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アメリカでおばあちゃんズから聖書を教わることになるまで

アメリカでおばあちゃんから聖書を学ぶ人生、全く想像してなかった。しかもマンツーマンで。

挙句に途中から教えてくれるおばあちゃんが二人になった。教わるのは私一人なのに。これじゃツーマンツーマンだ。カタカナだとより意味がわからない。

二人ともキリスト教徒なのだけど、一人はアメリカ人でもう一人はユダヤ人。アメリカ人とユダヤ人から聖書を教わるというこの状況、もはや恐れ多い。


そのおばあちゃんたちとは、教会の一室で毎週開かれているCrossing Cultureという会で出会った。

その名の通り文化交流が目的の会で、教会のメンバーであるおばあちゃんたち五名によって運営されている。母とほぼ同世代の彼女たちをおばあちゃんと呼ぶのは気が引けるが、便宜上そうさせてもらおう。

参加者サイドは過半数が日本人の駐妻で、他にもアジア圏の女性たちがチラホラ、という感じ。

会のコンテンツはアメリカのカルチャーやイベントについての紹介がメイン。楽しい時間を過ごすことを第一としながらも、ちょっとした英語のクイズやレクチャーがあったりもする。楽しいしためになるしで二度美味しい。

私が好きなコンテンツは、運営メンバーJが担当するBible Study(聖書の勉強)だ。聖書は普通に読んでもその意図を理解するのが難しいので、時代背景などを踏まえてわかりやすく解説してくれる。Bible Studyは色んな教会で広く行われているものだ。

このJによるBible Studyが面白い。ある日は羊の生態の解説から始まった。羊は転んだら自力では立ち上がれない。攻撃する術もなく、襲われたら逃げるしかない。羊の群れは一匹がパニックになって走り出すと、残りも訳がわからないままついていってしまう、たとえその先にあるのが崖であっても。なんて愚かで愛しい生き物。聖書では、羊は私たち人間のことを表している。と話が展開する。面白いでしょ?

さらにキリスト教への興味が高まる出来事があった。
その日のテーマはイースター。磔刑で亡くなったキリストが復活したことを祝うお祭りで、キリスト教徒にとって最も大切な日だそうだ。なぜキリストは磔刑になり、どのように復活したのか。運営メンバーのSがそのストーリーをイラストを駆使しながら語り始める。

そしてキリストが磔刑になる局面に差し掛かったとき、彼女は声を詰まらせた。どうしたのかと見ると、目に涙を浮かべている。え、泣いてる…?今にもこぼれそうな涙が、ギリギリ表面張力で瞳に留まっていた。なんとか話し続けようとする彼女をフォローしようと別のメンバーDが話し始めたものの、彼女もまた目に涙を湛え、声を震わせた。

え、そんなに?そんなに辛いことなの?

キリストだよ?家族でも友人でもない。この世に実在したのかさえ怪しいのに。そんなことを言うのはナンセンスどころか意味もないけど。
宗教とほぼ無縁で育ってきた私にとっては歴史上の出来事の一つにすぎない「キリストの死」が、ここまで彼女たちの感情を揺さぶっていることに衝撃を受けた。

会ったことも、見たこともない人物がそこまでの存在になりえるんだ。その死を語るだけ涙が出るほどの。
キリスト教というものをもっと知りたい。歴史や知識としてだけではなく、今生きている人の物語を。

そんなときに、友達がJから個人的に聖書や英語を教わっていると聞いた。何それめっちゃくちゃ羨ましい!!だけどJに「私にもレッスンして!」というのも憚られた。仲が良い人にだけやっているのかもしれないし。

なんて考えている間に日々は過ぎ去り、5月にCrossing Cultureは一旦の終わりを迎えた。学校が夏休みの間はお休みで、9月からまた始まるのだ。

最後の会では運営メンバーへ感謝の気持ちとして参加者一同から花束とカードをプレゼントした。私もそれぞれにカードを書いた。

その翌日、Jから連絡が来た。
「素敵な手紙をありがとう。とても嬉しかった。早速集まりましょう。いつが暇か教えてね。」

え!?やったーーーーー!
実はJへのカードに、Bible Studyがとても興味深く、聖書についてもっと知れたら嬉しいと綴ったのだ。まさか連絡をもらえるとは。

この機を逃す手はない。私はすぐに空いている日を伝え、Jのお宅へお邪魔することになった。

こうして、Jと私のレッスンが始まった。
週に一度、おばあちゃんとマンツーマンで聖書を学ぶ日々の幕開けだ。

そしてある日、おばあちゃんが増えた。

いつも通りJの家の前に車を止めようとしたら、見知らぬ車が既に止まっている。そんなこと今までなかったので戸惑う。誰?え、今日から生徒が増えるとか?そうならやっぱり誰?

ドキドキしながら、インターホンを鳴らす。

すぐにドアが開いた。Jの顔が見える。そのすぐ隣に、Dが立っていた。
DもCrossing Cultureの運営メンバーで、イースターについて話す際に涙ぐんでいた内の一人だ。

だけどなんでDが?頭上にハテナを浮かべながらとりあえず二人とハグする。

「今日からDもこの会に参加してくれることになったの!」とJが言った。

まじ?生徒は増えないのに先生が増えた。こんなの聞いたことない。

まさかDが加わってくれるなんて、願ってもないことだった。
というのもDはユダヤ人ながらキリスト教へ改宗していて、その話をもっと聞きたいと思っていたのだ。
Crossing CultureでDが改宗を決めたことや家族の反応について話してくれた日、私は会の終わりにDへこう伝えたのだ。「大切な話をシェアしてくれてありがとう。自分は無知なので機会があったらもっと聞きたい」と。

もしかしたらそのことを覚えてくれていて、Jとのレッスンに加わってくれたのかもしれない。だとしたらすごく嬉しい。

こうして、私はアメリカ人とユダヤ人のおばあちゃんズから聖書を教わることになった。彼女は聖書について解説するだけでなく、その教えにまつわる自分の体験を話してくれる。そこが私の一番好きなところだ。
聖書についてもお互いについてもたくさん話すので、私達はこの会のことを親しみを込めて "Bible Talk" と呼んでいる。

キリスト教は私にとって、世界のどこかで誰かが信奉している何か、だった。ところが今はそれが友人の大切なものになり、自分自身にも学びや変化を与えてくれるものになった。
私はキリスト教徒ではないけれど、聖書からの学びは本当に面白い(Funnyではなく、Interestingの意味で)。

毎週一章ずつ読んでいるのでとてもゆーーーっくりなペースではあるのだけれど、これからももっと知っていきたいと思う。



Bible Talkからの学びはこのマガジンにまとめているので、良かったら読んでみてくださいまし。

noteにうまくまとめられない!話した方が早いわ!となった学びは、Podcastで話しています。聞いてもらえたら嬉しいです。


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