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二十四節気の養生法【2023 春分】

 二十四節気「春分(しゅんぶん)」ですね。お彼岸の中日で「暑さ寒さも彼岸まで」と言われますが、今年は異常な暖かさとも言え、東京では観測史上最速の桜の開花宣言が出されましたね。京都もすでに桜の開花宣言が出されました。サクラがちらほら咲き始めています。皆さまの地元はいかがでしょうか?
 暦便覧には「天の中を行て昼夜等分の時也」 とあり、また「春分者、陰陽相半也。故晝夜均而寒暑平」(春分なるもの、陰陽半々なり。ゆえに昼夜均しくして寒暖平なり)と言われます。太陽黄経は0度で太陽は真東から上り真西に沈み、夜と昼の長さが同じになります。国立天文台の予想では、東京の日の出は5:44、日の入りは17:43とされています。
 太陽の南中高度も春分の日は71.3度と最も南中高度の高い夏至と7度ほどしか変わらなくなり陽射しが強くなり来て暖かくなりますね。これからは紫外線のケアも必要になってきますね。

京都市の南中高度

今月の癒しの庭園 「京都迎賓館」

 今月も「癒しの庭園」はお庭ではなく京都御苑の中にある『京都迎賓館』をご案内します。前回、梅林の梅の花を見に行った時に京都御苑の中を散策していると、荘厳な門が開いたので中を覗いてみるとそこは『京都迎賓館』でした。当日の受付でも見学出来るとのことでしたので、京都に住んでいてもなかなか中を拝見出来る機会が無いので拝観してみることにしました。

日本の伝統技能の粋を集めた最高のおもてなしの場

 『京都迎賓館』は、海外からの賓客を心を込めてお迎えし、日本への理解と友好を深めていただく施設として平成17年に建設されました。
歴史的景観や周辺の自然環境との調和を図るため、日本の伝統的な住居である入母屋屋根と数寄屋造りの外観とし、品格のある和風の佇まいを創出しています。
建物や調度品には、数寄屋大工、左官、作庭、截金(きりかね)、西陣織や蒔絵(まきえ)、漆、竹細工など、数多くの京都を代表する伝統技能において匠の技が用いられています。
 和風建築の伝統の粋と美しさを現代の建築技術と融合させた匠の技。最新の技術を用いつつ、日本の空間を感じられるよう、内装には「木」や「紙」が豊富に活用されています。

玄関車寄せ

 正面玄関の扉には、樹齢700年の欅(けやき)の一枚板が使用されています。扉が開き一歩足を踏み入れた瞬間から最高のおもてなしが始まります。奥の花台には、賓客の好みや国の特徴に合わせた花器や屏風、花材を決め、生け花が設えられます。

樹齢700年の欅の一枚板の玄関扉

藤の花言葉は「歓迎」、迎賓館にふさわしい名をもつ大広間「藤の間」

 「藤の間」は、最も大きな部屋で宮中晩餐会や歓迎式典の会場として使用されます。壁面いっぱいの装飾は、日本画家の鹿見喜陌画伯の絵をもとに、川島織物が綴織りの技法で織った織物で、39種類の草花が織り込まれています。床に敷かれた緞通は、壁面装飾に描かれた「藤の花」が舞い散った様子が表現されています。

「藤の間」の壁面装飾「麗花」

 写真には写っていませんが格子光天井の照明は、本美濃紙と京指物の伝統的技能が使われ、「和凧」の連凧のような3段笠で、一つ一つの高さが変わり15パターンにも及ぶ照明調節ができるようになっています。
 左手には舞や能、箏(こと)の演奏、雅楽などの伝統文化が披露される舞台があり、その扉には人間国宝の故 江里佐代子氏の「響流光韻(こうるこういん)」と言われる截金作品があり、金箔と銀色のプラチナ箔を使って金と銀が、互いの美の長所を引き立て合いながら、二つの色が交差するさまに、「人と人との出会いもそうありたい」との願いが込められています。

