好守の競演と残酷なミス GKの喜怒哀楽②~2018年10月31日、鹿島対C大阪~

J1屈指のGKによる〝好守の競演〟は、1つのミスが明暗を分けた。後半7分、鹿島の永木のCKにニアサイドで小田が頭で合わせると、ほぼ正面に回り込んだC大阪のキム・ジンヒョンはキャッチを選択するが、のけ反った身体の状態でボールを迎える形になり、勢いを殺し切れずに後逸。即座にゴールラインを越えようとするボールをかき出そうとしたが、主審は得点を認めた。この試合、筆者の判定で鹿島のクォン・スンテは2度、キム・ジンヒョンは3度、ビッグセーブで失点を阻止。試合を引き締め、白熱させたが、勝敗を決したのはミスだった。

近代化の象徴

184cm・85kgのクォン・スンテと192cm・82kgのキム・ジンヒョンは、共に近代的なGKだ。シュートを止める技術の高さに加え、足元でのボールのコントロールも巧い。守備の戦術が高度化および平準化し、前線からの組織的なプレッシングで相手のビルドアップを遮断するチームが増える中、彼らのようにパスのコースを確保できるGKの重要性は高まる一方だ。

実際、この試合でもクォン・スンテとキム・ジンヒョンは精確なロングフィードを供給。何度となく高い位置に攻撃の始点を築いた。特にクォン・スンテは、C大阪のアタッカーに圧力を掛けられたDFからボールを引き受け、後方での組み立てをスムーズにさせた。

両者は〝本職〟でも魅せる。まずは、キム・ジンヒョン。前半28分、金森とのワンツーでペナルティエリアに侵入した田中のシュートを右足で止める。田中と味方の位置に連動したポジショニングから、冷静にコースを切った。次はクォン・スンテの番だ。同41分、高木の折り返しをフリーで受けた柿谷が放ったシュートを、素早く右側に身体を倒してストップ。味方が左側を切っており、柿谷の位置からもコースは予測しやすかったが、足でなく手でクリアできたのは、身のこなしの鋭さを物語る。

後半7分にミスから失点したキム・ジンヒョンだが、それを引きずらず、以降はゴールに鍵をかける。同31分、久保田からのスルーパスに反応した山口がペナルティエリアに抜け出すが、ファーストタッチが少し大きいと見るや、一気に距離を詰めてブロック。同36分にも再び山口と1対1を強いられたが、不用意に飛び出さず、どっしりと待ち構え、シュートを正面に呼び込んだ。

クォン・スンテも同35分、ソウザのFKから杉本が放ったヘッダーを軽やかなステップでクリア。見た目以上に難しいシチュエーション――ゴールに迫ってくる軌道のボールを飛び出して処理できない場合、誰かに途中で触られる可能性があるため、ポジションを下げ、ギリギリまでボールの軌道を見極めなければならない――だったが、動じなかった。

絶妙な背後のケア

両者は他にも好守を披露。とりわけ、攻撃時に高い位置を取るDFの背後のケアは絶妙だった。

GKの凄味と残酷さを明らかにした90分余。最後に笑ったのはクォン・スンテだった。

<採点>
クォン・スンテ:7
ビッグセーブ:2
ミスセーブ:0
後半23分の高木のシュートを正面でこぼしたのはミスに近いが、それ以外は完璧だった。

キム・ジンヒョン:6.0
ビッグセーブ:3
ミスセーブ:2
失点に繋がった以外にも、前半に正面のシュートを〝ジャグリング〟。多くの決定機を防いだが、珍しくミスも目立った。

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