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「君たちはどう生きるか」ネタバレ感想

皆さんこんにちは。2023年7月14日、宮崎駿監督の10年ぶりの新作映画、「君たちはどう生きるか」が公開されました。今作はアオサギが描かれている一枚のキービジュアルポスター以外は、ほぼストーリーは疎か、スタッフ、出演者、PVと、普通なら当たり前に出されている情報が開示されることなく公開当日まで伏せられています。16日の今朝私も見てきましたが、そのような状況なのでよっぽど自分で調べることもなければネタバレを踏むこともなく鑑賞することができました。映画を「体験」するって感じですね。ライブ会場に行くみたいでした。流石に1週間2週間経てば公式に情報公開していくと思いますので、興味ある方はぜひまっさらな気持ちで浴びるように駿監督の映画を体験してきてほしいです。
一部で通称「生きるかマン」とされているアオサギくんを、自分の頭で考えてるイメージと映画で活躍する彼(彼女かもしれない)とのギャップに驚く人は多いはずです。自分もそうでした。そういう意味では文字通り「詐欺」の名を持つ鳥として活躍するわけですがw

それでは、これ以降はネタバレを含んだ感想になります。重ねて書きますが今気になってるって人は情報シャットダウンして映画館向かったほうが良いです。ネタバレ読んで面白さがどうこうなる訳ではないですが、浴びるように体験できるのは今しかないと思います。映画館へレッツゴー!です。








ではここからネタバレあり感想を。しかし、冒頭述べたように公式の情報がほぼシャットダウンしてるので、こう感想書くときの引用に頼ることができないのはちょっと厄介。とはいえネットやSNSで探せば有志が情報感想上げてくれてるのでそこから確認できるのはとてもありがたい。でも見すぎると自分の感想が知らずに塗られて行きそうなので程々にしておく。Note書いたらもっといろんな感想読み漁ろう。公開早々の文になるので時系列が前後してたり、トンチキなこと書いてても許してね。

まず、当たり前ではあるんだけど作画がすごい。ストーリーは抽象的でもあるのでそこは賛否分かれそうではあるけど、少なくとも作画は鈴木Pがシンエヴァの宣伝・公開規模の拡大を約束するかわりに?スタジオカラーからジブリに引っこ抜かれた本田雄作画監督(エヴァ旧劇・千年女優)を筆頭に、米林宏昌監督(アリエッティ・アーニー)や高坂希太郎監督(アンダルシアの夏・若女将は小学生)に安藤雅司監督(もののけ姫・パプリカ・鹿の王)らといったそうそうたるメンバーが集ってる。特に安藤監督に至っては一度宮崎駿監督と方向性の違いからジブリを退社しているので、このタイミングで駿作品にまた参加してくれたのは感慨深いところがあります。旧ジブリスタッフが揃って同窓会みたいな趣がありますね。あと後述するけど、今敏監督作品に参加している人も多いです。

勿論監督が直接自分で描いてる部分もあると思うので(P曰く、今作は監督はほとんど絵コンテに集中したみたいですが)、そういう意味でも宮崎監督自身と今まで紡いできた育ててきた人材達の集大成になってるのかなと思いました。鈴木Pが今回は監督に本当に自由にさせた(制御できなかった?w)と言ってましたが、その自由にさせた結果の一つだと思います。
過去のジブリ作品からのオマージュ的な演出、作画も多いのでそういう部分を探すのも楽しい作品だと思います。
個人的には、大波の中を進む小舟の描写が一番好きでした。切った張ったではない地味な部分かもしれませんが、自然と戦う人間の強さを書いているようでとても印象に残りましたね。

