改めて自己紹介(Pさん)

 初めまして、崩れる本棚の、Pさんです。
 この度、note を使った新企画を立ち上げたいと思い、ここにこうして記事を書いています。
 企画の名前も実は今決まっているわけではないのですが、大枠は決まっているので、そのうち決まるかと思います。
 企画を立ち上げたのは、もはや何回目だかわからないけれども、ウサギノヴィッチという崩れる本棚の主宰をしている人との飲み会の席でのことでした。いや、正しくは、僕の頭の中にだけあった企画をウサギさんに話して、GOのサインが出たというわけです。
 今まで文学フリマの場で小説の類いを機関誌『崩れる本棚』で売るなどし、また各々の個人誌なども売る、配るなどしてきたわけですが、ここで新味を加える為にエッセイ集的なものを作ってはどうかと考えていました。
 僕は既にある試みとして吉村萬壱・若松英輔が前に行っていた web エッセイ、「生きていく上でかけがえのないこと」他、二人が対になって行っていた連載エッセイのことが念頭にあり、ああいうことをウサギさんとやってみたいと思っていました。
 ウサギさんはゴールドハイだかコークハイだかを飲みながらさほど抵抗もなく「いいよ、やろう」と言い、 note 上でやることや、スケジュールのことなど摺り合わせを行い、今回のような形式に相成ったというわけです。
 毎週この note 上に交互にエッセイを書いていき、ある程度量が溜まったら小説と同じように本になっていくことと思います。
 僕の中では幾らか予定というかたくらみみたいなものはありますが、ウサギさんがどう出るかもわからないし、やっていくうちにグルーヴみたいなものも生まれてくるかと思いますので、よろしくお願いします。
 それと、姉妹企画(?)の、メルキド出版、松原礼二さんと週一で書いている「生存書簡」の方も、よろしくお願いします。じつは、こっちの企画がやや軌道に乗りはじめたというのも、ひとつにはありますが……

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 昔から自己紹介をするのは苦手だった。おそらく初めて自己紹介を強制された、小学校の転入の際の自己紹介からそうで、その時の嫌な感情を、良い年をした最近まで持ち続けている。その為に、今でも自分について特に説明が要らず気の知れた人としか話さないし、知らない人と会って話すという時にも都合良く自分のことを知っていてくれと思ったり、特段誰でもない人間として黙っていることが多く、自分でも子供みたいだなと思う。
 その初めての自己紹介の場か、内容的に初めてというのもありえないので何回目かのそういう場で、あろうことか、「他己紹介」というわけのわからないものをやらされた記憶もある。その後これ以外の文脈で「他己」なるグチャ混ぜの概念・用語を聞いたことがない。たしかにあの場の司会者、おそらく教師は、実際にあるかどうかもわからない「タコショウカイ」と、「タコ」と、謎の単語を発音していた。その語調の中にうっすらと、「私、気が利くでしょ、ただの自己紹介だとツマラナいから……」というニヤケた成分も入っていたように思う。
 自分が、そこで実際に「自己」でも「他者」でもない「他己」なるものを紹介したものだかどうか、ぜんぜん覚えがない。自己なんてものは、自分が自分なりに何でもいい何かをしているうちにおのずと滲んで来るものだという考えをいまだに持っているけれども、やっぱりそう言ってばかりいるのも赤の他人がどんどん増えてくるこの年の人間の言い分としては、ずいぶん都合の良い物言いのようにも思える。
 それで、二十歳以降は「読書好き」という便利な自己規定を得たので、職に就いてからはもっぱらそれしか言っていない。それで何を読んでいるの、と言われても「ベケットの『いざ最悪の方へ』を最近読んだところで……」云々といっても通じるはずもないから、それ以降はやはり黙っているので、こんな自己紹介ならしないのも同じである。あるいは単に本棚が本で埋まっているといった表面的な話をして、ひとしきり驚かれる。
 そういえば、あ金持ちばかりいる会社の飲み会で「最近、ウィスキーにハマり始めました」といったら大変なことになった。皆いかに高いウィスキーを所持しているかの自慢みたいのを始めだして、見ていられなかった。そいつらはウィスキーの話が終わったら次には高級時計の話でも始めるだろう。Apple Watch が偉大なのは、この高級時計自慢の連鎖を食い止めた所にあるという噂もある。そんな悪癖だという自覚があるなら、はじめからやめとけと思うが……。

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