截金(きりかね)「響流光韻」

 晩餐会や大臣会合などが行われる際に、招待されたゲストの控室などに利用される「聚楽の間」を通って、「五七の桐」を配した和の晩餐室「桐の間」に続きます。この部屋では、和の晩餐として伝統の京料理でおもてなしされるそうです。「五七の桐」は、昔は、皇室の裏紋として使用されていましたが、現在は、日本国政府の紋章として使用されています。
 この部屋も見どころがいろいろあり、まず全長12メートルの漆の一枚仕上げのテーブルが鏡のように庭の緑や天井の意匠を写して室内に豊かな景色を創り出しています。正座に慣れないお客様にもくつろいでいただけるよう掘り炬燵式とされ、畳は、真ん中に10㎝ぐらいの筋が見えますが、これは「中継ぎ表」という昔ながらの技法で、イグサの最も良い部分のみを使うために中央でつないで作られるので筋があるそうです。畳縁は、麻の本藍染が使用されています。

和の晩餐室「桐の間」

 奥に見えるのはちょうど「雛祭り」の頃で飾られていた有職雛人形。
有職とは「有職故実」と呼ばれる、平安時代に公卿たちが有識者たちを集めてとり決められた、宮廷の行事、儀式のやり方や作法、住居、調度、衣服などの生活用具における決まり事で、その“決め事”に基づいて衣裳から髪型まで公家礼式を忠実に再現されてつくられた雛人形だそうです。衣裳も小さくつくられているだけで、実際の大人のものと変わりがない正確さで、端正な公家のお顔やその容姿から醸し出される気品はまさに典雅な京の雛遊びと子どもの健やかな成長を願う想いが詰まったお雛様です。

有職雛人形

 桐の間は、「五七の桐」の紋章が、釘隠しや襖の唐紙など各所にが見られます。座椅子の背の部分には「五七の桐」の「蒔絵」が施され、桐の葉の色は微妙に異なり、同じ模様の椅子は一つもないそうです。

床の間には四季の掛け軸

「庭屋一如(ていおくいちにょ)」を体現した庭園

 御苑の緑を借景とした広大な池が、四季折々に表情を変えつつ、まわりの建物に融け合うように配置されています。これが、古くから日本人の住まいに貫かれた伝統「庭屋一如」の思想で、中央に東西の建物をつなぐ、開放感のある廊橋が架かります。廊橋を境に池の水深が変わっており、島の配された「海」の部分と、「ネビキグサ」のある「水田」の部分(手前側)に分かれています。

 左側にある石臼のような石柱は「天正17年8月」という文字が掘られていて、豊臣秀吉の時代に鴨川にかかる旧五条橋の橋杭だったそうです。
高級そうな錦鯉が優雅に遊んでいます。海外の賓客が餌やりを楽しまれるそうです。

 廊橋の天井は、船底を逆さにしたような形で、中央部が高く、両端が低くなった「船底天井」で、吉野杉が使われています。四隅には、精緻な昆虫の透かし彫りが施されています。

 海外からの賓客が部屋の船着場から和舟に乗って日本の宮廷文化「舟遊び」を楽しまれます。2011年にはブータンのワンチュク国王が王妃ととも国賓として来日された際に、和舟に乗って舟遊びを楽しまれたそうです。

 大臣会合などの会議や立礼式のお茶のおもてなし、晩餐会の待合として使われる「夕映の間」。日本画家の箱崎睦昌画伯の絵をもとに綴織りで織った織物が東西の壁面を装飾する「夕映の間」、東にそびえる比叡山を月が照らす「比叡月映(ひえいげつえい)」、京都の西に連なる愛宕山に夕日が沈む「愛宕夕照(あたごゆうしょう)」という二つの織物作品の一文字ずつをとって、この部屋を「夕映の間」と呼ばれています。両側の壁をせり出させて、部屋を三分割にして利用することもできるそうです。

比叡月映(ひえいげつえい)
愛宕夕照(あたごゆうしょう)

 山紫水明をテーマにした「蒔絵」、「螺鈿」、「漆」、「竹工芸」など様々な伝統技能がちりばめられた飾り台など、どの部屋も天井から壁、そして床や調度品に至るまで、随所に日本の伝統や匠の技が散りばめられています。

細部にまで拘った伝統工芸品がアチコチに散りばめられています

 御所(京都御苑)の中にある堂々とした正門。ここから来賓が入場されるそうで昔の勅使門の趣です。なかなか賓客として訪れることは叶わないでしょうが、普段の生活では目にする機会が無い最高の芸術、一流と言われるものを目にすることで自分の精神性や知的レベルを高められ、心に余裕を持つことが出来るなぁと思います。音楽や演劇、美術・工芸などどんなものにでも、やはり一流と言われるものに触れることは大切ですね。

