見出し画像

「アートを通して人々がネットワークされる可能性」|KYOTOGRAPHIEインターンがインタビューしてみた!

 みなさんこんにちは!

 第2回の投稿はKG+プログラムディレクターの中澤さんへのインタビューです。
 展示に対する熱意や魅力だけでなく、私たちを取り巻く社会への向き合い方やこれからの新しい可能性についても語ってくださいました。
  KYOTOGRAPHIEに足を運ぶ一助になるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください!


ご挨拶

小島:はじめまして。本日インタビューをさせていただくコミュ部の小島と申します。よろしくお願いします。まず、はじめにお名前と担当を教えてください。

中澤:KG+プログラムディレクターの中澤有基です。よろしくお願いします。

KG+プログラムディレクター中澤有基氏

ネットワークされるKG+


小島:
では、今回の展示についての見どころなどはありますか?


中澤:KG+はKYOTOGRAPHIEみたいに一つの大きな展覧会という感じではなく、個々の作家や企画者が主催として展示をしたり、さまざまな発表やイベントをしたりと、個々が主体となって活躍できる場を作っているということがポイントなんです。 作家が主催するだけでなく、お店の方やメーカーの方、企業が主催者となってKG+の展覧会を企画していたりします。

 そして、それらがそれぞれのKG+を展開する。120以上の展覧会やイベントが、ネットワークされる。そして個々の点と点が繋がって広がっていき、イベントに訪れる人たちもそれぞれのいろいろなKG+を体験することになります。それらの印象はそれぞれで全然違うものになるかもしれません、偶然に出会ったり、出会わなかったり、さまざまな誤配に思いもよらない可能性が隠れていたりします。


小島:今年も多くの写真家が参加されるKG+ですが、全体としてどのような印象の展示になりそうですか?
 

中澤:全体の作品展の印象ですよね?それは、ポジティブじゃなくてもいいんですか?(笑)
 

小島:もちろん!思ったことを率直にお願いします。

中澤:わかりました。今年は新しい会場が多く、今まで知らなかった作家もたくさんいて、新しい展示をいろいろ見ることができるという点は楽しみです。一方、応募資料を見ていた時に【良く言えばバラエティーがある、悪く言えばバラバラである】という印象も持ちました。

 今は誰でも写真が撮れる時代になったことが影響していると思います。スマホの普及も含めてカメラも安くなり、プリンターの質も向上して、誰でもきれいな印刷を作ることができる。プロジェクションやモニターでも作品を展示できる今、多様性の裏にかくれた【指針なき写真業界】になっているとも思えるんです。

 批判的に捉えるならば、指針がないということで、それぞれが思ったことを自由にやっている状態。これは悪く言えばバラバラ、良く言えば多様性という捉え方もできる。それは社会状況にも重なっているように思えます。例えばSNSでみんな独り言を言い、発言者の責任の所在もわからないまま、すぐに思ったことを発言し、炎上してしまったり人を傷つけてしまったりしますよね。

 だから、見方によってはバラバラに見える可能性がある。 しかし、そういった多様さが集まり点と点がつながっていった時、ネットワークが生まれ、熱が生まれ、ムーブメントとなり盛り上がっていく。そんなイメージです。それらをリードするプラットフォームとして、KG+は大きな可能性を秘めていると考えています。
 

小島:確かに今は昔のように大きな物語やみんなが信じるリアリティみたいなものがなくなりつつあり、個人化の方に向かっている社会だと思うんです。そのような中で、今回のKG+の傾向のように、悪い意味ではバラバラ、いい意味では多様性がある作品たちがつながり、一つのネットワークを形成するっていうことができれば、この社会に対する一つの可能性みたいなものになるのかなと、今のお話を聞いていて思いました。
 

中澤:そう、まさにその通りだと思います。そのバラバラさは、ひっくり返すと別の可能性に繋がるポテンシャルを秘めていると思っています。

 例えば写真業界だけで見た時に、メーカーが主催していたコンペティションがどんどん終了してしまったり、写真雑誌が廃刊してしまったり、スマホなどの台頭によりカメラの販売が落ちてしまったり、もちろん業績を伸ばしているところはありますが、業界全体の数字を見ると2010年台の中盤からは業界が衰退傾向にありました。

 もちろんそれは、震災やコロナなどの時代背景なども大きな要因だったと思います。そんな今【若手が目指す物語】みたいなものがなくなってしまったようにも感じます。その時にKG+とか、KYOTOGRAPHIEというフェスティバルが新しい可能性として浮かび上がってくる。一年に一回だけやってる写真のお祭りに私の作品を展示しようと、若手の作家が思うというシチュエーションはすごく考えられる。
 
 大きな物語を失ってしまった今、フェスティバルというモデルが、新しい写真のプラットフォームになれるんじゃないかという可能性をすごく感じています。具体的な状況が2~3年前くらいから、顕著に出てきています。

