借景の京都タワー

1日に1回は京都タワーを見ている。

というか、京都タワーが目に入ってくる。

ふと顔を上げると遠くにぼんやり見えたり、川の向こうにてっぺんだけ見えたり、山の上から小さく見えたり。夜、遠くに見える京都タワーは、夜景の少ない京都に灯るロウソクみたい。

つくづく、京都タワーは背景によって顔つきが変わると思う。

京都駅の中央改札を出ると、眼前にそびえ立つ堂々たる京都タワー。晴れた日は最高である。改札を出てすぐにカメラを構える人も多い。

駅ビルのピカピカの壁面に映り込むのもいいし、大階段の途中から見える四角い額縁に切り取られた京都タワーもいい。スタイリッシュな京都駅を背景にすると、タワーがなんだか近代的に見える。

東本願寺の渉成園から見ると、見事な日本庭園を背景にした和風顔のタワーを見られる。神社仏閣と組み合わさると、タワーの赤は突然、朱色に見える。

鴨川沿いに咲いた満開の桜からニョキと突き出た京都タワーを対岸から見るのもいい。大文字の火床からかろうじて見える爪楊枝みたいな京都タワーもいい。清水寺の舞台から紅葉越しに見ると、ごちゃごちゃした町の小さなリーダーみたいに見える。

南北まっすぐに走る烏丸通を南下すると、いくつもの信号の先に京都タワーが立ってるのも好き。

パッとしない時もある。曇りの朝や雨の夕方は、白い胴体がやたら間延びして見えて、のっぺらぼうみたい。東京タワーと違って、先端に丸い頭がついているのも滑稽に見える時がある。

派手さに欠けるし、高さも中途半端だけど、借景によって顔を変えるのが京都タワー最大の魅力かも。誰か「京都タワー」って映画、作ってくれないかな。

#エッセイ #コラム #京都 #京都タワー

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