勅使門

春分の養生法

陰陽調和

 二至二分四立のひとつ「春分」、夜の長さと昼の長さが同じになり、ちょうど陰陽が調和します。この時期は特に人体も陰陽のバランスの取れた状態を保つようにしなければいけません。陰陽バランスの取れた状態を「中庸」と言い、中医学では「陰平陽秘」と言います。精神・飲食・日常生活において、体内のバランスとともに、カラダと外側の自然界とも調和させて陰平陽秘を保ち体調不良が起こらないように努めることが養生の基本となります。リラックスして愉快・楽観・向上の精神状態で過ごすように心掛けましょう。

 カラダの声やカラダからのお便りを見過ごさず、今の自分の体質がどのように陰陽バランスが乱れているか(未病)を把握して、食生活を中心に生活習慣や生活環境、ココロの持ちようなど改善できることから取り入れて、乱れた陰陽バランスを調和するようにしましょう。

 前回マガジン「啓蟄の養生法」では、自分のカラダの中に起こる「風」について書きました。カラダの中に起こった風を「肝風内動」と言いましたね。その中でも書きましたが、春は「肝」が傷みやすい季節でもあり、肝が傷むと気の巡りが滞りやがて熱を生じるようになり、熱(陽)の性質からカラダの上部に上昇します。その状態(体質)を中医学では肝陽亢盛(かんようこうせい)と言います。今回は肝陽亢盛についてお話しします。

 中医学では、生命活動を営む(生きる)ために必要な生命エネルギーを「気・血・水(津液)」と言います。健やかに生きるためには、この「気・血・水」がたっぷりあって、それが全身をスムーズに巡っていることが大切です。良質の「気・血・水」をたっぷりつくり、滞ることなく全身を巡らせることが健康に生きるための養生法なのです。

 「気」は、カラダのどこかに停滞せずにカラダ中をスムーズに巡っていると全身が正常に機能し、健やかに過ごすことが出来ます。
 この気の巡りを調整するのが「肝」ですが、ストレスが溜まったりイライラしたり怒ってばかりいると、肝に余分な熱が生じるようになり、その肝熱が旺盛になってくると気の巡りを調整する機能がうまく働かなくなって、気が上半身に上昇するようになります。中医学の教科書には、このように気が昇り過ぎることを「肝陽上亢(かんようじょうこう)と書かれています。  
 肝に余分な熱が生じ肝陽が亢盛すると、顔が赤っぽく、肩や背中、腰、胸、脇腹など全身がパンパンに張った肥満体質になり、さらにイライラして怒りっぽくなります。女性は、月経が早まる、経血の量が多い、経血の色が濃い赤や紫赤色、そして粘り気がある、胸が張る、喉が渇く、顔色が赤い、便秘気味、舌が赤く舌苔が黄色い、脈がハッキリと強めで早い(滑数や洪数)などの症状がみられます。高血圧や肝炎、めまい、頭痛、寝つきが悪いなどの症状も良く見られ、脳卒中の危険もあります。

肝陽亢盛体質の養生法


足厥陰肝経

 中医学では、「肝」の経絡は生殖器を巡って性機能と卵巣や子宮の機能にも関わっていると考えます。「肝」に余分な熱がこもると女性の性機能の異常や月経不順、不妊の原因になります。さらに、こじれると肝炎になったり、食欲不振や下痢のほか、胸や脇肋部などが脹って苦しくなったりします。この体質のタイプはゆったり散歩したり軽めにウォーキングをするなどして出来るだけリラックスするように心掛けましょう。
 瞬間湯沸かし器のようにいきなりカッとなって怒るタイプと、もうひとつのタイプが、自分がこうなったのは「あのせいだ」「あの人のせいだ」「自分ばっかり損な役割」などのような沸々とした怒りを長期間持ち続けるのもカラダの中の熱が高まり、肝陽が上亢してカラダを傷めます。すぐカッとしないで出来るだけ平常心を保ち、また「許す」「手離す」というように「ココロの断捨離」も大切です。不要な感情や不満、不足をいつまでも手放さずに執着しているのは自分のココロとカラダを傷つけていることを知りましょう。

