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「私が書いた理由」共同通信・47リポーターズ

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共同通信が配信している深掘り記事「47リポーターズ」について、執筆記者が取材の経緯や記事に込めた思いを語ります。
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記事一覧

【密着】知られざる本音に迫る!刑務官の新人研修

こんにちは。高松支局の広川隆秀です。 僕は2023年9月中旬から11月の約2カ月半、香川県の矯正研修支所で行われた新人刑務官の「初等科研修」に密着取材する機会を得ました。 全国各地の刑務所や拘置所で働く刑務官。 あまり身近な存在ではなく、近寄りがたいといったイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。 このnoteでは「刑務官ってどんな人?」、「新人研修って何をするの?」といった疑問に答えるべく、全ての刑務官が経験する新人研修を紹介したいと思います。 ◆刑務官の登竜門「

ワシントン特派員リポート~「息ができない」自由の国アメリカから今、伝えなければならないと思っていること

はじめまして、ワシントン支局の金友です。 私がアメリカに赴任したのは2020年5月のことでした。新型コロナウイルス感染症が世界中に広がった後で直行便がなく、スーツケースを抱えて降り立ったニューヨークの空港は人影もまばら。まるでホラー映画のようでした。 その頃にアメリカで何が起きたか、皆さんは覚えておられるでしょうか。 息もできない現状“I can’t breathe.” (息ができない) 20年5月、アメリカ中西部のミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性のジョージ・フロイ

福島原発事故を伝え続ける

はじめまして。大阪社会部の西村曜といいます。 普段、大阪市役所の担当をしているのですが、継続的に東京電力福島第1原発事故で生活が大きく変わってしまった福島の人々についても原稿を書いています。 日々の担当業務とは別に、自分の追いかけたい分野の取材を続ける記者というのはままおりまして、わたしもそんな一人です。 先日、冒頭のようなことを先輩に言われて、今回のnoteを書くことになりました。日本中に原発事故を取材する、もっともっと優秀な先輩記者たちがいるので偉そうなことは言えな

戦争を経験した101歳が記者に教えてくれた言葉。そして、偶然の連続が導いた奇跡とは…

「人生は宝物を作る過程です」 これは、戦争を生き抜き、地域の歴史を本に記し続ける101歳の男性からいただいた言葉です。 私の胸に深く残り、思い出すたびにやさしい気持ちになれます。 今回のnoteでは、記者が偶然の連続で101歳の小野寺宏さんと出会い、さらなる奇跡のような偶然で、約900年の時を経て、平安武士の兄弟の末裔が巡り合うことになった物語をご紹介します。 ■ 陸軍士官学校56期生との出会いこんにちは。大阪社会部の中川玲奈です。 私は大学時代、日本史を専攻してい

ふとしたきっかけで踊り子に…県外出身の私たちが心奪われるまで

■「にわか連」に心奪われはじめまして。「踊る阿呆」の伊藤美優です。昨年4月から共同通信社徳島支局で記者をしています。皆には「デイジー」と呼ばれますが、なぜかは分かりません。 私が初めて阿波おどりを見たのは、昨年の春でした。入社式で初任地が徳島と伝えられ「阿波おどりと渦潮…?ワカメ?」くらいの知識しか持ち合わせていなかった私は、ひとまず引っ越してから1週間後にあった「春の阿波おどり」というイベントに行ってみました。 「わ~これが阿波おどりか~楽しいな~♪ヤットサー♪」 「

コロナ感染者立ち寄りで店名公表された老舗「王王軒」のラーメン食べてみました!『“今更”記事にした理由』番外編

こんにちは。高松支局の牧野直翔です。 先日、徳島支局の米津柊哉記者とともに、47リポーターズで記事を書きました。コロナ禍の中で徳島県のラーメン店「王王軒」が、感染者が立ち寄ったとして県に店名を公表され、風評被害に遭った出来事を取材したものです。 こちらの大阪支社note上でも、米津記者が取材の経緯や背景を振り返った記事を執筆しました。 突然ですが、私は大のラーメン好き。讃岐うどんを差し置いて横浜家系の総本山である「吉村家」の全国でも5店しかない直系店舗「高松家」だったり

なぜ“今更”この問題を記事にしたのか。『感染者が立ち寄った店』知事のひと言で客は消えた…老舗ラーメン店主の絶望 を取材した記者が答えます

1月に共同通信が公開した記事「『感染者が立ち寄った店』知事のひと言で客は消えた…老舗ラーメン店主の絶望 行政のコロナ対応は本当に妥当だった? 今考えたい感染症対策」に、SNSで寄せられたコメントです。 たしかに、この記事で取り上げたのは、コロナ禍初期の2020年に当時の県知事が感染者の立ち寄った店名を公表した出来事です。なぜ、今この記事を出そうと思ったのか-。 ■ ラーメン店の敗訴こんにちは。徳島支局の米津です。高松支局の牧野記者とともにこの記事を担当しました。 新型コ

