対話 8

最近、誠実ではないってことをよく他人に言われるんだけどさぁ。それについてぺよぺよ考えてる。誠実さってなんだろ?って。私は自分を不誠実だと思ったことはないけど、不誠実に見えるんだろうな、ということは少しだけわかる。

「まぁ、清廉潔白かと聞かれれば絶対に違うんだろうけど。恋人は複数作るし他の人とサシ飲みもセックスもする。安易に人を好きになることも多い。そこだけ見ればそれはそれは軽薄な人間に見えるでしょうよ。男ならヤリチンだ」

…残念ながらついてないので、ヤリチンではないよ。まぁだからってヤリマンでもビッチでもないんだけど。自分の欲望に忠実なだけで、別にそこに誠意のあるなしは気にしてないんだよ。気にしてない……うん。恋人がいる状態で他人と寝ないことが誠実さなのか?という疑念が大変ある。お互いが嫌な事をしないでおこう、という約束事を守ることが誠実?さっぱりわからない。誰かを好きになったからって他の人のことも好きになるかもしれない、それは最初の人にとっての不誠実なのだろうか。

「んま、そうね。君にとっては欲望を満たしているだけの話だし。好奇心でもある。そこに当事者以外への忖度は全く発生しないだろうし」

なにもいらない。
なにもあげない。
何かを失う気も失わせる気も、ない。

『身体と時間のはじっこを差し出して心はなんにも揺らがないセックス、大変貴重だな、と。しみじみ』

最近投げたこのことについて、思案をしている。エモとエロを混同する人間の多さを知っているからこそこれができる人、大変貴重だし尊い性質の持ち主だなぁ…としみじみしてしまう。ホテルを出たら、しっかりと他人であるべきだし、もう2人の世界ではない事を分からねばならない。ピロートークが好きなのではない、ピロートークごっこが愉快だ。単なる言葉遊びをする、上っ面だけのべたべたな会話。

お互いに違う個体だという事を理解した上での遊びは、とても楽しいし物足りないこともままある。その物足りなさは楽しさを埋めるためには仕方なくて、楽しさを長持ちさせるための防腐剤みたいなもの。

「ふーん。まぁそれはとても健全な不健全だね。だけど、成立した時の偉さは割と途方も無い。いつ終わるかわからない怖さは、じっとりと付き纏うんだろうけど」

ははは。そんなの他人との縁全てに言えることだから別に今更、ねぇ?関係が明日終わるかもしれないし10年続くかもしれない。あらゆる可能性を考えているからこそ、私は私として生きていけてる。さようならへの不安と諦念で欲望に忠実になるのは、本当に不誠実かしら。

「よく彼氏に言われてんじゃん。『それは価値観の違いだから』みたいなやつ。あれねぇ、分かるんだけど、それだと議論にならない。お互いの優位性を戦わせて折衷案を見つけなければ、我慢するか別れるかの二択になってしまうから。といっても、君は本当に折れないからなかなか厄介だよね」

折れ方なんか忘れたし、折れた私を愛してもらえるかの自信もないから仕方ない。

誠実の反対はなんなんだろ。
不誠実は絶対値的に誠実になると思う。
必ずあなたに帰るから、遊べるのよ。
その余裕がなければ、自分の端っこなんてとてもじゃ無いけど差し出したりできないよね。

じゃあさ、
あなたって、誰なんだろうねぇ。

#対話 #エッセイ

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