 例えば、地域の人たちが参加するような動きがでてきました。2023年でいうと、寺町商店街の中吊りでKG+の作家の作品を展示させていただきました。 それは、商店街の方から私たちの商店街でも作品を展示したいと相談を受け、KG+の作家の作品展示を実現しました。商店街の方が、KG+に、お祭りに参加した。言ってしまえば商店街の方々が【KG+になった】という感覚です。

 他にも街のお店さんが参加いただいたり、飲食店でも写真展を開催していたりします。その要因を考えてみた時に、祭りというフォーマットが大きいと思います。祭りは日本の文化に根付いていて【あらゆる単位で参加できるフォーマット】であり、それは何千年も続いている文化です。 そのような下地があるからこそ、写真の文化とか現在の社会情勢みたいなのが重なってKG+とかKYOTOGRAPHIEは、新しい写真の可能性として12年にわたり躍進を続けていると考えています。
 

小島:すごい深い話をありがとうございます。私も勉強になりました。


 中澤:編集できないぐらい難しいこと言ってやろうかと思ってね。


小島:頑張って編集します(笑) 

偶然からうまれるストーリー


小島:では、今回100以上の展覧会を統括運営しているということを伺い、とても大変な仕事だと思ったのですが、KG+ならではのやりがいや喜びがあれば教えてください。
 

中澤:KG+をやっていて面白いなと思うのは、さまざまな場所でさまざまな物語が生まれることです。KG+は個人が主催している小さな展覧会がたくさんあります。しかし、それらの中にもそれぞれにストーリーがあり、それが見え隠れするのが面白い。
 
 例えば、ある会場で展示をした時に、そこの人はすごく協力的で、普段ならそのスペースは22時か23時になれば全て閉館してしまうのですが、展示のインストール時に作家が「終わりません!!」とか言って。スタッフの方が「時間通りやってくださいって言ったじゃないですか!」とか言いながらも、2時3時まで付き合ってくれたりするんですよ。設営も全然終わってなくてスタッフの方も絶望的な顔をしながら、アイスクリームとか食べ出して「もうなんなんだろう、この空気」みたいな感じ。そういう普段ではありえない状況は特別感があり、面白いですね。
 
 展示がなんとか完成して、絶望していたスタッフの方も含め「みんなで作り上げて大変だったけど、なんか良かったね」という結束感というか、なんとも言えない一体感が生まれる。このような小さなストーリーが、ほとんどの展覧会にあって、無数の物語が生まれているんじゃないかな。そのような瞬間ににたくさん触れられるのは魅力かなと思います。
 

小島:では最後の質問です。KG+の鑑賞者側としての楽しみ方を教えてください。


中澤:【偶然の出会い】を楽しんでもらえたらと思います。たくさん展覧会を開催しているので「あれ、こんなところでもやってるの」とか「こんな作家がいたのか」みたいな出会いがたくさんある。会期もバラバラなので、いつどこでどんな展示に出会えるかわからない。でも、そういう偶然性は現実世界だからこその楽しい部分だと思います。
 
  ネット社会だと、ビッグデータで自分の傾向に合ったものだけが自動的にリコメンドされるけれど、そこには偶然の出会いは生まれない。そういうのを現実ならではの【誤配】を、偶然の出会いを楽しむのがオススメなんです。「じゃあ今日天気いいから展示見に行ってみよう」「どの展覧会が今やっているんだろう」とか、「近くに何かあるかな」という感覚で出会ってもらえるといいかと思います。
 

小島:なるほど、ありがとうございます。確かにインターネットであなたへのおすすめとか出されると、私たちも選ぶ範囲がいつも同じ傾向にかたよりどんどん狭くなっていったりしますし、地図アプリのルート以外は見ないみたいな生活に寄ってしまいますもんね。
 

中澤:あえて道に迷ってみるとかおもしろいんじゃないかな。道に迷ってみると何かに出会うかもっていう。
 

小島:いいですね。あえて携帯の地図アプリとか見ずに。


中澤:知らないバスに乗っちゃうとか。 乗って行って「近くで何かやってるかな」って見て気まぐれに降りてみるとか面白いかも。普段行かないところにあえて行ってみるっていうのはどうかな。


小島:それ、いいですね。やってみます!ではこの辺でインタビューを終わらせていただきます。ありがとうございました。
 

中澤:ありがとうございました。

おわりに


 KYOTOGRAPHIEは作家、運営、鑑賞者のさまざまな物語が折り重なって深みを増していきます。
 今日もどこかで紡がれているであろう物語に思いを馳せながら、第2回の投稿とさせていただきます。次回もお楽しみに!!


★KG+の展示にぜひお越しを!詳細→https://kgplus.kyotographie.jp/
★KYOTOGRAPHIEの展示詳細→KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?