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京都大学学術出版会 月間ニュース No.1 (2023年10月)


いつもご愛読ありがとうございます。
今月より、新刊やイベント情報をまとめて月に1度お届けして参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

・概要


この間の新刊は3冊、近刊2冊、受賞5作、動画は4本更新しました。

・新刊案内


『評伝・西山夘三』

せまく密集した日本の住宅を分析し,「食寝分離論」で生活の風景を一変させた建築家・西山夘三。戦後復興,高度成長──発展の夢に酔いしれた時代のなか,その波に翻弄されながらも,建築の巨人が生涯をかけて考えつづけたグランドデザインと生活のリアル。彼が探し続けた「すまい」とは,そして,「街」は,今になにを残したか? 街を描くよろこびと,その苦悩を詰め込んだ大著。

書籍紹介文 編集者より

『流砂環境再生・ダムと環境の科学IV』

流域の問題には、多すぎる水(洪水)、少なすぎる水(渇水)もあれば、多すぎる土砂(災害)、少なすぎる土砂(河床低下、海岸侵食、河川環境劣化)もある。本書は、ダムによる流水の貯留とトレードオフの関係にある士砂の連続性遮断の問題を、流砂系の総合土砂管理の枠組みとして改めて考えるとともに、その一番の鍵を、「ダムの土砂管理=河川の流砂環境の再生」と定義し、これを進めるための科学的考察と実践の最前線の分析に取り組んだ。

「おわりに」より抜粋

『ダムと環境の科学』シリーズ既刊リスト

  1. ダム下流生態系

  2. ダム湖生態系と流域環境保全

  3. エコトーンと環境創出

『ペレグリノスの最期』

キリスト教から離反した犬儒派の哲学者が衆人環視のもと、同派の模範たるヘラクレスに倣い、死を軽侮すべきことを示し神々に列すべく、焼身自殺を企てた次第を伝える表題作や、過去の作品で批判した生活と自身の現状との言行不一致への糾弾を想定した『弁明』ほか、『歴史はいかに書くべきか』など14篇を収録。本邦初完訳。[全8冊]

全集(ルキアノス)の既刊情報及び刊行予定はこちらへ

・近刊予告

『新・方法序説』

何を共通の方法とし共通のデータとするのか。例えば人とサルでは同様に見える行動を同様に観察/記述できない。対象と方法を共有する「辞書」はどうすれば作れるのか?学際研究を真に有機的に組織する方法論作りのために。

『商民運動の研究 1924-1930』

1920年代、中国・国民革命運動期。「北伐」の嵐が吹き荒れるなか民衆運動も高ぶりを見せた。だが、歴史研究において等閑に付されてきた運動がある。「商民運動」。国民党も共産党も注意を向けなかったという誤解が研究を阻んできた商民運動は、他に比するほどに時代に影響を与えた。その運動発動から終息までつぶさに論じる画期的成果。

・2023年9~10月受賞速報

◉ 日本倫理学会 令和5年度和辻賞
  髙木裕貴著『カントの道徳的人間学:性格と社交の倫理学』 

◉ ICAS書籍賞2023日本語部門
  下條尚志著『国家の「余白」:メコンデルタ 生き残りの社会史』 

◉ 第18回樫山純三賞
  金悠進著『ポピュラー音楽と現代政治:インドネシア 自立と依存の文化実践』 

◉ 第9回日本南アジア学会賞
  中村友香著『病いの会話:ネパールで糖尿病を共に生きる』 

◉ 日本認知科学会第11回野島久雄賞
  北雄介著『街歩きと都市の様相:空間体験の全体性を読み解く

・今月の一冊


国家の「余白」

 本書はこれまでも,アジアの社会経済史,開発研究などの分野の4つの大きな賞を受賞されましたが,今度はなんと国際賞! 国家に捕捉されない人びとの歴史といえば,ジェームズ・スコットの「ゾミア」が世界的に有名ですが,まさに「ソミア」論に並ぶ,あるいはそれをも越える,世界的な業績と言うことが出来るでしょう。

 20世紀の動乱の重要な舞台となったメコンデルタ。ベトナムを巡る,フランス植民地主義,そして冷戦下のアメリカの戦略の失敗は,様々に分析されてきました。しかしこれまでの研究はいずれも,人びとの日常実践には目を向けない,いわばマクロな社会科学的分析に終始し,結局のところ,歴史の真の原動力は明らかに出来ませんでした。それに対して本書は,メコンデルタに生きる人々の生き残りをかけた実践――仏教寺院や闇市,闇の交易・越境ルートという植民地主義や国家の支配の手が届かない空間,すなわち,国家の「余白」を作り出していたこと――が,その要因であったことを,鮮やかに描き出します。

 この「余白」は,一見,国家に捕捉されない農民の存在を明らかにした,スコットの「ゾミア」と同じもののように見えますが,「ゾミア」が大陸の奥深い山塊の中に現れたのとは違って,メコンデルタの「国家の余白」は,都市のごく近傍,大農業生産地の中に現れたのです。つまり,これからも国家の「余白」は現れ続け,それが歴史を揺るがす原動力になり得る。本書は,新自由主義と「グローバリゼーション」が,世界を「精神のモノカルチャー」化してきた現代を乗り越える,次の時代の歴史を開く,という予感も与えてくれます。いまや世界的なおおきな歴史理論に発展した本書の研究,ぜひ,学問領域を越えて,多くの方々に読んでいただきたいと思います。

・SNS/イベント情報


◉YouTube動画更新
 下記、それぞれのリンクよりご視聴ください。

[地]第3回①『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)

[地]第3回②『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)

[地]第3回③『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)

[地]第3回④『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)

◉Instagram、始めました!
最新出版情報をインスタでチェックできます!フォローをお待ちしております⇨@kyotoup_book

◉書店フェア 開催中
大学出版部協会創立60周年フェアを各地で開催中です。詳細な開催情報はこちら

◉出展予定
日本動物行動学会第42回大会
2023年11月3日(金)〜11月5日(日) 於 京都大学理学部6号館


最後までお読みいただきましてありがとうございます。
ご紹介しました書籍は、小会webサイトのほか、全国の書店・大学生協・ネット書店を通じておもとめいただけます。

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※同一内容を毎月メールでもお届けいたします。受信をご希望の方は、sales@kyoto-up.or.jpまでご連絡ください。


京都大学学術出版会 月間ニュース No.1
2023年10月18日 配信
(毎月 第3水曜日 配信予定)
発行:一般社団法人京都大学学術出版会
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