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中国 改正特許法実施細則を適用する経過措置(2024年1月20日)

国家知識産権局(CNIPA)は、特許法実施細則に合わせて、局公告第559号で経過措置である「改正後の特許法及びその実施細則に係る審査業務処理弁法」を公示しており、その改正法適用の経過措置を理解するためにの解説です。

第1条は、特許法及びその実施細則の発効前後の関連審査業務処理の原則的規定を明確にしており、原則として過去に遡及しない、かつ本弁法のその他の条項は当該原則に対する特別規定を設けることを指摘している。

第2条は、代理強制対象の例外(訳注:出願人の直接手続き)を実施する場合に適用される規則を明確にしている。実施細則第18条は以下のいくつかの状況について代理強制の例外を規定している:
1.優先権主張した場合、最先の出願書類のコピーを提出
2.費用の納付
3.国務院特許行政部門が規定したその他の事務。実施細則の施行日より、    特許法第18条第1項の規定に従い特許代理機構に中国で特許出願とその他の特許事務を行う出願人或いは、特許権者は、実施細則第18条の規定に従い自ら関連業務を行うことができる。

第3条は、優先権の回復、増加、或いは訂正に関する適用規則を明確にしている。本条の規定に基づき、実施細則の施行日より、出願人は改正後の実施細則第36条の規定に基づき、優先権の回復を請求することができる。実施細則第37条の規定に従い、優先権主張の追加或いは訂正を請求することができる。 

第4条は、関連内容の援用追加に適用される規則を明確にしている。実施細則第45条は援用について規定しており、出願人の特許出願後の最初の提出日が実施細則の施行日以降である場合、出願人は実施細則第45条の規定に従い、先の出願書類を引用する方式で書類を提出することができる。

第5条は、分割出願による副本(コピー)の提出に適用される規則を明確にしている。実施細則第49条は、分割出願の提出時に原出願書類のコピーと優先権書類のコピーを提出する規定を廃止し、分割出願の提出日が実施細則の施行日以降である場合、出願人は関連コピーを提出する必要がない。

第6条は、PCTの国内段階移行手続きと優先権回復に関する内容の適用規則を明確にしている。実施細則第121条は中国国内段階移行手続きを行う際に適合しなければならない要件について規定しており、要約及び図面、出願人の変更証明資料の提出に関する要件を簡略化し、出願人は移行日が実施細則の施行日以降の発明、実用新案の国際出願について、同条の規定に基づき中国国国内段階移行関連手続きを行う。
 実施細則第128条は、発明、実用新案の国際出願の優先権回復に関する規定を新設しており、移行日より2か月の期限の満了日が実施細則の施行日以降である場合、出願人は同条の規定に従い優先権の回復を請求することができる。

第7条は、電子形式による文書送達日に適用される規則を明確にしている。実施細則第4条第7項は、国務院特許行政部門が電子形式で送達する各種文書が、当事者が承認した電子システムに入った(原文:進入)日を送達日とすると規定している。実施細則の施行日より、国務院特許行政部門が電子的に送達した各種文書の送達日には実施細則第4条第7項の規定を適用する。

第8条は、秘密保持審査期間に適用される規則を明確にしている。実施細則第9条は、国務院特許行政部門による秘密保持審査通知と秘密保持審査決定の期間を明確にしている。実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は実施細則第9条に規定される期日に基づき関連通知と決定を行う。

第9条は、信義誠実の原則が適用される規則を明確にしている。特許法第20条第1項は、特許出願について信義誠実の原則に従わなければならないと規定している。改正後の特許法の発効後、すなわち2021年6月1日より国務院特許行政部門は本条の規定に基づき、初歩的審査、実体審査、再審手続きにおいて特許出願を審査する。
 実施細則第11条は、特許出願は信義誠実の原則に従わなければならないと規定している。各種特許出願を提出する場合、真実の発明創造活動に基づいていなければならず、虚偽を弄してはならない。同時に、実施細則第50条と第59条は、それぞれ実施細則第11条を初歩的審査、実体審査での拒絶条項と規定し、第67条は、再審手続について規定し、第69条は、実施細則第11条を無効宣告請求の根拠と規定している。実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は、改正後の実施細則第50条、第59条、第67条、第69条の規定を適用し関連特許出願或いは特許権を審査する。

第10条は、部分意匠特許出願に適用される規則を明確にしている。510号公告によると、特許出願人は2021年6月1日より紙形式或いは電子形式で、特許法第2条第4項に基づき製品の保護を求める部分意匠特許出願を提出することができる。国務院特許行政部門は、実施細則の施行日より2021年6月1日以降の出願日の部分意匠特許出願について、改正後の実施細則第30条、第31条を適用し審査する。

