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『仕事にしばられない生き方』ヤマザキマリ

14歳でヨーロッパ一人旅に放り込まれ、17歳でイタリア留学、その後美男だがお金を稼げない詩人の子供を身ごもり、未婚の母として帰国。その後別のイタリア男性と再婚し、シリアやアメリカで暮らしたりしているヤマザキマリさん。そして『テルマエ・ロマエ』の作者。

エッセイ漫画で、彼女の半生や日本とイタリアの家族のエピソードを読んでいたけれど、これは本なのでもっと細かいことが書いてあった。お金がいつもなくて芸術家仲間と助け合いながら貧乏飯を食べていた、というようなことは知っていたが、イタリア詩人が借金を作り大変なことになっていた、とか。お嬢様育ちの母との暮らしやイタリアをはじめとした世界各地での暮らし、そして興行収入58億円の映画のヒット(彼女は原作者として100万円もらうのみ)を通じて、否が応でも向き合わなかければならなかった彼女のお金と仕事の話。

経験した人の話は説得力あるなあ・・・ということに尽きる。お金と仕事について、経済学者や社会学者が書いていたらこんなにバラエティに富まないし、説得力もない。彼女と比べるのはおこがましいが、私も留学しリーマンショック時に帰国したら仕事にあぶれて、留学前の年収をかなり下回った。英語が使えるようになったのに、色々な背景がある外国の人とコミュニケーションを積んできたのに、そして努力しまくったのに、なんでこんな結果なの?と腐りながらお金と仕事についてこの10年弱考えた。努力が自分の期待していた形で叶うわけではないし、能力と賃金は別に比例しているわけではない、そして人には向き不向きがある、ということを知った。

彼女の場合、もっと極端だし、最悪食っていければいい、という心構えなので腹が座っている。一見よさそうな『テルマエ・ロマエ』のヒットも、描きたいものが描けるようになったので働きすぎで家庭を壊しそうになったり、お金が入ってくるんでしょう?と思われて人間関係がぎくしゃくしそうになったりもする。この人はこの先どんなことがあっても、これまでの経験を駆使して乗り越えてしまうだろう。タイトル通り仕事になんてしばられないで世界のどこでも生きていくだろう。

終わりのほうにヤマザキマリさんととり・みきさん合作の『プリニウス』の話があった。自分とは遠い属性のローマ人だけれど、彼女たちのフィルターを通してなら仲良くなれるかもしれない。読みたいな~

90 仕事にしばられない生き方


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