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念仏処方箋

ビックバン以前の時間を、考えてしまって。
脳で理解できない、天地が抜けた、あの空虚な感覚。
大人になった今では、幽霊よりも潜在的に怖い。

「水滴が、大海のすべてを知ることはできない」
念仏のように唱えてしまう。
もがき苦しんだ当時に獲得した、処方箋。

「水滴が、大海のすべてを知ることはできない」
念仏のように唱えてしまう。
きっと理解できるのは、水と大海に共通する性質だとか法則、抽象の程度。

「水滴が、大海のすべてを知ることはできない」
念仏のように唱えてしまう。
観念することも、また道であり、救いである。

「水滴が、大海のすべてを知ることはできない」
念仏のように唱えてしまう。
忘れても、生きている限り、また思い出す。

そのための、念仏処方箋。

見上げれば大空が。見下げれば大地が。 俯瞰の位置では、多くを見ることができる。