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#3_11 まねき卒業・ニジマス解散と地下アイドル業界の構造図

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(記事内で表現している序列については食前舌語の独断と偏見による判断であるためご容赦いただきたい。)

2022年4月16日、地下アイドルのトップを走り続けていたまねきケチャから初期メンバー3人の卒業(23年春予定)という、衝撃の発表があった。
すでに深瀬の卒業が発表されており、これで単独武道館ライブの経験者が一人もいなくなることになる。

またその数日後、もう一つの牽引者であった26時のマスカレイドからも解散発表が出された。

今回は、改めて地下アイドル業界の構成を俯瞰的に見つつ、今回のまねき・ニジマスの発表による業界の変化について予想していく。

地下アイドル業界の構成

ピラミッド構造で表される地下アイドル

多くの地下アイドルオタクが納得するところだと思われるが、現在の地下アイドルは対バンの大きさや香盤の順番から複数の階層で人気・実力が分かれているといえる。

まずTOP層は、地下アイドルを代表するアイドルと定義した。下手な地上アイドルよりも一般人からの知名度も高く、時には地上波番組などの出演などもある。
次に第1層は、まだ地下アイドルを代表するとは言えないものの、TIFメインステージなどの大型ライブのメインステージに名をつられるアイドルと定義した。また地下アイドル歴が長いため、関係値からそうなったといえることもあり得るだろう。
第2層は地下アイドルの中では知名度が高く、DDDやアイドル甲子園レベルの大型対バンでトリを務めるレベルのアイドルと定義した。多くはコロナ前にピンチケで盛り上がれるアイドルが多いと推測される。
そして第3層は中堅規模、第4層はフェスの主催者が運営を務めているため存在感があるアイドル、最終層にその他有象無象が存在すると定義した。

具体的なアイドルを上げると下記になると考える。
※最初にも記載したが、この序列は食前舌語の独断と偏見である。

地上アイドルとの棲み分け

地下アイドルとして定義すると、地上アイドルとの棲み分けを議論しなければならないわけであるが、やはり多くの場合「地下アイドル=ライブアイドル=チェキを収益源」として定義することが最も一般的で納得がいくと考えられる。

直近のコロナ禍の影響もあってか、26時のマスカレイド(以下ニジマス)ではライブには出演するもの特典会(チェキ)を実施しないことが続いていたが、これは一種の「地下アイドルからの脱却」と捉えることもできる。

TOP層に求められる資質

ここで、トップ層に求められる資質を考えていきたい。

まず、何より地下で圧倒的な人気を獲得しており、地下アイドルのオタクからも認められる、地下アイドルとしての代表性を持つことである
ただし、これはTO(トップオタ)が自らをTOとる自称するのがダサいように、グループのブランディングができ、他人から認められ始めて成し遂げられることである。
また、その圧倒的な人気のためにはある程度普遍的に愛されるアイドルソングである必要があり、逆にニッチで攻めていたアイドルにとってはグループ方針の転換を迫られるため大きな障壁になるといえる。

また、もうひとつ重要なことは、地上アイドルからの接着点になるためのパイプを持つことである。
具体的にはグループが積極的にテレビ局・雑誌・広告代理店等への売り込みを行うことで、グループの露出を増やす取り組みを実施することが必要になると考えられる。

地上/地下の顧客流入の関係性とTOP層の役割

ここで注目すべきは地上アイドルのピラミッドと地下アイドルのピラミッドの顧客の関係性である。

地上↔地下のピラミッドの関係性

まず2018年くらいまでのアイドル業界の特徴としては「乃木坂・欅坂(・そののち日向坂・WACK系)の強烈なコンテンツによって一般人がアイドルファン化する」という現象である。
身の回りのまったくアイドルと関係のなかった人が突如として握手券を買ったり、番組を追い始めたりするのである。自分の母親から「今日のまゆゆは…」とか言われた経験があればそれである。
つまり、ある種の強烈なコンテンツによるアイドル文化の浸透ができたのである。

一方で、ファンの突然の拡大に対して、運営は「効率性」を重視される。例えば、乃木坂の握手券は1枚10秒程度話せたときから、今では歩きながら2-3秒しか話せないという(2-3秒は会話ではなくメッセージではないか…?)。
ここにファンたちは「コスパ」を求めるようになる(非情にも思えるが、確かに数秒に1000円を払うのも馬鹿馬鹿しいともいえる)。
この結果、よりコスパ、すなわち金額が安くアイドルと接触ができる地下アイドルへと入り込み始めるのである。これを一般的に「地下落ち」、特に坂道からの地下落ちを「坂落ち」と揶揄・卑下されていた。

