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【旅行】ヴェトナム紀行 2 昼寝の習慣

開高健によれば、ベトナムの昼寝の文化はまことにしっかりしたもので、ベトナム戦争の最中ですら、昼飯を食ったらみな寝てしまったのだそうだ。
こんなところで寝ていたら迫撃砲を撃ち込まれて一巻の終わりではないかと米軍の将校に聞くと、どうせ向こうも寝ているから俺らも寝るのだ、お前も寝たらどうだと言われて唖然としたというようなことを講演で語っていた。
で、3時過ぎくらいになると、アーよく寝たといっては自動小銃の安全装置を外してまた戦闘が始まるというので、世の中いっぺんどおりのイメージでは推し量れないものである。

さて、ベトナムの昼寝の習慣はフランス人がもたらしたものかどうか知らないが、とにかくよく寝る。
昼飯を食ったら眠くなるのか、街のあちこちで昼寝をしている人を見かける。
ハンモックはフランス人がもたらした文明の中でもかなりベトナム人に歓迎されたものだろう。
今でも木陰や電柱に吊っては寝ているし、ベトナム戦争時も負傷兵を運ぶ担架代わりに使ったというが、ということは負傷兵がいないときはベトコンもハンモックで昼寝をしていたことだ。
また、ベトナム人の特技であるとはっきりいえると思うのだが、オートバイのセンタースタンドを立てた状態で、オートバイの上で仰向けに寝転がって寝ている人が実に多い。
腰はシートの上のまま、上体は荷台の上の荷物の上、足はハンドルに乗っけたまま器用に寝ているのを見ると、昼寝文化の奥深さに実に感心させられる。

この状態で寝ていられるのだからたいしたものだ
横のおやじは、こいつよく寝るなあとか思っているのだろう
道端に適当にハンモックを吊って昼寝中
負傷兵をハンモックで運ぶヴェトコン

ところで昼寝の効用はなかなかのもので、午前中の疲れがきれいさっぱり取れてくれる。
我々も初日と2日目は昼に一旦宿に戻り、1時間半ほど昼寝をしてから午後の行動を展開していたが、これは実に良い。
歩き回った足の疲れも取れ、疲労回復には何よりだ。

では昼寝てばかりいる民族はあまり働かないのかというと、そうでもない。
なにせベトナムの朝は早い。
学校などは朝6時45分には授業が始まるというので、午前中の活動時間が相当長い。
残業をどの程度やるかはわからないが、勤勉なベトナム人は朝の早くに出勤し、まじめに仕事をこなして昼寝をし、5時には仕事を終えて帰ってくる。
今の日本(註:2014年当時)では想像もつかない就労条件だが、人間らしい生活とはこういうことではないかとも思うのである。

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