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宝、KBLを卒業します。この3年間のこと。

Kyoto Beer Labのブリュワー 宝が、2021年5月末をもって、新天地に旅立つことになりました。

手探りの創設期、先も見えない中で、ビールづくりで支えてくれたのはもちろんのこと、宝の優しく礼儀正しく、いつでも前向きであきらめない人柄にも、メンバー全員がたくさんの良い影響をもらってきました。

もともと宝には「ブリュワーとしてレベルアップするために、いろいろなビールづくりを学びたい」という目標があり、今回3周年の節目を機に、彼はさらに学びを深めるため、新たなブリュワリーへ移籍する決意をしました。

宝の旅立ちは、僕らにとって淋しくもあり、でも、同じビールづくりを志す仲間として誇らしい気持ちでもあります! 

そんな宝が、これまでの3年間のことをブログに書きました。宝ファンのみなさま、そしてKBLファン・クラフトビールファンのみなさま、一緒に彼の門出を祝福いただけますと幸いです!

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1年目:バースタッフとして

オープン直後の2018年4月から、バースタッフとして勤務を開始しました。
前職の関係で、3月のプレオープンに間に合わなかった出遅れ感はあったものの、5人(村岸、トム、ひろき、シモ、えいこ)とは、不思議とすぐに打ち解けることができました。これまでKBLに携わった方々は他にもたくさんいらっしゃいますが、運営は僕を含めたこの6人のメンバーを中心に今日まで行ってきました。

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ただのビール党からクラフトビール好きになるのに、そう時間はかかりませんでした。ヘッドブリュワーのトムがつくる多彩なビールの虜になり、次第に自分でもつくってみたいと思うようになったのです。

初めはオンラインショップで購入したビールキットでの自家醸造からスタートし、麦芽とホップをレシピ通りに用意してつくるようになりました。そのうちの一つをトムに飲んでもらったところ気に入ってもらえ、KBLでつくろうという話になりました。

そして産まれたのが「黒宝 Obsidian」というオートミールスタウトです。
醸造家としてのきっかけをつくってくれた、僕にとって宝物のようなビールです。

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2年目:バースタッフ兼アシスタントブリュワーとして

比較的ゆったりとしていた1年目に比べ、2年目は僕らの予測を遥かに超える集客で、ビールが飛ぶように売れました。お客さんの6〜7割は外国人観光客。8タップある中で、同じ種類のビール(しかも20L樽)を1日に2回も交換するなんてことが日常的にありました。

そんなバースタッフとして忙しい日々のなか、アシスタントとして醸造に携わる機会をもらっていました。少しでもチームの助けになるために必死でしたが、自分で監修したレシピも1つ、つくらせてもらいました。それが「暴走ライダー Red Light Runner」というアンバーエールです。

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3年目:メインブリュワーとして

2020年3月、KBL2周年イベントを成功させた後、オーストラリアの家族のもとへ帰国したトムが、コロナの影響で8月になるまで帰って来れなくなるとは誰も予想していませんでした。

当初は1ヶ月のつもりでブリュワリーを任せられた僕にとって、ヘッドブリュワー不在の期間は挫折と成長、そしてブリュワーとして生きていく覚悟を決める機会となりました。

トムが無事に帰国できた後も、彼は僕をメインブリュワーとして扱ってくれ、この期間に8種類のレシピを監修しました。初めは新しいレシピで200Lのビールをつくる自信がなく、20Lのテストバッチをつくることもありました。レシピ作成〜醸造〜品質管理のサイクルをいろんなビールで重ねることで、レシピ設計時のイメージと醸造結果のズレが少しずつ小さくなっていくのを実感しました。今後、より大きな設備でビールづくりに携わる前に、小規模ゆえに数多くの仕込み回数を経験できたことは、KBLでブリュワーを任せてもらえて最も良かったことの一つです。

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最後に:ビールレシピの話

これまで自分が監修したレシピとビールの中に、完全に自分のオリジナルというものはありません。参考にしたレシピ、文献などの情報、先輩ブリュワーさんたちのエッセンスがあるだけでなく、自由度の高いレシピ設計をやらせてくれる経営陣やヘッドブリュワーのアドバイス、お客様に説明しサービングしてくれるスタッフとの共同作品です。

それらを全て理解した上で、

“宝のビール”

というふうに言ってくれるチームの皆を思うと、涙が出るほど良い思いをさせてもらったなぁと思います。

スタッフや常連のお客様が“宝のビール”と呼んでくれるものは、すべてKBLのビールです。そのうちの1つでもつくり続けてもらえれば、これ以上の喜びはありません。

どこかまた、クラフトビールのあるところでお会いしましょう!


文/宝

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