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宝石箱

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開けたら消える
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#現代詩

感性という麻薬

私のなかの とても美しい絵画は 現実には ラクガキにしかならない 私のなかの とても美しい映画も 現実には 学芸会のようなものだ 感性という麻薬が イタズラに心をみだしてくる あの夕陽も 温もりも 涙も すべてはまぼろしなのに 私はなぜか 駆け出したくなってしまう 真っ白のキャンパスにぶつかって トマトのように潰れてしまえば 芸術になれるだろうか。

年縛り

スマホを機種変したので アドレス帳を整理しました もう会わない名前たちを 一括で削除しました 未送信トレイに残っていた あけっぴろげな想いの残滓を 建前と共に飲み干しました 取り返しのつかないことだけが 今も私に苦悩を強制します どんなに傘を広げたところで 雨には抗えないように もう大人になったので 卒業アルバムにしつこく居残る 私の下手な笑顔だけ潰しました 消せない歴史ごと修正テープを 横に一本強く引きました どんなに傘を広げたところで 全然気分は晴れないけれど