見出し画像

実は歌が下手だったフレディ・マーキュリー

映画「ボヘミアン・ラプソディー」の冒頭、フレディが上手な歌を披露してバンド仲間に入れてもらうシーンがあります。

これは事実と違うようです。ホントはどうだったのか。
私はこういうのが気になってしまうたちで、子供のやり方を真似して調べてみました。

今の時代がすごいのは、インターネットを検索しているだけで事実が出てくることです。

フレディの最初の印象は「怖いボーカリスト」だった


例えばこのインタビューでは結成時の話をブライアン・メイが詳しく話してます。インタビューの52分くらいからです。

これによれば、フレディはセミプロバンド「Smile」のボーカル、ティム・スタッフェルの友人で、Smileの大ファンでした。そして、バンドの公演に足繁く通っていたそうです。おっかけみたいな感じです(ここまでは映画と同じですね)。

フレディはいつもスマイルの公演後の集まりに付いてきては「君たちのやり方は間違っている!」と言ってたそうです。「君たちは素晴らしい。けど、これが足りない、あれが足りない」などとアドバイスし、最後には必ず「僕をボーカルに加えるべきだ」と頼んでいたようです(当時、フレディは「俺は伝説になる!」とか言ってて、メンバーたちはフレディのことを、ちょっと変わってる人、と認識してたっぽいですね)。

対してブライアン・メイは「僕たちにはボーカルはいらない。彼を入れる余地がないのは明白だった」と述懐してます。歌を聞いたこともなかったそうです。

インタビュアーはなんとイエスのリック・ウェイクマン。
蛇足ですが彼のインタビューは素晴らしく、しばしば脱線する話をうまく戻してます(彼がインタビュアーとして仕事してたこと、今まで知りませんでした)。

ブライアン・メイはフレディの歌を「Wreckage」というバンドではじめて聞いたときのことを「とても怖かった」と告白してます。

当時の彼のバンドでの役割はやたらと叫ぶこと(scream his head off)で、「挑戦的で」「とてもうるさく、ある意味しつこくて」「本当に怖いリードシンガーだった」(so in-your-face and so laud and sort of insistent. frightning lead singar) と話してリックを爆笑させています。そして実際に本人に「正直言って好きになれないと言った」とも。

しかしティムが別のバンドに引き抜かれてしまい、スマイルは一旦解散します。ところが、諦めきれないフレディに説得されて仕方なく試しに一緒に演奏してみたら「それがある意味上手くいった」のだと。

(訳はテキトーですが、多分そんな感じかと…上記Youtubeの後半に言ってます。間違いに気づいたら教えてください)

本人が言ってるのだからそうなんでしょうね。

このインタビューの中盤で、ブライアンはロジャーのドラムを初めて見たときの驚きを率直に語っていますが、明らかに賞賛してます。目が輝いてます。ティムのボーカルについても褒めてますが、フレディについては一言も褒めてない。

どうも、初期のスマイル時代の歌を聞く限り、フレディは派手でカリスマ性はあったけれど、歌は上手じゃなかったらしいです。

「フレディーがバンドの弱点だった」という証言も

クイーンのコンサートを全記録したサイトがありまして、ここはとにかく古い情報を丹念に集めています。1970年6月27日にはこうあります。


ロジャーはのちに、「フレディは後年彼が身につけた歌唱テクニックをまだ持っておらず、パワフルな羊の鳴き声みたいだった」と書いてます。別の機会には「フレディには天性の音楽性があって、それは本当に天才的だったが、最初に会ったときには彼には奇妙なビブラートをかける癖があって、それが一部の人をうんざりさせた」
Roger later recalled how Freddie "didn't have the technique he developed later on; he sounded a little bit like a very powerful sheep." On another occasion he said, "Freddie had a natural musicality. It was a real gift, but he had a very strange vibrato when we first met, which some people found rather distressing. " 