少年と女性が乗る船という部分ではコナンのセルフオマージュなのかな

ストーリーは、途中母さんと夏子さんを探しに行った先がここは地獄だと言われ、そして登っていく白いふわふわは、上=主人公・眞人たちの世界(現世)に行くと新しい命になると言っていたので魂の比喩のことだと思い、生と死、輪廻転生などの話をしているのかと思いました。
ただ大叔父がでてきて、積み上げた私の世界がもうすぐ崩れる、私も老いた、この世界を眞人に引き継いで新しい世界を、穏やかな世界を作っていってほしいと頼んできたから、この大叔父が今の宮崎駿監督の心境を写してるのかなとも思いました。そして眞人も、綺麗なだけの世界は嫌だ、僕も悪いことをしている(自傷したりタバコを盗んだり)し他の人も悪いことを持っている(父と夏子さんの関係、くすねたタバコを取引に使う等)。それが自然の姿なんだ。それは時に破滅を生むかもしれない(撃墜されたペリカンの最期の懺悔やオウム王が逆上して勝手に石を積んで倒す)けど、それでもその世界で生きていくんだって意思表示をしました。
大叔父は倒れ、死後の世界=妄想の世界=大叔父の作った一つの世界は壊れる、駿監督もついに後継者を残せずいずれ自分の死とともにジブリという世界(会社)が壊れる事を感じているけど、現世に帰ってきた眞人=ジブリ作品を見た視聴者のポケットにはあの世界の人形や石(意思)が残っている。大叔父の世界へ眞人を誘い込んだサギ男は「どうせみんな忘れちまうんだ」「忘れた方がいいんだ」と毒づくけど、最後の別れに「じゃあな、友達」と言って去ります。人ぐらいの大きさはあるけど、決して人ではない鳥類であるアオサギとも最後は友だちになれるという希望を残してくれます。自分とは似て非なる人でも、困難を共に乗り越えれば分かり合う事ができるかもしれないよという監督のメッセージを感じました。
外でサギ男が知性を持ってるのはサギという種が全て嘘つき=虚を纏っているから現世でも虚、妄想の世界のままで活動できると自分は考えました。


車で田んぼ通る時に気ままに田んぼを歩いてる彼らに羨ましさを感じるときがあります

宮崎駿監督の作品で死後(冥府?)、虚と現世を行き来する話とすれば千と千尋が思い浮かびますが、今作はより生々しい感情でキャラクター達がうごいています。そして虚と現世を行き来する作品を作るアニメ監督といえば僕は今敏監督を思い浮かびます。今監督のキャラクター達も、精神、肉体共にエゴや性愛が動機になっているのが多いですね。今回の原画スタッフに今監督作品に関わった人達が多いのは、宮崎監督の招集か鈴木Pの手腕かわかりませんが、そういう虚と真(眞)を描けるスタッフが必要だったからだと思います。宮崎監督からの今監督という若い才能への手向け……は考え過ぎだと思いますが駿監督もどこかで今監督作品からインスピレーションを受けていたのかもしれません。


君たちはどう生きるかの作監・本田雄氏は今敏監督作品・千年女優の作監も務めています

声優の話だと、眞人役は山時聡真くんという方らしい。誰だろうと調べてみるとZIPで昔謎の朝ドラしてた時に出てた子だった。話は正直面白くなかったけど見てたのを思い出す。そうか、あのときの少年がジブリの主役に……としみじみする。あとみんな言ってるけど眞人の父役がキムタクだった。見てる人もうまくてエンドロール見てびっくりしたという声が多い。自分も正直途中まで気づかなかったのだけど、途中妙にシャア・アズナブルみたいな声色で喋るので「あれ?声当ててるの池田秀一?でもそれにしては声若すぎるぞ」と思った刹那、「木村拓哉はシャアの役受け継いでほしいと思った」というツイートを先日見たのを思い出す。ああ、あれはこれの事を言っていたのかと思わず頷いてしまった。ハウルのときはすごくキムタクだったのに、今作は声優として仕上げてきたなあと感心しました。その役としての声の演技ができるように成長したのだなあと。まあ本人役とはいえジャッジアイズシリーズで声優の仕事もしてたもんね。

主人公だからセリフ量も膨大だし、キムタクにとって声優業として成長するきっかけになった筈

君たちはどう生きるか、作画・演出は間違いなく今年、というかここ5年でもトップクラスだと思います。後はストーリーが受ければメガヒット作になると思います。ただ元々鈴木Pが監督に好きにさせたと言ってますし、戦略なのか白旗なのかわからないですが広告もほとんどかけていません。その割には日曜ではありましたが、田舎の朝イチでは半分くらい劇場埋まってました。完全にジブリと宮崎監督作品というブランドを信じて来てる数ですね。ここから情報解禁と夏休み入って親子連れでの動員増やせるかどうかって感じでしょうか。
でも子供にわかるかなあとも思いつつも、今いきなりわかってしまってもそれではその日、その月で頭から抜けてしまう。わからないなあーと自分で咀嚼して、時間立ってまた見直すと自分の経験や知識が加味されてこういうことをいいたかったのかな?と思えますし、そう思えたときが楽しいし自分の血肉になると思います。大体大人の自分や他の観客達の感想も千差万別なんだから子供がどうとか考えるのがおこがましいのかもしれません。まずはこの世界にまた一つ素晴らしい作品が出てきたことを歓迎しつつ、いろんな感想や考察を読んで自分も自分の中の答えを見つけたいと思います。

パンフレットとか売り始まったらまた見に行こうかなあ(夏休み入った辺りかな?)



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