JR東京駅丸の内北口
東京ステーションギャラリー館内の螺旋階段

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