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『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン

タイトルがなんだかなあ。狙っているんだろうけれど、いけ好かない。その表現はジェンダー論的にどうなのか、と思って手を伸ばさずにいたのだけれど、中身は面白そうで、結局読んだ。原題『The Kitchen Counter Cooking School』。うん、このタイトルでは読もうと思わなかったとも思う。

フランスの名門料理学校ル・コルドン・ブルーを37歳で卒業したアメリカ人が、この本の筆者であるキャスリーンだ。ある日、キャスリーンは巨大スーパーで冷凍食品ばかりをカートに詰めた女性を見つけ、ついつい後をつけ、話しかける。「料理の仕方がわからないから」と話す女性をキャスリーンは精肉売り場に連れていき、キャスリーンの著書にたくさんのメモを書いて会ったばかりの女性に渡した。彼女はこのことが心に残って、友人と「料理の仕方がわからない女性」への料理教室を開く。他の料理教室と違うのは、キャスリーンが事前に参加者の家を訪れ、キッチンで「いつものごはん」を調理するのを見ながらヒアリングをしていること。そこで彼女は参加者たちの人柄、家庭環境、育ち、コンプレックスを知っていく。

料理教室に集まったのは「マクドナルドがママの味」という若い女の子や、幼い子がいるけれど料理がわからずカレールーで作るカレーばかり作っている日系アメリカ人、不況で貧しくなった準弁護士、精神科医としてキャリアを重ねているけれど台所では自信がない61才女性など。

彼女たちに包丁の持ち方や、食材の食べ比べ、簡単な料理、冷蔵庫の残りもの活用方法を毎週レクチャーしていく。これはキャスリーンと旦那さんのエピソードだが、ホットケーキを焼くのに必要な材料は小麦粉、卵、牛乳といったシンプルなものだが、ホットケーキミックスの材料を見るとそれ以外によくわからないものがたくさん入っていることを旦那さんは知る。参加者たちも、インスタントの食事がインスタントに作れるようにするためにどれだけの物質が使われているかを箱に書かれた原材料欄から把握する。自分で料理をすればお金もかからず、不思議な物質を体内に入れることなく、おいしいものが食べられることを次第に体験から知っていく。そして、「自分でも料理が作れる」という体験を経て少しずつ変わっていく。

参加者たちをタイトルで使われている「ダメ女」とは私は呼びたくない。そしてこれが男性だったらどうだろう?私も自分で出汁をとって味噌汁を作れないし、副菜を基本的に作らないから(食事はどんぶりだけ、パスタ一皿のみ、みたいな)料理に自信がなく「イイ女」という自信がない。料理は愛情表現とつながっているし、どうしても良妻賢母「ママの味、おふくろの味」的なイメージがあるからだとは思うけれど、料理ができないからってダメ女の烙印を自分で押したり、人から押されるなんて悲しい。本の本筋は別のところにあるけれど、私はそこにひっかかってしまった。

「女性だから料理はできるべきだ」という出発点でなくて、「料理ができると豊かな人生を歩める。それは誰でもできるよ」ということが本のメッセージだと思う。どうしても私は日本語のタイトルにひっかかってしまう。私以外の人、そして今育っている子供たちが変なジェンダー観にとらわれることなく、この本の真のメッセージだけを受け取って活用できるといい。

175.『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

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