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君から返ってくるまで #6


 ーーさくらが居なくなってから一年半。あれから、あらゆる手段でさくらを探しても全く見つからなかった。諦めかけていたその頃、進学した大学の周辺に施設があることを発見した。

 はたから見たら不審者のように、施設内をじっと見ていると、窓からこちらを見つめる女性がいた・・・運命かと思った。気づいたら僕は、走り出していた。


『すみません!こちらに高野さくらさんは居ますか!?』

「えっと・・・どちら様ですか?」

『あ、失礼しました!僕は、松岡優太と申します。』

「・・!あなたが優太くんね。さくらちゃん居ますよ。こちらです。」

 やっぱりあの子はさくらだったんだ。やっと見つけた。やっと会える。施設の人に案内され、部屋に入ると、一年半前より髪が伸びて少し大人っぽくなったさくらが居た。

『さくら・・・!!』

 こちらを見て少々驚いた様子を見せたが、すぐに窓の方に目を逸らしてしまった。

『さくら・・・?』

「優太くん、ちょっとこちらによろしい?」

『あ、はい・・・』

 やっと会えたのに、さくらはやっぱり会いたくなかったのだろうか。ショックを受けながら、施設の人に着いていくと、学校の職員室のような場所に案内された。


 その施設の人は、渡辺さんというらしい。渡辺さんは僕をソファーに座らせお茶を出した後、状況が分からない僕にこの一年半のことを教えてくれた。

「あの子の事情は知っているわ。そして貴方のことも。」

『え・・・?』

「あの子、一年半前にうちに来てから今もずっと、意思表示はするのだけれど、言葉を発さないの。」

『今も・・・』

「でもね、一つだけ。たった一つだけ、発した言葉があるの。それが貴方よ。優太に会いたいって。」

『・・・!』

「その先を聞こうとしても、何も言わず、首を縦か横に振るだけ。だから私は貴方のことをじっくり時間をかけて聞き続けたわ。」

『そうだったんですね・・・』

「優太くんはさくらちゃんの家の近所に今も住んでるのかしら?」

『はい。そうです。』

「じゃあどうしてここが?」

『そこの大学に進学しまして・・・』

「そうだったの。なら、毎朝さくらちゃんの顔見に来てあげてくれる?何か変化が訪れるかもしれない。」

『いいんですか!?』

「勿論よ。」


 帰り際にもう一度、さくらの部屋に行き声を掛けた。

『さくら、久しぶり。元気?・・・僕、そこの大学に進学したんだ。毎日近くに来るから、明日から顔見に来てもいいかな?』

「・・・。」

 さくらからの返事はない。

『会えて嬉しかった。また来るね。』

 こうして僕は、毎朝さくらに会えることになった。さくら本人がどう思っているのか分からないが、さくらから言葉が返ってくるまで、さくらの笑顔が返ってくるまで、僕は通い続けることにしたーー



次章 最終章 〜僕の夢〜


✄--------キリトリ--------✄


冬休み特別企画6日目です❄️
いよいよ明日が最終章!どんな展開が待ち受けているのか!

明日もお楽しみに。

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