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宝石箱

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2019年12月の記事一覧

邪推も肉体も、一瞬でぐしゃりと潰れる

「降りろ!」 日頃穏やかなあしながおじさんからは想像できないような、強い口調だった。 私は何が起こったのかもわからないまま、ひりひりと痛む手で自身の右わき腹のあたりをまさぐった。 ***** 11月初旬にあしながおじさんと別れてから、何の音沙汰もなく、1ヶ月が経とうとしていた。 月に1、2回会うための約束以外、日常的に連絡を取り合うことはしない私たちの距離は瞬く間に遠くなった。 30日のうちの29日が。 31日のうちの30日が見えない相手は、もう、知らないひとだ。

その言葉に色をつけるとしたら 何色だろう あるいは君は今日 何色の言葉を吐き出すのだろう 僕が昨日 塗りつぶした言葉は 明日にはきっと 別な色に変わってる いっそ無色透明でいられたら楽なのに 無味無臭でさえいられない僕らは 懲りずにまた言葉を紡ぎ出す 空虚を塗り潰すように

この街を出て行くんだ。

「俺さ、卒業したら、この街を出て行くんだ」 いつもの放課後。いつもの暗くなった公園。 隣でブランコを漕ぐ優也が、前を見ながら言った。 「……何それ」 「何で?」とか「どうして?」ではなく、私の口から出てきた言葉はそれだった。 卒業したら、街を出て行く。 物語によくありがちな台詞に、現実味が湧かなかった。 「両親が、この街にいるのは危ないって。どんどん治安が悪くなってるから、最悪な事態が起きる前にって」 「何それ」 てっきり、夢とか何かがあって、それを叶える為に出