日蓮大聖人の言葉『重須殿女房御返事』おもんすどのにょうぼうごへんじ 21

月は山よりいでて山をてらす。わざわいは口より出でて身をやぶる。さいわいは心よりいでて我をかざる。今正月の始めに法華経をくやうしまいらせんとをぼしめす御心は、木より花のさき、池より蓮のつぼみ、雪山のせんだんのひらけ、月の始めて出づるなるべし。


弘安4年(1281)正月5日執筆
『昭和定本日蓮聖人遺文』1857頁



(訳)
月は山から出て、その山を照らします。悪しき言葉は口から出て、その身を破滅させます。善きおこないは心から出て、その人を幸せにします。今、正月の始めに法華経を御供養申し上げようとされる御心は、木には美しい花が咲き、池には蓮華がつぼみをつけ、雪山の栴檀が雪を割って育ち、月が始めて山から出るようであります。

(解説)
このお手紙は、駿河国富士郡重須(現在の静岡県富士宮市北山)に居住していた女性信者に宛てられました。その女性は、石河新兵衛入道の妻で、南条時光の姉または妹にあたります。
お手紙の内容は、十字(蒸し餅)と菓子の供養物に対する御礼を述べることからはじまり、冒頭に挙げた一節が記され、正月に法華経を供養することの功徳が説示されています。

(思うところ)
「月は山を照らす」「悪しき言葉は身を滅ぼす」「幸いは身を飾る」という三つのことを挙げ、原因と結果の関係性についてを示しています。
それをふまえ、正月の始めに法華経を供養する心についての喩えとして、「木に花が咲く」「池に蓮華が咲く」「雪(せつ)山(せん)の栴檀が雪を割って育つ」ことの三つを挙げ、正月に法華経を供養することで、あなた自身にも良き果報をもたらすであろうと指南をされているのです。譬喩をもって、お正月に法華経を供養することの功徳がたいへんに大きいことが説かれています。

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