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宝石箱

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開けたら消える
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#エッセイ

おしまいの夢

その夢の中で、僕はひとを殺した。 すっかり子供の姿になった僕は、おなじく子供の友達3人と暗いビルのなかで息を潜めていた。皆の手にはそれぞれ別の形の銃があり、僕はスナイパーライフルを持っていた。 だれをやろうか、なんてことを小声で話し合ったりしていた。先生に悪戯するような無邪気さだった。 クスクスと笑い声が響くなか、そっとスコープを覗きこむ。 ミニチュアになったような町のなかで、数人の大人が歩いているのが見えた。そのなかの一人に自然と照準を合わせていた。見たこともない人な

シンデレラの頃。

うちの奥さんは、田舎の寒い地方で育ったのでとても頑丈にできている。 風邪さえもほとんどひかない。「こんなに美人で色白な奥さんを捕まえて、あなたって本当に幸せ者のよねぇ」なんて自分で言う人だ。きっと私より長生きするに違いない。 彼女には面と向かって言ったことはないけれど、私はとても感心していることがある。彼女が私の前で泣いたことは、今までたったの1度しかない。(奥さんはテレビドラマを見ていてよく泣く時があるけど、それ以外。) いつでも彼女は私の前では弱みを見せない。出産前