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どうなる?2021年度介護報酬改定で変わる訪問看護【後編】

3年に1度の介護報酬改定が2021年4月に迫っています。国民の4人に1人が75歳以上になる2025年が近く中、介護報酬はどのように変わっていくのでしょうか。今回の改定によって訪問看護の現場にはどんな影響があるのでしょうか。
後編では、訪問看護ステーションに限らず介護サービス全体のルールを中心に解説します。

目次
① 退院日の訪問看護の加算が可能に
② 看護体制強化加算の「特別管理加算割合」を緩和へ
③ コロナの恩恵?オンライン会議の明文化
④ 面倒な印鑑ともおさらば!印鑑も最低限に
⑤ 訪問看護ステーションでも「感染対策委員会」設置へ

(①〜②は前編の記事になります)

▶︎【前編】はこちら 

③コロナの恩恵、オンライン会議の明文化

令和3年度の介護報酬改定は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けるものになりそうです。
今回の介護報酬改定では「会議や多職種連携におけるICTの活用」として、テレビ電話等を活用しての会議開催が認められるようになります。

従来の退院調整カンファレンスやサービス担当者会議は関係者が一堂に会するため、いわゆる密になりやすい状況です。
そのため、多人数で集まることでの感染リスクを避けるためにオンラインでの実施が明文化されるようです。
昨年からオンライン開催するケースが実際にみられており、既にオンラインで開催したことのある方もいるかもしれません。

オンライン会議では特に個人情報の扱いが気になるところではないでしょうか。厚生労働省からは以下の条件が出されています。

・利用者等が参加せず、医療・介護の関係者のみで実施するものについて、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」および「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を参考にして、テレビ電話等を活用しての実施を認める。

・利用者等が参加して実施するものについて、上記に加えて、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等を活用しての実施を認める。

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事業所での対応を統一するためにもガイドライン等は一度チェックしておくといいかもしれません。
直接会えないデメリットもありますが、移動時間を節約できるため参加しやすくなるメリットもあり、より密な連携に時間を割けるのではないでしょうか。


④面倒な印鑑ともおさらば!文書の効率化

昨年、河野太郎行政改革担当大臣が書類の押印について必要なもの以外は廃止を求める「脱はんこ」改革を進めたことが話題になりました。
訪問看護の現場でも、契約書や訪問看護計画書など印鑑は様々なシーンで登場します。

訪問看護や訪問介護なとの介護保険サービスが一斉に開始になると、利用者さんは各サービスごとの契約書にサインや押印が必要になります。
契約説明の終了時には、利用者さんがヘトヘトになってしまうという場に遭遇することも珍しくはないのでしょうか。
サービス提供側としても多くの書類を管理する手間がかかり、紙書類がかさばることも課題です。

印鑑

昨年12月に厚生労働省老健局から「押印を求める手続の見直し等のための 厚生労働省関係省令の一部を改正する省令」が出されました。14ページ目の別紙4に押印が必要な書類について言及されています。

中間取りまとめにおいて「令和元年度内目途の取組」とされた項目
(各指定権者における具体的な対応については、別添2を併せて参照)
1 押印及び原本証明の見直しによる簡素化
(1)法律に基づき、申請者が介護報酬等の支払いを受けることを認めるにあたり前提となる事項に関する申請について、押印を求める。具体的には、原則として以下の文書のみを対象とし、正本1部に限る。
指定(更新)申請書
誓約書(申請者が法に定める全ての欠格要件に該当しないことを誓約する文書)
介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
(2)付表や添付書類への押印は原則不要とする。
(3)押印した文書をPDF化し、電子メール等により送付することも可とする。

上記にある特定の書類以外の押印は不要となり、「重要事項説明書等における説明・同意について、必要のない場合は押印を削除することができ、また電磁的記録を原則認める」ことが今回の改定で明文化されます。
文書負担軽減や手続きの効率化を図ることで、介護現場の業務負担軽減の推進を狙っているようです。
押印の回数を省くことができるようになり、契約時の手間を減らすことができそうです。また、電磁的記録ではタブレットへのサインが認められるなど、ペーパーレスでの対応も実現できそうです。
詳細については「押印についてのQ&A」に記載があります。

具体的な範囲や記録の保存期間などについては適宜明文化されており、WAM NETの介護保険最新情報を適宜チェックしていくと良いかもしれません。

⑤訪問看護ステーションでも「感染対策委員会」設置へ

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、感染症対策の強化が介護サービス全体に求められています。
今回の改定にて、訪問系サービスでは感染症に対する「委員会の開催」「指針の整備」「研修の実施」「研修の実施」「訓練(シミュレーション)の実施」等の取り組みが義務付けられます。

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上記の取り組みはサービス全般に対して義務付けられますが、介護事業所には感染症対策のプロがいない場合がほとんどです。
訪問看護ステーションが連携して訪問介護事業所等に感染症対策を教えることで、地域全体で感染症対策に強くなる基盤を作ることができるようになるかもしれません。
「委員会の開催」も義務に入るため、3年間の経過措置期間が設けられますが、病院同様、今後は訪問看護ステーションでも感染対策委員会を発足させることになりそうです。

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また、感染症は1つの災害とも捉えられます。もしスタッフや利用者さんが感染してしまった時にも、安定的・継続的にサービスを提供できる体制が必要です。継続的なサービス提供する体制をとる、いわゆるBCP(Business Continuity Plan、継続事業計画)が訪問看護ステーションにも求められています。
そうした継続的なサービス提供のために、災害に対する「業務継続に向けた計画等の策定」、「研修の実施」、「訓練(シミュレーション) の実施」等も上記と同様に3年の経過措置期間を設けつつ介護サービス全体に義務付けられる予定です。
緊急時に他事業所との協力体制を築けるよう、合同での災害訓練など共に実践する方法を取り入れてもよいのかもしれません。

いかがでしたでしょうか。
令和3年度の介護報酬改定は、新型コロナウイルス感染症での「新しい生活様式」の影響も受けたものになりそうです。今回の改定が、よりスムーズかつ質を担保できる訪問看護の提供に繋がることを期待しています。

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