邪推も肉体も、一瞬でぐしゃりと潰れる
「降りろ!」
日頃穏やかなあしながおじさんからは想像できないような、強い口調だった。
私は何が起こったのかもわからないまま、ひりひりと痛む手で自身の右わき腹のあたりをまさぐった。
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11月初旬にあしながおじさんと別れてから、何の音沙汰もなく、1ヶ月が経とうとしていた。
月に1、2回会うための約束以外、日常的に連絡を取り合うことはしない私たちの距離は瞬く間に遠くなった。
30日のうちの29日が。
31日のうちの30日が見えない相手は、もう、知らないひとだ。