辛酸と不屈の闘志のコントラスト GKの喜怒哀楽③~2018年AFC U-19選手権、日本対サウジアラビア~

辛酸を嘗めながら、不屈の闘志で〝背番号1〟の価値を示した。AFC U-19選手権の準決勝、日本対サウジアラビア。同選手権で初出場となったGKの若原智哉は、自らのミスで前半29分に先制点を献上する最悪のスタートを切り、動揺から負の連鎖に陥る危険性もあったが、冷静に1つひとつのプレーに集中すると、後半6分には難しいシュートをストップ。汚名を返上した。

京都の期待を背負う俊英

若原は京都サンガに所属する18歳で、身長は185cm、体重は83kg。現代のGKでは平均的だ。GKの判断力や予測力は試合経験で磨かれるため、若手が出番を得るのは難しいが、今季はJ2で12試合に先発。クラブからの期待は大きい。

同選手権に臨む日本代表でも、背番号は1を与えられた。一般的にレギュラーのGKが背負う番号だ。しかし、初戦からゴールマウスを任されたのはG大阪の谷晃生。若原の出番は、日本が来年に開かれるU-20W杯の出場権を得るまで待たなければならなかった。

最低限にして必達の目標をクリアし、プレッシャーから解放されて迎えた準決勝。日本はスターティングイレブンを大幅に入れ替え、若原も名を連ねた。

ファーストプレーは、ロングフィードだった。DFの背後に転がってきたボールを、ダイレクトで高く蹴り上げて前線へ送った。「まずはセーフティーに」。そんな意識が滲(にじ)んだ。

守備範囲は広く、足元の技術も安定しており、サウジアラビアが多用するDFの裏へのロングボールを的確に処理。初出場ならではの硬さは見られなかった。

唐突な落とし穴

もっとも、落とし穴は唐突に出現する。前半29分、サウジアラビアの10番がペナルティエリアの右に侵入し、角度のない場所から強引にシュートを打つと、若原の股をすり抜けてゴールネットを揺らした。

サウジアラビアの10番には、クロスとシュートの選択肢があった。ゴールまでの角度を踏まえれば、クロスが妥当だ。しかし彼の体勢、足の振り方は明らかにシュートを狙っていた。GKは、まずシュートのコースを消さなければならない。顔の上、そして股の下だ。

結果的に、若原は股の下を十分に閉じていなかった。あるいは、シュートのコースが正面に限られるからこそ、左のゴールポストの後ろでなく、真横か前に構えるべきだった。そうすれば、股の下を抜かれたボールが即座にゴールラインを越える事態は避けられた。

悪夢のような失点だが、若原の心は折れなかった。むしろ、プレーの安定感が増していく。前半の終了間際に味方のミスから追加点を奪われても動じない。

そして後半6分、日本を救う。サウジアラビアの選手がペナルティエリアの僅かに外から放ったシュートは、味方に当たりコースが変わったが、鋭く反応して軽やかに跳躍。密集地帯を縫って出てくる難易度の高いシュートを、鮮やかに止めた。

日本はサウジアラビアに0-2で敗北。若原にも苦い記憶が焼き付いた。それは来年のU-20W杯、ポーランドの地で守護神の座と栄光を掴み取り、塗り替えるしかない。まずは、所属する京都サンガで清水圭介の〝壁〟に挑む。

<採点>
若原智哉:5
ビッグセーブ:1
ミスセーブ:1
致命的な失点を喫した後に積極性を失わなかったのは高く評価できる。プレーエリアが広く、足元の技術も十分。セービングも堅実だった。それだけに、先制点を許した場面が悔やまれる。

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