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「だいじょうぶ?」の一言を

 川崎市の事件(※1)から学校が変わるべきは何なのでしょう。
 
 見守りの強化でしょうか。どれだけ大人が見守っても防ぎようのない痛ましい事件です。守ることは当然ですが、これ以上犯罪者を生まない学校教育を問い直す必要があるのではないでしょうか。
 
 この数年、学校に居場所のない子どもが増えています。行けない自分を責め、家からも出なくなり孤立してしまっている子どもが全国にどれほどいるか──―とても残念な状況です。
 
 前号で紹介した高校2年生になったセイシロウが、東大のシンポジウム(※2)で学校に行けなかった自分を振り返り、「あのときのままだったら、外に出ることもなく誰とも話さない自分になっていたと思う」と語りました。
 彼は転入当初は、周りに対して攻撃的で、「こんな学校ぶっ飛ばしてやる」と授業中に「時限爆弾」をつくっていた子どもです。
 
「みんなの学校」で3年間学んだ彼は、「みなさん、人にとって一番大切なのは平和です。平和ってとっても簡単ですよ。自分のとなりにいる人を自分が大切にするだけで世界中の人が大切にされます」とメッセージを残して卒業しました。
 
 義務教育の最上位の目的は、大人を信じる子どもが育つことではないでしょうか。「力」ではなく、「だいじょうぶ?」の一言を。

次回は11月1日(水)公開予定です。

初出:『教職研修』2019年8月号、10頁。一部文面を変更のうえ、掲載しています。

※1:2019年5月28日、川崎市登戸駅付近で発生した通り魔事件。スクールバスを待っていた私立小学校の児童・保護者が襲われ、複数人が死傷した。

※2:前号「『通常』というくくりが排除を生んでいる」(『教職研修』2019年7月号)参照。
https://note.com/kyouikukaihatu/n/n3e679e804a0f


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