ただ、ここで重要なのは、初めて行く、初めて接触する地下アイドルはTOP層のアイドルであることである。
一見不思議に思えるが地上アイドルのファンからすると明白で、単純に地下アイドルの知り合いから紹介されない限り、よっぽどでないとTOP層以下の地下アイドルは知らない、つまり存在しないと同義なのである。
そのため、否応なしにまねきケチャ・ニジマスを地下アイドルはじめとして通い始め、より効率性を求めより地下に下っていくのである。
すなわち、このTOP層は地上アイドルと地下アイドルの接着点として存在している(た)のである

現在の地上↔地下のピラミッドの変化

ここでコロナ禍で大きな変化が生まれている。

まず地上アイドルでは(コロナ禍にかかわらずとも考えられるが、)地上アイドルの新たな強烈なコンテンツが生まれない結果、一般人からの新規のアイドルファンが生まれない状況になった。
その結果、以前から地下になびかなかった、厳選されたファンが地上にきちんとついているため、大きな数での地下アイドル業界への流入が見込めなくなった

一方で、地下アイドル業界では、依然として効率性を求める傾向が強く、無銭ライブを実施していたり、そもそも特典券が安い層の深いアイドルへファンが徐々に移動していく現象が見られた。
また、コロナの影響で声出しの禁止・モッシュの禁止などが行われた結果、ライブが地上アイドルと地下アイドルで大差ないものになってしまった。しかし、パフォーマンス能力は地上アイドルが圧倒的に高いことは言うまでもなく、その結果、特典会に興味のないオタクが地上に回帰してしまう現象も多く見られた

上記すべての原因から、地下アイドルのTOP層・第1-2層あたりのアイドルは新規ファンは来ないのに既存ファンがどんどん離脱していく現象が起こった。
これは、第1層アイドルのほとんどがアイドル歴の長いアイドルで、第2層のアイドルが第1層に上昇できるほどファンを獲得し続けられなかった大きな要因であると考えられ、結果としてTOP層から第2層あたりは流動性がほとんどない状況が続いた。

大きく対策をとったアイドル

ここで大きく対策をとったアイドルとしてBiSH、#ババババンビ、夜行性アミューズがあげられるが、そのすべてに共通することは自分たちのファンの源泉を地上アイドルではない別の業界に設定したところにある。

まずBiSHについては「楽器を持たないバンクバンド」として、完全にアイドルとしての業界を捨てバンド/ロック業界に入った。
その結果として、かつてはアイドルに興味がなかった、なんなら馬鹿にしていた層をファンとして獲得することに成功し、地上アイドルに依存せず最大級の市場で一気に勢いを作ったといえる。

一方で、#ババババンビはグラビア業界の第1線で活躍する人材をメンバーとして起用することで、グラビアファンという別の業界のファン層を地下アイドル業界に引っ張ってくることに成功した。
同様に、夜行性アミューズも女性人気の高いTouTuber、インフルエンサーをメンバーに起用することで、女性ファンというかつての地下アイドルでは獲得が困難とされていたファン層を別業界から獲得することに成功した。

これは企業戦略では『ブルーオーシャン戦略』といい、同じ競争次元での血まみれの激戦を避けつつ、収益性の見込める新しい領域にチャレンジすることで収益を上げようとする差別化である。今回の新しい領域がブルーオーシャンかというと、ここもレッドオーシャンであるようにも感じられるが…

まねきケチャ卒業・ニジマス解散が何をもたらすのか?

ここで今回の本題である、まねきケチャの初期メンバーの卒業(⇒TOP層からの転落が予想される)、ニジマスの解散が何をもたらすかを考えていきたい。
まず下図⓪に見られるように、直近の課題はTOP層のアイドルが皆無になってしまうため地上アイドルからの流入がストップしてしまう危険性がある。
この点からも、一刻も早くTOP層のアイドルを育成することが地下アイドルの喫緊の課題であり、またどのグループもこの空いたTOP層へ攻めてくるものと考えられる。

ここで、大きく考えられることは3つあり、
①第1-2層からのTOP層への成長
②第3層以下からの出し抜き
③地上アイドルの地下化によるTOP層への定着
があるが、ある意味③は夢もないことを語ってしまうため、今回は夢と希望も込めて①②を中心に語っていきたい。

ここで、上記にさまざまなグループの評価と、TOP層になるために必要なことを表にまとめた。
※ここでの評価はグループとしての評価ではなく、TOP層になりえるかという若干紛らわしい評価であることに注意いただきたい。イベント主催系でもグループ自体の評価はAのグループも多数存在する。

