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心の松葉杖 水野氏

あれは私が小学校六年の時の話。

その日は卒業式で、だんだん暖かくなってきて、
それにつられて私の気持ちも桜のつぼみのように優しく膨らんでいた。
卒業式は泣くのかな?なんて思っていたけど、意外と気持ちは淡白で、
なんだかガラス越しに卒業する自分を眺めていたように感じていた。
だからなのかな、卒業式の記憶ってほとんど残ってない。

ただ、卒業式の記憶が残っていないからこそ、
小学六年の卒業式は私の心に強く刻まれている。

それは、卒業式日私の足の甲の骨にはひびが入っていたから。
理由なんて思い出せない。
ただ、卒業式当日、卒業証書を受け取る為壇上に向かう私は、
感動も期待もなくて、ただ、足が痛いと思いながら無理して歩いていた。
そんなおぼろげな記憶だけが残っている。

2週間後に行った病院で「これ、足の甲にひびはいってるね」だって。
ほんと、ぼーっとしてたんだよね、昔から。
松葉杖ついて卒業式に出ていたら、もう少し記憶に残ってたのかな。

あれからだいぶ時間がたったけど、私は未だに松葉杖を使っていない。
だって、松葉杖なしで歩いていく強さを手に入れたから。

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