わたしとそっと011

Sotto9周年企画「わたしとそっと」 第3回~毎日新聞記者・玉木達也さん~(後編)

 今回は「わたしとそっと」第3回の後編です。
前編をまだお読みででない場合は、まずは前編からお読みください。↓
Sotto9周年企画「わたしとそっと」 第3回~毎日新聞記者・玉木達也さん~(前編)

▲玉木達也さん。毎日新聞大阪本社にて

京都という土地がSottoらしさを作る?

ーSottoとも長い付き合いで、元々自殺のことに関心を持っておられた玉木さんから見て、Sottoとの関わりの中で、ここが面白いポイントだと感じるところはどういったところでしょうか

京都という土地柄によるものなのか、それは分かりませんけど、Sottoって新しいものを作っているイメージがありますね。
物事を継続することはものすごく大事ですが、Sottoは同じことを繰り返すのではなく、若い力を使って新しいことをやろうとしている。それは単に年齢的なことだけではなく。
Sottoは単純な前年の踏襲を良しとしないところがある。

行政だと、ある年とある年のサービスの内容や質が違っていたら困るから、毎年同じことをやっていますよね。悪く言っているのではなく、それが行政の役割であり、良いところです。

しかし、同じことの繰り返しばかりでは、自殺問題や命の問題にはうまく対応していくことが難しいのも事実です。
その点Sottoは新しいことをやっていこう、という姿勢を持って、いつも何か変化させようとしている。

誰が発案されたのか分かりませんけど、今回のバースデードネーションも面白いと思いますよ。

ー土地柄からSottoのことを考えたことがなかったので、新鮮な視点に感じます。
その他に、Sottoの新しいことをする土壌には何があるんでしょう。これをSottoの人間が外部の玉木さんに訊くのはちょっと違う気がしますけれど(笑)。

あくまで個人的な意見ですが、それは仏教人の組織のあり方によるものがあるのかもしれないと思います。
竹本さんもそうだけど、Sottoは宗派はバラバラだし活動に宗教性はないけどお坊さんが何人も参加している。
そして京都のお坊さん達って、伝統仏教の世界の人たちですよね。

例えば、一般的には40代というと本来権限をすごく持つ人達ですが、伝統仏教の世界では、一人前と見なされるのはもう少し後です。
立場的に、自分の中にあるものをしっかりと外に出せるようになるのが遅いんです。
そういう組織の人たちだからこそ、自分たちが若いうちにできることをやりたいという気持ちがあるんだと思います。

これが本来の組織で自分のやりたいことをやれていたら、こんなにマグマが溜まらないと思います。
伝統仏教の世界で様々な事情を抱えていて、だからこそ、そこを離れた場所ではやりたいようにやりたいという、反動のバネがあるような気がしますね。

ーそうなると、それはSottoならでは部分かもしれません。

あとはやっぱり学生さんが多いからということもあると思います。
京都には、古い町並みだけど新しいエネルギーが入ってくるという環境があって、古いものと新しいものが融合を起こすという特徴があります。

それが京都ならではの人の出会いを作って、Sottoはそれをうまく吸収していると思います。
京都だから、お金の事も大切だけど自分たちの哲学を譲れない、ということをやれているのかもしれません。
これが他の大都市だと埋没したり、もう少しコスト意識が入ってきてしまったりする。

情報が溢れる世界で、人と人が一緒にいる意味

ー玉木さんのこれまでの記者の経験やSottoとの個人的な関わりを通して、今の日本社会の中でSottoの存在はどういう意味があると感じていますか?

本当に人にとって居場所というものは大切だと思います。
世の中や人との繋がりが切れた状態が人にとって一番不幸だし、ものすごく心理的ストレスが高まり、死が身近になってしまうんだと思います。

どんどんIT社会化が進んでいて、情報がいっぱい流れている世界で、実際に体温を感じながらそばに人が居てくれるということは、すごく贅沢で、そういう場がある人とない人とで大きな差があると思います。
家族と一緒に暮らしているんだけど、実は孤独だということもあります。

Sottoのような、そっと寄り添うような場所がもっと全国にあって、哲学を共有していて、一緒にご飯だけでも食べたり、映画を一緒に観たりする、そういう場が数ヶ月に一回でもあるだけで、それを楽しみに生きられる人がいると思います。
それはとても意味があることです。

Sotto(そっと)という団体名にその姿勢が表れていると思いますね。

ーある意味、Sottoはその名前において自己完結しているのかもしれません。大事なことはそこに込められているという。
最後に、Sottoを取材する過程やプライベートな付き合いの中で見た、Sottoのメンバーの面白かったエピソードなどありますか?最後にこれ訊くかという感じですけど(笑)。

前に取材させてもらった小坂さんと話していた時に聞いた、居場所づくりをしているスタッフの人たちのケアの話が面白いと思いました。
小坂さんは委員長としてスタッフをまとめる立場ですよね。それで以前飲み会を開催したとき、北野をどり*を観に行ったと。これが効くんだろうなと思います。

昭和的だしアナログ感はありますけど、結局腹を割って話をするということが人と人の間の潤滑油になるんですよね。
その時に北野をどりを選択するところが粋で面白いですね、僕的には(笑)。なるほどと思いました。

* 北野をどり・・・1952年から始まった、芸妓さんと舞妓さんが出演する舞台。伝統の歌と踊り、劇を一度に楽しめる。毎年3月25日から4月7日にかけて京都市の上七軒歌舞会にて上演される。京都に息づく伝統文化の世界を垣間見れる機会としておすすめ。春に京都にお越しの際はぜひ行ってみてください。

ー実は、先日連れて行ってもらいました(笑)。自分ではちょっと行きにくい、少し敷居が高いイメージがある場所だったので、特別感があって新鮮でした。

行っていたんですね(笑)。
そういうことができるということが、まさにSottoの多様性を表していますね。
防衛大出身の竹本さんもそうだけど、普通は作れないような人脈を持っていて、それを気分転換にパっと使える小坂さんもすごい。北野をどり、チョイスとして絶妙ですよ。

いつも飲みニケーションが有効とは思いませんけど、多少の年齢差があろうと同じ高さの目線で気分転換することは大切で、そうい場をうまく作れる人がいるのがすごいです。

また、これは僕のイメージですが、Sottoには意見を言いやすい空気があるのではないかと思います。トップダウンで物事を決めたり、誰か一人が話し続けるということはないんじゃないかな。

ーそうですね。少なくとも若いから意見を言いづらいということはないと思います。自分の考えを出しやすくて、出し過ぎてしまうくらいかもしれないです(笑)。
想定していた時間より大分長くなってしまいました。今日はありがとうございました。知らない話をたくさん聞けて、すごく面白かったです。

こちらこそ。大阪まで来てもらってお疲れ様でした。それでは。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 いかがだったでしょうか。楽しんで読んでいただけたならば幸いです
第3回は前後編に分けてお届けしました。
次回は5月頭に更新予定です。お楽しみに!
フォローの方もよろしくお願いします!

現在(4/7~5/7)、Sottoの9歳の誕生日を祝し、バースデードネーションを開催しています。
500円から気軽に寄付していただけますので、もしよろしければ寄付という形でお祝いしてくださると嬉しいです!
↓キャンペーンページはコチラ
NPO法人京都自死・自殺相談センターの9周年を祝ってください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?