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線路沿い

線路沿いというのは、うるさくて駅前なので家賃も高い。そんなデメリットばかりの土地は毎年荒れ放題だった。不動産屋が事故物件の次に困る土地だ。
「その物件、にします。」
ある日のことです。シングルマザーが子を連れて、不動産屋にやってきました。
「お子さんは、いいんですか?」
「大丈夫です、、!とにかく買って」
母親の圧力に負け、不動産屋で働いていた私は、契約を結びました。課長や、もっと上の方の方々には、長年売れていなかった物件を売ることが出来たと、私を褒めてくれました。が 、私はどうも気になっていました。
「そんなに気になるなら、今度訪問ということで、行ってみたらぁ?」
友達の好美と飲んだ時、私はそう言われました。好美も不動産屋の同僚ということで、訪問に向かうアポを取りました。相手も、どのお客さんにもやっている事なので、というとしぶしぶ了解してくれました。
当日です。好美は何年も使ってない、リクルートスーツをまとってやってきました。新人のふりをするとの事でした。しばらくして、生活感が出てきたのか、自転車があったり、雑草が生えていたり、スケボーが転がっていたり、そこでチャイムを押しました。やがてエプロンを巻いた可愛い女性が出てきました。
「手短にお願いします。」
「中を見させていただきたいのです。」
「家主が許可しなければ、入れませんよね?」
「えっと、、それは。」
好美も完敗という顔をしている。2人で諦めて帰る時に、見覚えのある男の子がいました。
「ねぇねぇ、あの子さっきの奥さんの息子さんよ。」
「え?、、何見てるの?どこ?」
「ほら、線路沿いのフェンスにもたれて座っているじゃない。」
「そこ、、花束が置いてあるわ、、なにか見えるの?ここで、電車にひかれた男の子がいるって聞いたことがあるよ?、、」
「う、、でも見えてしまう、、」
その日は、お互い疲れて居たので、真っ直ぐ家に帰りました。お互いがさっきのことを無かったことにしよう。と必死でした。
それでも、私はベッドに入って寝る直前、スマホで、事故について調べてしまったのです。
よしみの言う通り、あそこに男の子の遺体が投げ出されたと書いてありました。男の子の名前は飯島、しかもあの奥さんと同じ苗字なのでした。
なかなか寝付けず、夜にコンビニに向かいました。アルコールの入った炭酸を二缶ほど買って、コンビニの前で飲んでいるとあることに気づいてしまい、思わず缶を落としそうになりました。あの奥さんが、あの土地の購入理由として、
「小さい頃息子は、電車に惹かれて、それから私もずっと興味があるんです。」
それがもし、
「小さい頃息子は、電車に轢かれて、それから私もずっと興味があるんです。」
だったら。

身の毛もよだつ、真夏の話です。

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