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中国 最高人民法院による訴訟前保全に関する意見(2024年3月1日施行)

最高人民法院は、3月12日付、2月7日に公布した「最高人民法院による訴訟前保全事件処理の規範化と強化に関する意見(最高人民法院关于规范和加强办理诉前保全案件工作的意见)」 [法(2024)42号]を3月1日付で施行したことを公示した。

本意見は、民事訴訟法第84条、第104条の規定に基づき講じることができる財産保全、証拠保全、行為保全(仮差止のこと)の手続きに関し、特許権など知的財産権の侵害でも積極的に活用できる保全措置の申立てに各地の裁判所が対応する際の司法解釈でもある。本意見は、以下の構成で全29条からなる。
1.一般規定
2.申立の受理
3.訴訟前保全申立の承認
4.提訴前保全措置の実施
5.関連連携メカニズムの改善
6.附則

注目するポイントとしては、
受理に関する第3条で「管轄権のある人民法院は、訴訟前保全の実施が不便であること、起訴登記立案者が訴訟保全を申立てできることなどを理由に受理を拒否してはならない。」の規定、財産保全対象の認定の第10条で個別に条件を挙げて「不動産、銀行口座、自動車、株式、債券など」具体的に上げていること、緊急と認定する情況の第12条、仮差止に関する第13条、保全措置の対象とならない物件の第15条である。

以下日本語仮訳
最高人民法院による訴訟前保全事件処理の規範化と強化に関する意見 [法(2024)42号]

各省、自治区、直轄市高級人民法院、解放軍軍事裁判所、新疆ウイグル自治区高級人民法院生産建設兵団分院、当院各単位:
公正と効率を深く実行し、当事者の合法的権益を保護し、執行源のガバナンスを促進するため、関連する法律と司法解釈の規定に基づき、訴訟前保全事件の処理を規範化と強化するため、本意見を制定する。

1.一般規定

第1条 訴訟前保全事件の処理を規範化、強化することは、一般大衆の多様な司法需要を満たし、民事事件の複雑な分流を推進し、公正で効率的な権威のある社会主義司法制度を構築するために必然な要求である。人民法院は、「もし私が訴えていたなら(如我在诉)」という意識を強化し、民事訴訟法に規定される訴訟前保全制度を正確に適用し、緊急事態において当事者の合法的権益を保護し、「執行難を確実に解決する(切实解决执行难)」業務に奉仕し、法に基づき勝訴当事者の速やかな権益実現を保障しなければならない。人民法院は、「前触れをつかみ、未病を治療する(抓前端、治未病)」という理念を強化し、訴訟前保全事件の処理において自発的に調停する先行調停の原則を貫徹し、訴訟前保全、登記立件、訴訟調整の連携などの業務に有機的連携を推進し、「保証付き調整促進(以保促调)」、「保証付き執行促進(以保促执)」を目指し、実質的な紛争解決能力を全面的に向上させ、事件の終結、政通人和を実現しなければならない。

第2条 本意見にいう「提訴前保全」には、人民法院が利害関係者の申立てに従い、「中華人民共和国民事訴訟法」第84条、第104条の規定に基づき、講じる財産保全、証拠保全、行為保全(訳注:仮差止)が含まれる。
 本意見にいう「申立人」は、「中華人民共和国民事訴訟法」第84条、第104に規定される「利害関係者」である。

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