まず、TOP層の最有力候補は#ババババンビを擁するゼロイチ系のグループである。
ここの最大の武器はパフォーマンス能力の高さと、別業界から連れてきた圧倒的なファン層、そして事務所のパワーが強くプロモーションを大々的に行えることである。
ただし、2つの障壁があるとすると、まずあまり無視できない数の地下アイドルのファン層から#ババババンビやそのオタクたちを毛嫌いしている風潮がある点である。
新参者という印象もあるのかもしれないが、何よりオタクのマナーの悪さは少し問題である。ただそのマナーも地下アイドル界隈の不文律であり、なかなか当然多数派でその郷に入った人には気付けないものでもあるが…
もう一つは声出しなどコロナ後への対応である。これは不安材料というより未知数というべきであり、ここを克服できれば一気に地下アイドルのTOPに君臨するだろう。(ただし、これも旧地下アイドルオタクとコロナ禍の地下アイドルオタクの間の文化の違いをどう埋めるのかが問題になりそう。)
※ババババンビの記事は下記にも。

次に挙げられるのが真っ白なキャンバス、Appare!、FES⭐︎TIVEという、コロナ以前にピンチケ中心にアイドルファンを獲得したグループである。
この辺りは「対バンだとライブにお客さんはいるけど特典会やワンマンで客が呼べない」というイメージであったが、このコロナ禍で強みを発揮できない中でイメージの刷新を図り、自力をつけた印象がある。
その中でやはり声出しの制限がいつまで続くかの問題は、これらのグループには切っても切り離せない問題になる。
加えて、やはりコロナ以前の「ライブだけ楽しい第1層になれないグループ」のイメージがついているオタクも多く、やはり一歩上に行くためのもう一つブランディングが欲しいとこである。
二つの親和性で言えば、例えば「ライブアイドルのコロナからの再興を私たちが行う、まずは声出し解禁!」のような、地下アイドル業界を引っ張るような施策ができればということである。
(ここから加筆)
と言ってたら、白キャンが7/9河口湖で声出し解禁。
まだ都心ではないところでの開催だが、ここから0→1ではなく1→10→100というところも白キャンが引っ張って行ければ「地下アイドルといえば白キャン」となる日が近くなるかもしれない。

次にNEO JAPONISMやDevil ANTHM.に代表される、パフォーマンス能力の高いロック系であるが、やはり改めて王道アイドルからはずれるためターゲットが絞られてしまう辺りからも、BiSH同様別業界の戦いに挑戦した方が顧客が集まることも予想される。

またFreek(chuLaやネコプラ)やエイトワン(透色ドロップ)などイベンター系で複数アイドルを持つところだと、自社対バンでの顧客の疲弊が見られているが、そもそも自社対バンに客を連れてくるために目立つ1グループを創るためのパフォーマンス能力の高さやメンバーの固定化が強く求められる。
またこの辺りは自社対バンに多数のアイドルをブッキングし、界隈に取り組むことで大きくなるという手法があるが、残念ながら今のアイドル甲子園やアナフェスにそこまでのパワーも残っていない。
※Freekについての記事は下記

最後にまだ見ぬ有象無象であるが、これは近年の傾向として「楽曲や衣装などクリエイティブはいいが、マーケティング能力がない」ことが挙げられる。
これは今後#2で新規アイドルを作ることを想定して記事を書く中でアイドルグループを評価する3軸として別途紹介する。

さいごに

要約すると
・地下アイドルは主にTOP層と呼ばれる数少ないアイドルが存在し、そこが地上アイドルからのファンの流入口として機能していた
・まねきケチャ卒業やニジマス解散によりこのTOP層のアイドルが皆無になるため、今後どの地下アイドルがこの座に座るか注目である。

ということである。

まさに世は大海賊時代!
みたいな感じである。
実はまでよりこれからの方が地下アイドルは(マーケティング的には)面白くなるため、是非これからも一緒に地下アイドル業界を楽しんでほしい。

閑話休題①

ちなみに私はまねきケチャから地下アイドルオタクを始めた人間のため、今回の発表はかなり悲しい。
この記事もまねきケチャ卒業に伴い記載を始めたものであり、まさかニジマスが解散まであるとは。まぁ最近のステージ上のニジマス元気なかったもんな…(1時間で書き直しました、変なとこあったら言ってください…)

閑話休題②

最近更新ができなかったのだが、これは本業だけでなくいろいろ個人的に勉強していたりするため、なかなか地下アイドルを考察する時間がなかったのである。
お陰様で、view数は落ち着いたものの直近の乃木坂の記事も沢山の閲覧がいただけた。
また少し落ち着いたら集中的に#2の記事を書いていきたい。

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