見出し画像

#1_10 アイドルとSNSの写真(SNSと期待値コントロール)

#1系統では「アイドルとは何か」をもとに、アイドルの歴史や存在意義みたいなものを深掘りしつつ、その価値提供、顧客体験の本質を探索していきたい。

その中で、過去に歌(#1_6)・振り付け(#1_5)・顔(#1_3)・レス(#1_4)・ワンマン(#1_7,9)・方針ストーリー(#1_8)などを取り上げている。

今回はSNSでの写真をテーマに、写真加工などはどこまで求めるべきなのか、そもそもターゲットはどこにあるのか、をもう一度再考することで、マーケティング視点からの認知⇒実施の来訪・チェキまでの期待値コントロールについて語っていく。

新規客のカスタマージャーニー

行動の流れを考える

地下アイドルの新規客におけるカスタマージャーニーは一般的に下記の2系統に分かれると考えられる。
※カスタマージャーニーとは、顧客が実際の購買をするまでの流れ(行動&態度変容)を考えるものであるが、ここでは全体の行動のみとらえている。

  • 「既存ファンからの紹介」で他グループのファンや友達の一般人がライブへ参加するパターン

  • 他グループのファンが「偶然SNSで接触」してライブに参加するパターン

もちろん各フェーズにおいて分析すべきところはたくさんあるが、今回は2つ目の「偶然SNSで接触」してライブに参加する、おそらく最もボリュームの大きいパターンを分析する。

行動に対する態度変容を考える

ここで、各種SNSでの情報接触⇒ライブ参加⇒特典会への行動と態度変容を考える。

まず各種SNS(主にTwitterのRTや、Instagramのいいね)での情報接触がある。
過去に#1_3のアイドルと顔でも少し記載したが、アイドルオタクが新しいアイドルをSNSで見つける理由は大体が顔ではなかろうか?

つまり、アイドルが新規のファンを獲得する一番最初の段階として、SNSに掲載されている写真が非常に重要なのである。

期待値とプロスペクト理論

期待値の分類について

※この節では下記の総説論文を参考としている。
下記の参照元はこちらからご確認いただきたい。
森藤ちひろ(2009)「マーケティングにおける期待の重要性」『経営戦略研究(関西学院大学)』 第3号,pp.21-34

http://www.kwansei-ac.jp/iba/assets/pdf/journal/studies_in_BandA_2009_p21-34.pdf

マーケティングにおける期待を「期待は過去の経験、現在の状況あるいは他の情報に基づいた将来の結果予測である」と定義づけられている。
つまりは、期待とは持ち合わせるサービスや商品の情報(価格・ブランドなど)と過去の経験則から「大体これくらいの価値・サービスの質を受け取れるだろう」と予測することである。

※上記論文より抽出

また、この期待は大きく分けて4つに分解される。
1. 理想・願望のレベル(can be)
2. 予測・予想のレベル(will be)
3. 当然の・耐えられるレベル(should be)
4. 最低限我慢できる・許容できるレベル(must be)

この時、許容範囲は4の最低限我慢できるレベルになるが、その中で生活者は「こうあってほしい」という望みと「この程度が妥当だろう」という予測の2つがある。
この中で、期待と結果の関係性で満足度が決まるとしている。

また、次の節に繋がるのであるが、主にサービスにおいて知識は動的かつ主観的であり、これまでの経験やプロセスに影響されるとしている。

プロスペクト理論と参照点

ここにおける「主観性」は、つまり人によって判断基準が相対的で異なることを指すととらえてよい。
このように、不確実性を伴う状況において、ある事象が生じる確率やそこから得られる損得がわかっている場合にどのような意思決定を行うかを表す理論を「プロスペクト理論」という。

プロスペクト理論のうち、あまりに語るところが多いため今回は「参照点依存性」に限って議論を進める。
まず参照点とは、このプロスペクト理論における、利得と損失の判断を分ける基準点である。
この時、この参照点は評価を行う人間の過去の経験によって変化することを共感性依存性と呼んでいる。

ここまでより、生活者は期待と結果の差分をもってサービスへの満足度を感じるが、その期待は生活者の過去の経験や知見に左右されるということである。

SNSの写真にあるべき姿

新規の顧客獲得施策という視点

まず先ほどカスタマージャーニーで見た通り、「新規顧客を獲得する」ことを目標とした場合、どのような写真がいいか、という議論をしたい。

まず前提条件として「加工した写真の方が現物よりかわいい」点を確認しておきたい。
もちろん(アイドルの主観的に)現物の方が可愛ければ加工する必要がないからである。

この時、重要なことはSNSを見たときではなく、実際にライブに来たタイミングであると考える。
そのタイミングにおいて
事前情報→SNSの写真、MVなどの公式情報
当日情報→当日の見た目、パフォー今回は
を見た時に、上記の前提に立つと事前情報(参照点)に対して、当日情報はマイナスを感じてしまうのである。
別の言い方をすれば、事前情報を参照点として当日情報を受け取る時、「かわいい」だけを判断軸とすると必ず参照点を下回ってしまうのである。


これは例として、旅行雑誌やHPで見た景色は非常に綺麗なのに、実際に旅行で行ってみるとそんなでもなかった、という現象と似ている。

そのため、アイドルはSNSにおいて2つのどちらかの方針、もしくは両方の方針をとることが必要となる。

まず1つ目は「あまり加工をしすぎない」ことであり、つまり参照点を下げるという期待値コントロールをすることである。
もちろんライブに来てくれる実数がそもそも減少するというデメリットもあるが、実際アイドルの大多数は可愛いわけであって、またSNSで可愛いだけで話題になってファンを獲得できるアイドルは一部しかおらず、実際はデメリットはあまり大きくないのではと考える。
もちろん、must be程度さえ担保できれば初回の特典会は来てくれるかもしれないが、新規をファン化させるには予測の期待ではなく望みの期待に叶うレベルでないと難しいと考えるからである。

2つ目に、「当日の判断軸を可愛いに限定させない」ことであり、つまりこれは参照点がどこであってもパフォーマンスなどの別の軸で期待値を超える方法である。
例えば可愛いと思って気になっていた子がすごい汗をかきながら必死にパフォーマンスをしていたら、そのギャップで期待以上のものが得られるだろう。
つまり、(特にライブ)アイドルが発信できる魅力は顔だけでないわけで、写真を加工してようがライブで魅せらればファンは必ずついてくるのである。

既存顧客に向けたCRM施策という視点

一方で、このSNS戦略をCRM施策(既存ファンへ向けた施策)と考えると、この考え方は変わってくる。

というのも、まずこの参照点がSNSでの写真ではなく、現物の顔が参照点になることである。
つまり、先ほどの「加工した写真の方が現物よりかわいい」という前提が、この場合は現物を前提とすることでプラスになるのである。
そのため、(過度な加工は不要であるが)ある程度可愛いを追求することは重要であると考える。

まとめ

つまり、SNSにあげる写真は「新規顧客向け」なのか「ファン向け」なのかをしっかり考えないといけないのである。
新規向けであれば加工などは抑えつつ、ステージでのパフォーマンスで最高潮になるように設計することが重要である。
逆にファン向けであればある程度の加工はしつつ、ファンに満足してもらう写真を追求することが重要である。

きちんとターゲットを考えたうえで、改めて写真を見てみてほしい。

閑話休題①

写真と現物違うアイドル、多すぎません?

閑話休題②

そんなことより、小柴美羽さん可愛すぎません?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?