羽田航空機衝突事故の「その後」を追って

年明けから衝撃的なニュースが相次いだ2024年。 今回は、1月2日に起きた羽田空港滑走路で起きた日本航空(JAL)と海保機の衝突事故に遭遇した、乗客の「その後」を追った記事の裏側をお伝えします。 ■ 「まずは現場に」こんにちは。社会部の助川尭史です。私は昨年5月に大阪社会部から東京本社の社会部の配属になり、普段は国税庁の担当記者として、主に経済事件や税に関するトピックスを扱っています。 ただ、ひとたび大きな事件や災害が起これば担当に限らず、多くの記者で取材に当たるのが東西

「普通の年になりますように」豪雨被害を受けた秋田の農家の願い、原点とつながり続ける記者の活動

こんにちは、青森支局の赤羽柚美です。私は昨年7月の秋田県での豪雨被害で知り合いの農家を取材し、以下の記事を書きました。 ただ、この記事では、私が農家の佐々木義実さんを豪雨被害の前から知っていたことには触れず、佐々木さんが米作りにかける情熱を伝えきることができなかったのではないかという思いが残りました。 なぜ佐々木さんが山あいの田んぼを続けてきたのか。 どうして青森の記者である私が佐々木さんを取り上げたのか。 今回は、記事を書いた理由をストレートに伝える大阪支社noteと

そもそも万博って何?歴史をひもといて見えてきた「意義」とは

2025年大阪・関西万博の「迷走」ぶりを分析し、歴史的意義を考えた「大阪万博、500日前にこの状態で本当に開催できるのか?」。後編の担当は大阪社会部の伊藤怜奈です。 記事はこちら 【前編】 【後編】 この記事の前編を振り返った、同時公開のnote前編はこちらから。 「万博って何なん?」 取材のきっかけは素朴な疑問でした。「万博」「万博」と何度も記事に書いたけれど、私自身、万博について何も知らなかったんです。東京で生まれ育ったZ世代。もちろん過去の万博は行ったことがな

「迷走」する2025年大阪万博、何でこんなことに?

2025年4月、大阪に国際的なビッグイベント「万博」がやってきます。12月に入り、大阪の街は公式キャラクター「ミャクミャク」のポスターや、前売り券購入を呼びかけるお笑い芸人のCMであふれるようになりました。 とはいえ、歓迎ムード一色かと言うとちょっと怪しい。その理由は、万博の準備が「迷走」しているからです。開催費用の多くを占める公金が膨らみ続ける一方で、花形の海外パビリオンは準備が遅れ、展示の目玉はいまだに何なのか、よく分かりません。大阪社会部で行政取材を担当している私たち

国を動かしたのは「報道の影響力」? 受刑者のマイナンバーカード、法務省が取得支援に転じるまで

こんにちは。高松支局の広川隆秀です。 2023年10月末、法務省が受刑者のマイナンバーカード申請・取得に関し、「便宜を図る必要はない」としていた方針を改め、必要な支援を認める通知を全国の刑務所に出しました。 受刑者とマイナンバーカード。 このテーマ、僕の個人的な興味から長らく取材してきたものでした。 そのため、今回の方針転換は受刑者が社会復帰する際の一助につながるのではないかと期待しています。 「なぜ法務省は方針を一転させたのか?」 「どうしてこの時期だったのか?」

「教育理念は残したい」来春廃止の少年院で教官に聞きました-松山学園座談会【後編】

非行少年の中には、過去の経験から大人に対する不信感を強く持つ人も多くいます。一番身近な存在であるはずの親や家族から虐待を受けた人、学校でのイジメを経験した人、信頼していた大人から裏切られた人。 非行の背景をつぶさにみていくと、一人一人に汲むべき事情があるのも事実です。 そのような少年らにとって、少年院の教官が初めて自分を受け入れてくれた大人だったというケースも少なくありません。 法務教官はどのような思いで施設に入ってきた少年と接しているのでしょうか。教官になった経緯から、

「暗くて怖い?」密着して見えてきた少年院の温かさ-松山学園座談会(前編)

少年の更生を目的として全国に設置されている少年院は、近年廃止が相次いでいます。法務省によると、2017年末時点で52あった施設は毎年減り、2023年度は44。主な背景に人口に占める少年の比率が下がり、少年事件も減少している状況があります。 共同通信が47リポーターズで取り上げた松山学園も廃止が決まった少年院の1つ。11月9日には閉庁式も開かれました。普段なかなか入ることのできない少年院を取材し、記者は何を思ったのでしょうか。 また、松山学園は設置から今年で70年。多くの少