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【模型】中国からプラモを買う 〜ミニスケールいろいろ〜

中国製のプラモデルは当たり前だが中国で作っている。
また海外ブランドのキットであっても中国製のものは当たり前だが中国で作っている。
ならば中国から直接買ってみようじゃないかというのが今回のお話だ。

中国には淘宝網(タオバオ)といって独自のECサイトがあり、かなりのシェアを持っている。
私も中国時代にはよくお世話になったもので、選択の幅がものすごく広いことと市販価格よりもかなり割安なのがありがたかった。
特に模型の分野になってくると、中国ではまだまだ一般的なホビーではないため結構大きな都市でないと模型屋というものが存在せず、また店舗の中の品揃え次第では全然魅力的でなかったりするが、ネットでの販売だと話は別だ。
中国は間違いなく世界の工場だけのことはあって、世界中に供給している以上かなりの豊富なラインナップをそれぞれのメーカーが持っている。
ただし未だ未発達な模型市場ではあまり見かけることはないというだけで、こういうECサイトで検索機能やらソート機能を駆使して見ると、あるはあるは、日本市場ではちょっと売れないかもしれないなというような(つまり私が食いつきそうな)ものがゴロゴロしている。
どんなものが転がっているのか、ちょっと紹介してみたい。
なお紹介するものは私の好みに基づいて私の独断と偏見で行うので、中国のプラモデルはこんなのしかないのかと思わないようご留意されたい。

このキットはトランペッターでも割と古いキットで、中国時代に私も作ったことがあるが、離型剤の残留がすごくて塗料をよく弾き、クリアパーツの透明度も低いのでちょっと難物だったが、組み上がると独特のアントノフ2の特徴がよく表現された良いキットだった。
日本ではいくらか知らないがあっちでは35元、これも古いキットだからだろう。
なお販売している業者の名前が「静岡 Shizuoka Model」とは恐れ入った。

ブロンコモデル 1/350 鎮遠

言わずと知れた日清戦争の黄海海戦での清国側の旗艦。
このシリーズで同じ北洋艦隊の「致遠」を昔作ったことがあるが、ブロンコモデルらしい精密なディティールが印象的で、付属のエッチングパーツも素直に取り付いた。
艦船モデルのエッチングパーツが苦手な人がいたら、1/350スケールで割と単純な平面形をしているこの時代の船でやってみると良いのではないかと思う。

Dream-Model 1/700 中国海警056級巡視船

MengModelといえば最近日本でもだいぶ知名度が出てきて「メン・モデル」などと表記されなくなったモン・モデルだが、元々mengとは中国語の「梦」で、日本の漢字だと「夢」という字になる。
良いキットを作るメーカーとして日本でもだいぶ定着してきたモンモデルだが、漢字で表現する限り実に紛らわしいメーカーがあって、このキットは「梦模型」という会社が作っている。
なのでてっきりモンモデルだと思っていたらどうもロゴが違うので調べてみたら「Dream-Model」という別のメーカーだった。
なおモンモデル自体は瑞烨世纪(深圳)模型有限公司という名前だそうで、ややこしい。  
いずれにせよ多分このキットは日本国内では販売されていないのではなかろうかと思うが、ピットロードの海上保安庁の巡視船「はてるま」と並べて飾ると相性が良さそうだ。

トランペッター 1/24 紅旗CA770

これは国家主席なんかが天安門の前をパレードで通過する時に乗ってる専用のリムジンで、多分ソ連のジルかなんかがベースだと思うのだが、国産の「紅旗」という車両が長らくこの役を務めてきた。
このキットはカーモデル標準の1/24なので他の模型と並べて飾れるのがありがたいが、なんと今時モーターライズで、ちゃんとモーターもついている。
実はトランペッターでもかなり初期の製品で、模型は子供の組み立て式のおもちゃであった時代のものなのでディティールはかなり甘いのだけれども、それでも雰囲気は悪くない。
昔これを痛い車仕様で作ったことがあり、何せリムジンなだけにデカールを貼れる面積も広くてデザインの自由度が高かったのを思い出した。

そんな中で気になるメーカーがあって、今回いろいろと買ってみた次第。

今回購入したもののリスト

全てミニスケールなのだけれども、日本ではほとんど知られていないに違いない。
まずはVespid Modelsというメーカーだが、かなり実力のあるメーカーのようで、商品画像の作例写真を見る限りとても1/72のミニスケールには見えない。
初めてドラゴンのミニスケールを作った時のインパクトを思い出すが、今やミニスケールといっても精密なディティール表現は当たり前でエッチングパーツなどマルチマテリアルが日本以外ではスタンダードなのかもしれない。