当時のクイーンのベーシスト(ジョンが入る前ですね)のバリー・ミッチェルという人は71年1月9日のコンサートページでこう言ってます。

「当時のフレディは声のコントロールがうまくできなかった。ちょっと音程が外れていて、キーキー言ってた。ロジャーが彼の声を首が閉められた羊みたいだと評したのは有名だ。ブライアンは素晴らしいギタリストだし、ロジャーも優れたドラマーだった。僕にとってはフレディがバンドの弱点だった。でも当時はその後どうなるか予測できなかった。彼は自分の声を改良し、正しいテクニックを身につけて、最終的にどうなったかは皆よく知っての通りだ。だけど、最初からそうだったわけじゃないんだ」
Freddie at the time didn't have great command of his voice. His singing was a bit off and a bit squeaky sometimes. Roger has famously described Freddie's voice as sounding like a strangled sheep. He hadn't gotten control of his voice. Brian's obviously a great guitar player. Roger's a superb drummer. For me, I saw Freddie as their weak link then, but you couldn't have foreseen what happened. He developed his voice, he got his technique right, and we all know what his voice ended up as. But it wasn't like that at the start." 

スマイル時代のフレディの歌のYoutubeのコメント欄には「ティムのボーカルの方がよかった」という感想が多いです(歌がありますので、探してみると良いです)。

うーん、これって映画より面白い……。

最近、この本を原書で読み終わったのですが、フレディ自身のこんな言葉が出てきました。

僕はブライアンとロジャーに言い続けた「いつまでこんなことやって時間を無駄にするんだ? 君らはもっとオリジナルな素材をやるべきだ。もっと音楽の表現方法を工夫すべきた。もし僕がシンガーならそれこそが自分がやることだ!」
I was saying to Brian and Roger, “Why are you wasting your time doing this? You should do more original material. You should be more demonstrative in the way you put the music across. If I was your singer, that I’d be doing!”


えらい自信ですよね。

一方、他のメンバーからは、
「フレディは毎回バンドにアドバイスをしてきた歌いたいと言っていたが、皆冗談かと思ってた」
「少なくともカリスマ性があり派手で目を引く存在だとは思った」
などの言葉が引用されてました。

フレディの先の言葉はこちらの本にも出てきます。ほぼ本人の言葉で綴られており、「良い曲を作るだけじゃダメで、どう届けるかまでビジネスとして設計しないとならない」とビジネス哲学までが語られており、これまた非常に興味深いです。

どちらも大変読みやすいので、原書を読みたい方にはオススメです。


最初は下手でも上手くなることがある

どうも、本当に最初は歌がうまくなかったようです。

この事実は、私たち凡人にかなりの力を与えてくれます。
誰もが最初からすごかったわけではなく、その裏には努力を重ねる姿があったってコトなのですから。

私が驚いたのは「音痴の矯正」は難しいと思っていたからです。

私はクラシック音楽が好きで、バスーンという楽器を演奏しますが、正直言って、変なビブラートの癖や、音程の悪さを直すのは並大抵ではありません。少なくとも音楽に関しては、初心者はともかく、上手い人は大抵最初からセンスがあって、下手な人はダメなものです。ずっとそう思ってたのです。

とはいえ、最初は「イマイチだなぁ」と思っていたスケート選手が、大化けしたり、最初は下手な絵だった漫画家が、あれよあれよという間に洗練されていく様子を見てきた人もいると思います。文章だってそうで、書けば書くほど上達する人は多いです。

実はこの文章も、私自身の英語の勉強の一環として書いています。
最初は下手でも少しずつ繰り返していくとうまくなる、はず。

そう信じてるわけです。

こうやって誰かの成功をモチベーションにしつつ、自分に何かを義務付けると、少しずつ能力が伸びる気がするんですよね。

原文と一緒に公開することで、間違いがあれば、英語ができる誰かが指摘してくれるかも?というのも期待しています。自然な英文をインプットし、アウトプットし、さらにフィードバックをもらう、というわけです。

さて、フレディは、自分自身の努力について、多く語ってません。自分について語るのは嫌だと言っています。

彼は最初から「天才」だったわけではないのですが、努力を惜しまない人だったのだと思います。素晴らしいですよね。

では、また。

これまで数百件を超えるサポート、ありがとうございました。今は500円のマガジンの定期購読者が750人を超えました。お気持ちだけで嬉しいです。文章を読んで元気になっていただければ。