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『奇想の系譜展』東京都美術館

「やっと会えたね」と涙ぐんでから、このセリフは某作家が女優に言った言葉だと気づいてちょっと恥ずかしくなった。有給をとって平日に行った『奇想の系譜展』の始まりが伊藤若冲で、説明書きを読み終えて顔を上げたその先に「象と鯨図屏風」が広がっていた。「芸術新潮」の感想で書いたように、私は奇想の系譜、伊藤若冲が好きで15年くらい前に彼の墓参りに行っている。


いや、もうどうかしている。象と鯨、海と陸の王者を白と黒の対比にして屏風にするなんて。鶏の躍動感をあれだけ絵にするなんて。(鶏の頭を正面とか、真上から描けるのもすごい)、鳳凰の羽の異様なまでの描き込み。溜息が出ちゃう。この人は鶏を観察しまくったので、鶏の絵がめちゃくちゃうまい。会場には当時日本には(確か)いなかった虎の絵も展示されていて、これはやっぱり観察が極まってなくて猫みたいになっている。これはこれでかわいい。また、最近見つかったという30代で描いた鶏はちょっと遠慮がち。年を重ねるごとに彼の世界がすっきりと、奥深くへと展開していく。

次のセクションは曾我蕭白。ドバァンとしていて気持ちがよい。この『奇想の系譜展』のメインビジュアルにも出てくる童子と鬼の絵は35歳で描いたそう。若冲が迷いながら鶏を描いていた年代に彼は彼なのである。この童子、私には完全に調子に乗っているように見えるんだけど、圧倒的なのでガンガン行け、と思う。獅子の、天井まで届くでっかい絵もいい。この人はかっこいいなあ。

そして今回、奇想の系譜展に加えられた白隠。この人は画家というより宗教家(お坊さん)として絵を描いた人で、体を壊すほど修行をした。やりすぎたためだろう、その後力がぬけている。軽い仙人みたいになったんじゃないかなあ。彼の達磨図の最後とされる絵は下書きもそのままに、勢いと力強さがあって、好き。若冲もそうだけど、年をとって余計なものをそぎ落とし、大胆になっていくってなんてかっこいいんだろう。そういうババァになっていこう。

この展示の中で、私が好きなのは若冲、蕭白、白隠の3人。どうかしている人が好きなのだ。いやー素敵。かっこいい。本や雑誌で見ているけれど実物はいい。なんでか。大きいから。襖絵も屏風絵もタブレットやモニターには入りきらないし、筆に乗った気配はモニターには映らないから。

展8 奇想の系譜展

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