 食生活では、高カロリーで栄養価の高い食事は、余分な熱を一層高めるので、この体質タイプの人はあっさりした食材や腹一杯食べるのではなく腹八分目や特に夕食はお粥にするなどがオススメです。
食べ物の性味では、カラダの余分な熱を冷ます「寒涼性」の野菜を多く摂ることがオススメで、熱を高める香辛料や強いお酒の飲み過ぎは控えましょう。(熱が冷めた後もいつまでも「寒涼性」の物を食べ続けていると今度は陽虚(冷え)体質になるので注意しましょう。)
 酸味の食べ物は、収斂固渋作用があり、肝熱を鎮め、また、血糖や血中脂肪によりドロドロしている血液をサラサラにする効果があるので、この体質の人に適していますが、瘀血タイプは酸味の収渋作用がさらに血の巡りを固めてしまうので控えましょう。また、酸味を摂りすぎると肝の働きを低下し、さらに脾にも負担がかかりすぎるので注意が必要です。

避けた方が良い食べ物

香辛料、温熱性食材、気を昇らせる昇性食材
温熱性食材:ほとんどの香辛料、生姜、ねぎ、ニラ、ニンニク、牛肉、鶏肉、羊肉、鹿肉、チーズ、鰻、エビ、高麗ニンジン、シナモン、桃、サクランボ、など。
昇性食材:大多数の香辛料、カレー、香菜、たまねぎ、春菊、ニラ、紫蘇、ピーマンなど

適度に摂った方が良い食べ物

寒涼性食材、気を降ろす降性食材
寒涼性食材:梨、バナナ、柿、マンゴー、トマト、オレンジ、メロン、いちご、たけのこ、西瓜、冬瓜、糸瓜、苦瓜、胡瓜、ほうれん草、セロリ、緑茶、ごぼう、大根(加熱)、くわい、セリ、ナス、白菜、チンゲン菜、薄荷(ミント)、緑豆、昆布、海苔、ひじき、アサリ、カニ、パセリ、そば、金針菜など
降性食材:なす、セロリ、冬瓜、大根、竹の子、ほうれん草、馬肉など

その他の養生法

 肝陽亢盛体質の人は常に汗かきで熱っぽいので汗の吸収が良い綿のシャツや少しゆったり目の衣服がオススメで、ピッタリピチピチの服やベルトなどで締め付ける衣服は避けましょう。

 散歩は朝早めに一時間ぐらい、ゆっくりペースで歩くのがオススメで速足は避け、足先は少し外向けで歩く方が高血圧に良いのでオススメです。
 予定やスケージュールはあまり詰め込み過ぎず、余裕を持ったスケジュール管理がオススメです。移動時間の渋滞やお出かけ前の忘れ物などイライラするのは気を昇らせます。
 春は「生而勿殺、予而勿奪、賞而勿罰」(生かして殺さず、奪わず与え、罰せず褒める)…と黄帝内経に書かれています。子どもや部下を怒らないよう心掛け、褒めてあげると自分の肝熱が冷めて体調が良くなると思って、平常心を保つようにしましょう。
 高温多湿が苦手で暑いとイライラしやすいので室温はやや低め24~26℃ぐらいが落ち着きます。熱めのお風呂や長風呂はのぼせの原因になるのでサッパリ入浴がオススメです。藿香(パチョリ)は興奮した神経を鎮静させる作用があり、ストレスによる神経疲労を和らげる効果があるといわれているので、これを使った入浴剤やアロマなどの芳香療法もオススメです。

京都伝統中医学研究所の"啓蟄におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「肝陽亢盛」タイプにおすすめ薬膳茶&食材

 薬膳茶では、「理気明目茶」、「茉莉龍珠茶」、「気血巡茶」、「五望茶」など
 薬膳食材では、「金針菜」、「緑豆」、「皮去り炒りはと麦」、「殻とり生はと麦」、「白きくらげ」、「山査子」「桑の実」、「マイカイ花」、「茉莉花」、「菊花」など。 
いろいろお豆のスィーツセット」でいろいろお豆のお粥もOK。

2.漢方入浴剤

 藿香(かつこう)がたっぷり入った「スッキリさっぱり乃湯」も、芳香浴で気の巡りを調えてくれるのでオススメ。

中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。

薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂  本店公式サイトhttps://www.kyotorakurakudo.com
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/

 次回は、4月5日「清明」ですね。万物が清らかで生き生きする季節です♪ 新年度が始まり新しい環境に変わる人も多いですね。この2週間でしっかり準備して、ココロにもカラダにも余裕を持って新年度のスタートを切りましょう。




 


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