Vespid Models 1/72 A-34 Mk.1B コメット巡航戦車

この戦車は香港の海防博物館で実車を見たことがあり、このキットでは駐香港英軍仕様のマーキングで組むこともできるのがうれしい。
この戦車は香港島東沿岸の鯉魚門要塞の麓に展示してあって、実際に見て触った戦車ということで特に思い入れが深い。

作例写真はかなり精密なもので、一昔前のミニスケールと比べると解像度がまるで違う。
というのもこのキットにはエッチングパーツが標準で付属していて、他真鍮製の砲身やレジンキャスト製の防楯もついている大変豪華な構成だ。
履帯は分割組み立て式、今時の1/72の戦車のフォーマットとも言えるだろう。

キット内容物の一覧

続いて、S-Modelというメーカーがあって、漢字では「六分儀」と表記されている。
このメーカーは私が中国にいた時にいくつか作ったことがあるのだけれども、まず売り方がユニークだった。

S-Model 1/72 Willys MB & M3A1 AT Gun

このメーカーのラインナップはそのほとんどが1/72のミニスケールなのだけれど2両入りで販売しているのがユニークだ。
値段も安価に抑えられている上に2個入りというわけで、お得感がとても高い。

とはいえ安物のキットでは決してなく、今どきの金型でモールドもシャープな上に適度なデフォルメが心地よく、そうかと思えばエッチングパーツも標準で付属しているので、作っていて実に小気味よい。
他にもこんなキットがある。

S-Model 1/72  九七式軽装甲車

日本軍の戦車まで出ているのか、と感心する人もいるかもしれないが、よく見ると鹵獲された中国軍仕様でのモデル化だ。
中国人にとっての建国神話の1940年代後半は日本軍から分捕った戦車やら飛行機やらで国民党の軍隊と戦っていたので、日本だと幕末あたりに相当するであろう中国の国共内戦のことを扱うのには日本製の兵器は実は欠かせないものなのだろう。
そのうちチハ車も2両入り70元くらいでリリースされないものだろうか。

キットの構成はこうなっている。
デカールは国民党と中共軍の2種類で、日本軍のものがないのが残念だ
履帯は転輪と一体のもので、これが実に塗りやすいので気に入っている。
うまく塗り分ければ分割組み立て式塗装と比べて大して変わらない雰囲気で、昔のベルト式とはまるで違う。

販売ページに載っていた作例
ミニスケールといえどもかなり精密なモールドで、なんだかスケール感が狂うな。

1/72の模型を作ったことがない人は購入しないでください!!!これは静態模型であって子供のおもちゃではありません。動きませんし作るためには接着剤やピンセットなどの工具が必要です。もし1両だけ欲しい人がいたら連絡ください。

これを販売している人はなかなか苦労していることだろうことを思わせる注意書きがある。
また起動輪の歯の上にゲートがあるので、まずよく部品を観察して切りすぎないようにせよという注意書きもあるが、中国国内ではまだまだプラモデル、特にスケールモデルに対する認識度が低いので、クレームで苦労している様子が伺える。
さらに、このキットは元々2両入りなのだけれども、この業者は親切にも1両単位で切り売りしてくれる。
デカールやエッチングパーツなんかどうするんだと思ったら、手作業で二つに切って処理するらしいので、文字通り切り売りだ。

説明書がどうなっているのか気になったので業者と直接やりとりをしてみた。
よくわからないところがあったらチャットで直接話ができるのもタオバオのいいところだ。

そんなわけで、中国から12個ものプラモを買った。
それらは2023年3月26日現在日本への航空便に乗る直前の段階で、来週にはうまくすれば届くのではないかと思って楽しみにしている。
無論個人的には日本のメーカーや模型業界に害をなすつもりなどないので、むしろあまりタオバオが多くの人に知られない方がいいなという矛盾した気持ちもあるのだけれど、タオバオでしか買えないものはタオバオで買わなければならない。
世界は広いもので、日本では知られていないものも中国には結構いろいろあるのであって、そういうものをのぞいて見ることはいい刺激になると思うのである。
これら一連のプラモが届いたら、改めて個別にレビューをやってみたいと企んでいる次第。

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