第11条は、新規性喪失の例外の期限に関する状況に適用される規則を明確にしている。510号公告は、出願日が2021年6月1日以降の特許出願について、出願人に特許法第24条第1項に規定する情況があると判断される場合、紙形式或いは電子形式で請求を提出することができると規定している。実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は出願人が提出した関連請求について、改正後の実施細則第33条第4項を適用し審査する。

第12条は、意匠の国内優先権主張に適用される規則を明確にしている。510号公告は、出願日が2021年6月1日以降の意匠特許出願について、出願人は特許法第29条第2項に基づき意匠特許の国内優先権を請求する陳述書を提出することができると規定している。国務院特許行政部門は、実施細則の施行日より2021年6月1日以降の出願日の意匠特許出願について、改正後の実施細則第35条を適用し審査する。

第13条は、特許権期間補償に関する内容に適用される規則を明確にしている。510号公告は、2021年6月1日より公告登録された発明特許について、特許権者は特許法第42条第2項に基づき、特許権の登録公告日より3か月以内に紙形式で特許権期間補償請求を提出することができ、その後、国家知識産権局が発行した納付通知に基づき関連費用を納付することができると規定している。
 また、510号公告は、特許権者が2021年6月1日より、特許法第42条第3項に基づき、新薬上場許可請求の承認日より3か月以内に、紙形式で特許権期間補償請求を提出することができ、その後、国家知識産権局が発行した納付通知に基づき関連費用を納付することができると規定している。
実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は改正後の実施細則第77条から第84条を適用し関連請求を審査する。
 前記請求の関連特許権が実施細則の施行日までに期間満了しており、国務院特許行政部門は審査を経て補償条件に適合すると認めた場合、期間補償付与決定を出し、補償期間は当該特許権期間満了日より計算する。
 特許権者は請求を提出するとき、料金基準が発表されていないために関連費用を納付できない可能性がある。そのため、特許権者が料金基準の公示前に、特許法第42条第2項、第3項に基づき特許権期間補償請求を提出した場合、料金基準の公示後に、国務院特許行政部門が指定する期限に基づき本条でいう関連費用を納付することができる。

第14条は、開放許諾に適用される規則を明確にしている。510号公告によると、特許権者は特許法第50条第1項に基づき、紙形式或いは電子形式でその特許に対する開放許諾を自発的に陳述することができる。実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は特許権者が2021年6月1日よりその特許実施開放許諾について提出した陳述について、改正後の実施細則第85条から第88条を適用して審査する。

第15条は、特許登記簿と特許公報に適用される規則を明確にしている。実施細則第106条、107条の特許権期間補償、特許実施開放許諾などの事項の登録と公告を新たに追加し、実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は実施細則の前記条項の規定を適用し関連事項に登録と公告する。

第16条は、意匠国際出願に適用される規則を明確にしている。2022年5月5日より、出願人は、「工業品意匠の国際登録に関するハーグ協定」(1999年版)及び511号公告に基づき、工業品意匠国際登録出願を提出することができる。2023年1月11日より、国務院特許行政部門はすでに国際登録日を確定し、中国を指定した意匠国際登録出願(以下、意匠国際出願)の審査を開始した。実施細則の施行日より、国務院特許行政部門は関連する意匠国際出願について、改正後の実施細則第136条から第144条を適用し審査する。

第17条は、施行日と関連文書の廃止を明確にしている。本弁法は2024年1月20日より施行され、同時に510号公告、511号公告を廃止する。510号公告、511号公告の関連内容は改正後の実施細則、特許審査指南に規定されている。
 本条項の規定は、さらに、本弁法は特許法及びその実施細則と特許審査業務処理に関する条項の経過での適用にのみ関連することを明確にしている。
 

なお、国家知識産権局は、「特許権期間補償と特許開放許諾に関する行政再審事項に関する公告」(第560号)を公示し、以下の点を明確にしている。
1.特許権者、関連特許に侵害紛争が存在する、或いは、関連医薬品登録申請提出済みの利害関係者は、国家知識産権局の特許法第42条第2、3項に基づく特許権補償期間に関する決定に不服がある場合、行政再審を申立てることができる。
2.特許権者は、国家知的財産権局の特許法第51条第2項に基づく特許開放許諾の実施期間の年金の減額の是非の決定に不服がある場合、行政再審を申立てることができる。なお、特許開放許諾声明の公告決定は行政再審の対象に入らない。 

参照サイト: 仮訳  行政再審公示 

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